週刊文春 7月11日号
短期集中連載
まずは、転職コンサルタントの株式会社エリートネットワーク(東京都中央区)代表取締役社長・松井隆氏の話を聞いていただきたい。氏はリクルート社から独立、あっという間に、エリートネットワークをいわゆるヘッドハンティング業界の大手の一つに育て上げた。リストラにあえぐ企業戦士たちの「就職状況」をもっともよく知る人物でもある。
「現在、四年制の大学がいくつあるかご存知ですか? 六百六十九校もあるんです。国立九十九校、公立七十四校、私立四百九十六校。そのうち、専門性をもった特殊な大学や、いわゆるブランド大学は、せいぜい百五十校程度です。つまり、あとの約五百五十校は、企業にとって新卒の真っ白な学生をそのゼネラルコンピタンス(一般的能力)を頼りに採用するには、あまり魅力的とは映らない大学なんです。それに加え、進学率が50%近いとなると、もはや大学卒業証書の希少価値はないでしょう。戦前の日本のように、大学への進学が数%に満たない時代と、二人に一人が大卒の時代とでは、大学を出たことの意味はまったく違う」
「アメリカの場合、年収七、八百万円以上の頭脳労働的なスキルワーカーと、年収三、四百万円の単純労働のクラスに、二極分解が進んでいます。そして、日本でも早晩、二極分解の時代がやってくると思われます。新卒の就職活動にしくじり、フリーターもしくは派遣で短期就労を繰り返す世界に一旦足を踏み入れると、キャリアアップという概念とは程遠い、年収の低い人生を送る危険性はきわめて高いのです」
「自分の就職先に関して、とくに母親の意見を聞いてはいけません。母親は、自分たちが若かった頃の話しかできないんですよ。時代が変わっているにもかかわらず未だに航空会社や総合商社、大手銀行が良いと思っている。とっくにピークアウトしているのに。業種としてそんな業界に就職したら、沈没する船に自ら乗り込むようなものです」
と前出のエリートネットワーク・松井氏は語る。
※この文章は抜粋です。