B-ing 2003年 7月9日号
キャリアがあるからこそ求められる
数字だけでは語れない実力とは?
そもそも営業実力とは何か。それをアピールするにはどうすればいいのか。専門家3人に聞いた。
チーム営業の悩み
Q1●チーム営業なので、個人の実績をアピールしづらいのですが、何をアピールすればいいのでしょうか?(ITアウトソーシング・32歳)
A●「まずチームの業績をアピール。そのうえで、チームの中でどんな役割を担ったのかを伝えましょう。チーム内での役割を伝えることこそ、無理なく自分の強みをアピールすることにつながります。」(松井氏)
低迷業界の悩み
Q2●成長業界に転職したいのですが、売り上げ数字は個人的にも会社としても低迷しています。「この程度の売り上げしか会社に貢献できないのか」と判断されないか心配です。(食肉メーカー・33歳)
A●「採用担当者は業界ごとのおおまかな売上額を把握しているはずなので、基本的にそんな懸念は必要ありません。それに、本質的に大事なのは粗利益。売り上げが漸減しても、粗利益で貢献しているのであれば恐れることはありません」(松井氏)
成績の悩み
Q3●営業成績がトップクラスではないし、賞をもらったこともありません。ただ、社歴が長いので、現在は課長クラス。こんな私は何をアピールすれば?(食品メーカー・35歳)
A●「一度も賞を取ったことがないのは、たとえ、自社内の表彰制度でも若干反省するべき点でしょう。しかし、課長に昇格したわけですから、チームワークを保てるとか、部下の指導力があるなど、必ず昇進の理由があるはず。なぜ課長職を拝命したかを説明するべきでしょう」(松井氏)
業界外転職の悩み
Q4●入社以来、新規顧客開拓を担当し、現在はチームリーダー。でも、同じ商品の営業をずっとつづけているだけでは、異業界の営業はつとまらないですよね?(不動産・31歳)
A●「顧客との信頼関係をゼロからつくり上げる新規開拓は難易度が高いので、業界が違っても、転職市場では高く評価されます。「入社以来の新規開拓経験は自信を持つべき。業績を伸ばしてリーダーに昇格したわけですから、営業方法にも問題がないと判断されます。異業界への転職は、業界知識や商品知識を身に付ける意欲をアピールすれば問題ないでしょう。」(松井氏)
応募書類の悩み
Q5●僕なりの営業手法や実力を面接では伝えることができるかもしれませんが、職務経歴書や応募書類ではどう伝えたらいいのでしょうか。(ソフトウエア・30歳)
A●「日々の業務の中で心掛けている具体的な工夫を一行書くだけでも、印象は違います。例えば『毎日、最低でも7件の商談は欠かしません』『翌日の準備は前日に必ず終わらせてから帰ります』など、ちょっとした心掛けに、その人の営業努力や就労姿勢が見えるんです。」(松井氏)
アピール下手の悩み
Q6●面接では、聞かれた質問に答えるのが目的。でも、答えるだけでは、すべてのスキルを伝えられないのではと不安です。(通信・32歳)
A●「面接では、表情や語気、目の輝きなど言葉意外のボディーランゲージも印象を左右します。この非言語の部分こそ言葉でのアピールより大きな影響力を持つので、質問に答えることだけが決してアピールではありません」(松井氏)
エリートネットワーク・代表取締役の松井隆氏の意見はこうだ。
「営業力とは、つまるところ『人間通』であるかどうか。例えば、『どんな人が顧客から好まれるのか』『どう振る舞えば人に安心感をもたれるのか』などの問いに対して、自分なりの答えを持って営業活動をしているかどうか。答えを持っているなら、こうすれば良いと思うことを実践すれば結果はおのずとついてきます。もしも、その問いに対して明確な答えを持っていないのだとしたら、それは人間に対する考察が足りない証拠。営業とは他人に納得してもらう仕事ですから、人はどうしたら共感してくださるかを考察できる力こそ実力なんですよ。」
では、その実力をどうアピールするのが効果的なのか。
「大前提として、自信を持ってしゃべること。採用担当者は、面接の場を営業の場として認識しているので、緊張している応募者は営業現場でも緊張しているのではないかと想像するかもしれない。ですから、営業に行くつもりで面接に臨むことは重要ですね」(鈴木氏)
「ただし、自信を持つということをおごることとはき違えてはいけません。これまでの実績やビジネスは、顧客や社内メンバーの協力があってこそ。ですから、『おかげさまで』という周囲の人や顧客への感謝の気持ちを忘れないことも重要。心のあり方、すなわち人柄は、ちょっとした言葉や態度に表れるので、会話の中身以上にあなたの実力を雄弁に語るものなんです」(松井氏)
「転職活動をする3ヶ月ぐらい前から、毎日持てる力を100%以上出し切って仕事に取り組んでみましょう。何割か手を抜いて仕事に取り組んでいた人は、手を抜かずにやってみる。時間がない事を言い訳にして放置していた分野にも手を広げてみる。そうやって3ヶ月間毎日フル回転で仕事に取り組むと、自然とビジネスパーソンとしての『勢い』が備わってきます。その『勢い』こそが、営業職として、さらに人間としての魅力を増す要因になるはずです。もしアピールするものが少ないのでは…と自信のない方には、この『3ヶ月間助走法』をおすすめしたいものです」(松井氏)
※この文章は抜粋です。