B-ing 2003年12月31日・2004年1月7日合併号
高く売れる能力はほかにもある!
1000万円を超えてヘッドハンティングされる人はどんなスキルを持った人なのだろうか? 2人のヘッドハンターに、それぞれ過去の事例をあげてもらった。
株式会社エリートネットワーク代表取締役 松井 隆氏
大手企業で事業部長や営業部長を歴任し、97年に正社員専門の紹介、人材スカウト業を行う同社設立。紹介に際しては転職希望者との対話を重視している。
□経営革新・現場運営能力
大手外食チェーン経営戦略室マネジャー → 大手メーカー子会社取締役
大手メーカーがレストラン事業を強化するにあたり、実質的責任者として招かれた。前職では店長経験後、経営戦略室の中心人物として、中長期経営計画の立案や単年度経営計画の策定などを担当。決算書を完ぺきに理解し、経営分析、財務分析能力にたけているなど、事業を数字でとらえる経営者感覚の持ち主。将来は社長も任せられると期待。
□経営課題解決能力
精密機器メーカー社内システム責任者 → 情報システム会社システムコンサルタント
メーカーで社内基幹システムの設計から構築、運用、メンテナンスまでを手掛けていた35歳。システムに関する豊富な知識のほか、営業や経理、物流などの社内各部署、および得意先のニーズをくみ上げ、使いやすいシステムを実現させた調整能力の高さがポイント。コンサルタントとして顧客の信頼を獲得し、活躍できると判断。
□経営課題解決能力
外資系コンサルティング会社経営戦略コンサルタント → アパレルメーカー経営企画室
経営コンサルタントとして顧客企業の経営課題を抽出し、事業戦略の立案からビジネスモデルの策定まで、実践的なコンサルティングを多数手掛けてきた人物。業務の効率化、合理化を図るための調査分析力、資料作成力、各部門との合意形成能力、プロジェクト推進力などを総合的に評価され、32歳にして経営参謀として招かれた。
□プレーイングマネジメント力
製薬メーカーA社大阪支店支店長 → 製薬メーカーB社営業部門西日本拠点長
同業同職種間での事例。注力地域をカバーする営業支店の責任者として、約50人のMRと、総務、経理、物流などのスタッフ部門を一手に束ね、数年にわたり安定した業績を挙げていた。マネジメントのみならず、自らも顧客との信頼関係構築に奔走できるプレーイングマネジャーとしてのダブルスキルに加え、業界に対する影響力を評価。
□新規事業推進力
消費財メーカー新規事業部の責任者 → テレマーケティング会社コールセンター部門長
新規事業の責任者として、社内にコールセンターを創設し、収益化した元メーカー勤務の40歳の人物。コールセンターのスタッフ約100人を教育し、気持ちよく働ける環境を整えて成果を挙げたマネジメント能力を評価された。設備やシステムなど、コールセンター運営に関する知識も申し分なく、部門長として年棒1200万円で招かれた。
買い手市場といわれる現在、企業が年棒1000万円以上を出しても欲しい人物とは、どんな人なのだろうか。
「ずばり、経営者感覚がある人。言い換えれば、成果を出せる人」エリートネットワークの松井氏はこう断言する。「例えば、経理の専門知識を持っていても、単なる『経理屋さん』では1000万円の声は掛かりません。大切なのは、常に経営者と同じ視点で業務をとらえ、常に業務面での成果を出せるかどうか」経験者採用では、実績や知識はあってあたり前。その中で自分の市場価値を高く評価される人は、常に目標を設定し、達成していける人だ。
もうひとりのヘッドハンター、クライス&カンパニーの丸山氏は次のように指摘する。「企業は1000万円払っても『お釣りがくる人』を求めています。営業であれ、スタッフ部門であれ、会社の業績を意識しながら働ける人は、結果的に報酬以上の能力を発揮できるものです」
このレベルになると、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力など、業務を円滑に進めるための対人スキルも、より高度なものが求められる。1万人以上の転職希望者と会ってきた丸山氏はいう。「面談していて感じるのは、デキる人ほど話が面白いということ。例えば、優秀なエンジニアほど、技術的な話を相手のレベルに合わせて分かりやすく伝えることができます。」
つまり、アウトプットがうまいのだ。それはなぜか?「相手の立場で物事を考えられるからです。相手に対する配慮、すなわち想像力が、コミュニケーションのベースを築く。優秀な人は自然とそれができています。」(丸山氏)
一方、松井氏は「キーワードは『謙虚さ』」だと語る。「本当に優秀で仕事のできる人に、横柄な人は一人もいません。謙虚な姿勢こそが、人間関係とコミュニケーションを円滑にし、仕事を成功へと導くのです」(松井氏)
ビジネスパーソンとして成功するために、20代後半から30代の人が心掛けることは何だろう。
「成果を出すことにこだわることです。納期でもいい。売り上げでもいい。自発的に自分の中に期限付きの目標を設定し、それを達成する癖をつけてください。数字や業績を意識しながら働くことで、自然と経営者感覚が磨かれます」(松井氏)
「社外の人と積極的に交流してください。異なる立場の人と接することで、伝える力や聞く力が養われ、高度なコミュニケーション能力が身に付くはずです。」(丸山氏)
そして両氏が異口同音に唱えたのが、「がむしゃらに働く」ということ。もちろん、仕事が好きでなければそれはできない。そして、好きになるには、少なくとも20代は、寝食を忘れるほどがむしゃらに働いて得意になるしかない。つまり、同じ職種の人との相対比較の中で、競争力を獲得するということだ。松井氏はいう。
「ビジネスの世界で成功する人は、例外なく『仕事が趣味に』なっています」
ただ漫然と働くだけではトップレベルになれない。つねに完成形をイメージし、周りと円滑にコミュニケーションをとりながら仕事を楽しめる環境を意識的につくり出していくことが、能力を伸ばし、市場価値を高めるのだ
※この文章は抜粋です。