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月刊サーカス 2008年9月号

KKベストセラーズ刊
『月刊サーカス』 2008年9月号

業界事情に精通する専門家ふたりに聞く

転職の常識「ウソ」と「ホント」

「求人情報○万件!」、「非公開求人多数!」という宣伝文句に誘われ、「それならすぐ転職できそう」と甘く考えていたら、大間違い。情報だけは膨大にあるが、何がホントで、何がウソか。転職事情に詳しい『キープレイヤーズ』代表の高野秀敏氏と『エリートネットワーク』の転職カウンセラー・杉本勉氏に聞いた。


杉本勉氏
正社員の職業紹介に特化した人材紹介会社『株式会社エリートネットワーク』カウンセリング事業部所属。全業種、全職種に対応。通常の求人案件はもちろん、弁護士、会計士等を対象としたハイクラスな求人案件も多く、企業からの信用が高い。


Q1 つい最近まで「売り手市場」と言われていたけど、今はどう?

新聞の求人欄に載る情報が心なしか減ってきた気がするけど、実際はどうなのか。
杉本氏は「金融機関を中心にここ2~3年見られた超積極採用と比べると一服感があります。ほかには、サブプライム問題の影響もあって、不動産系の求人の潮目が変わりました。メーカー系は堅調ですが、文系職に関して言うと、少し冷え込んでいると言えなくもない」と語る。
高野氏も「金融と不動産、人材ビジネスがかなり冷え込んでますが、製造業はまだ大丈夫。ただし、今、企業が欲しいのは人手ではなく、“人財”。猫の手も借りたいのではなく、猫じゃダメなんで、即戦力的に優秀な人が欲しい。文系事務職は逆風ですが、経理や財務、法務、人事のスペシャリストの方には仕事がある、営業なら、自分が抱えていたクライアントを半分ぐらい連れてこられる実力のある人じゃないと厳しい」と指摘する。もはや売り手市場ではないのだ。

Q2 やっぱり35歳が限界年齢?

これは意見が微妙に分かれた。
「もう35歳じゃない。極端に言えば、30歳でも厳しい。ずっと外資系にいたような人は大丈夫ですけど、一般的には32、3歳で求人がガクッと減ります。やはり26~28歳がゴールデンゾーン。でも28歳を過ぎたら、実績しか見られなくなるので、経理や法務といった専門性のある人以外は、業種を超えての転職が難しくなる」(高野氏)
一方、幹部求人も多く扱う杉本氏はこう語る。
「私は40代も50代も担当してます。ただ、35歳以上の求人は非公開になる傾向が強く、管理職やスペシャリスト採用が多い。では、それ以外はダメかというと、そうでもない。大企業で35歳といっても、肩書きってほとんどないでしょう。だからマネジメントの経験も必然的にない。今の会社では先がないから転職しようという時、あるベンチャーが人を探していて、実績やバックグラウンドがかみ合うとなれば、可能性はあります」

Q3 「非公開求人多数」という広告をよく見るけど、ホント?

「非公開求人多数!」という宣伝文句が気になる人も多いはず。実際はどうなのか。
杉本氏の話。
「これは大まかに言うと、3つあります。ひとつは、大手の超人気企業。こういう企業には大量に応募が来るので、ある特定のエージェントに絞って求人を流す代わりに、そこで非公開の形で応募者のセレクションを依頼するんです。ふたつ目は幹部求人。『経理部長募集』なんて、上場企業がやってたら“あの会社、大丈夫か?”ってことになりかねません。3つ目は誰かを辞めさせてリプレースしたい時。内々で探して、いい人がいたら採用して、チェンジしてしまう。そんな感じですから、非公開求人がそれほど多くなるわけがないんです」
高野氏も同意見だ。
「“すごくいい求人をそこだけが隠し持っている”なんてことを期待していると、実態はだいぶ違うを思いますよ」
甘い話などないのだ。

Q4 面接で給料のことを聞くのはダメなの?

これも微妙な問題だ。高野氏は「しつこく聞いて落ちることはありますけど、聞いた方がいいと思います」と述べ、こう指摘する。
「年収アップが目的で転職するのに、年収がダウンするかもしれない会社の内定を取ったって、意味ないじゃないですか。ただし、日本の企業へ転職する場合、最初の1年目は結構、年収が下がることが多い。それでも、頑張って働き続ければ上がるんだという感覚は大事にしてほしいですね」
杉本氏の意見はこうだ。
「基本的には聞かない方がいいです。いくらスキルがあって、人柄がよくても、“この人は最後はカネか”となったら不利です。まずは採用試験に受かることを考えるべき。受かってから、条件提示の場で待遇面を細かく確認すればいい。その結果、今の会社より低かったら、断ればいいんです。大体、みなさん、焦りすぎなんです。開口一番“条件いいんですか”って聞く人、これは敬遠されますよ」

Q5 オレ、何の実績もないんだけど、面接で何て言えばいいの?

実はこういう人の方が多いのかもしれない。高野氏はこうアドバイスする。
「何の実績もない人は採用されません。採用されても、そんな簡単に入れる会社には行かない方がいい。実績を上げるまでは頑張る。実績の定義は自分で決めていいですから、目標を立て、努力して結果を出してから動くべきです」
杉本氏のアドバイスはこうだ。
「我々のところにご相談に来られる方でも、“私なんて、大したことないんで”とおっしゃる方がいますけど、よくよく話を伺ってみると、“それは別の会社にとって、すごく好ましい経験ですよ”ということが結構あります。でも、本当に何もない場合はどうするか。何もないなら何もないで、“御社で実績を積みたいんです”と正直に言うしかないでしょう。決して自分を卑下しないで、前向きに熱意を持って“頑張りますから、お願いします!”と訴えれば、可能性が開けることも多いです」

※この文章は抜粋です。

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