週刊ダイヤモンド 1999年 7月17日号
エリートネットワーク代表取締役 松井 隆
リクルートを2年前に辞めて人材紹介会社・エリートネットワークを設立した松井隆氏は、「大企業にいれば、10年目ぐらいで、このままでいいのかと思い始める。でもなんとなく、そのまま5年はたってしまう。その時には、転職マーケットから年齢的にズレてしまい、手遅れだ。」
転職年齢の低下を、エリートネットワークの松井隆社長はこう読む。「伸びている企業は、必ず平均年齢が低い。つまり、管理職も若いため、上の世代を採りたがらない。転職に動けるのは、32~33歳と考えたほうがいい。1歳増すごとにハンディが大きくなる。」
人材派遣であれば、資格や条件のスペックを合わせればマッチングできますが、人材紹介は個別対応の手作りの仕事です。このため、求人広告も控えてあえて登録者を増やさないようにしています。
人材紹介で大切なことは、個人へのカウンセリングと企業へのコンサルティングです。私に特別なカウンセリングスキルがあるわけではないのですが、いつも一回につき1時間半は話してますね。というのも、労働マーケットの現状や、求人企業の社風や社長の考え方など企業の実情を伝えようと心がけているからです。転職先で一生勤めたいというのにいまだ国内銀行を希望するズレた方もいるだけに、私の話は転職希望者から喜ばれますね。私にとって、独立前の営業マン時代に蓄積した3000社の企業データも財産になっています。
個人に対して、私がもっとも重視しているのは、本人のメンタリティー、つまり頭の柔らかさです。能力やスキル、経験年数は紙に書けても、これは違います。カウンセリングでは能力の話などしません。それは必要条件ではあっても、十分条件ではないからです。現に、能力で合格でも企業面接ではメンタリティーで90%が落ちます。だから、エネルギーのない方には“あなたの顔は暗いですよ”とはっきり言っています。
個人として、本当は何をやりたいのかという部分も整理してもらいます。転職にリスクはあっても、“本来のあなたとして仕事をやりたくないですか”とお聞きするわけです。ここで、納得感を高める方が多いですね。つまり、ライフスタイルの選択です。リスクをとれるのか、についても確認します。転職すれば、今までの1.5倍の大変さも味わうからです。