2003年以降、日本はいよいよ本格的な少子高齢化時代を迎え、教育や福祉といった社会基盤が大きく変化しつつあります。当社では、2003年を「第三の創業」と位置付け、以後、お客様のニーズにあった商品・サービスに対応するため、様々な改革に着手して参りました。その結果、業績も順調に推移して、経営目標として掲げた数字も、二期前倒しで達成することが出来ました。
教育には、人格の基礎を培う家庭教育・学力を育成する学校教育・人生を深く味わうための社会教育の3領域があります。大学全入時代になり、世の中の教育の在り方、教育を取り巻く環境が大きく変化している今、当社としても新しいことを次々と手掛けています。これまでの基幹事業領域は、学校教育の補完に留まっていましたが、昨今では、文部科学省の指導要領、教科書準拠型から非準拠型へ、その枠を超えて子供の成長をどう支えていくのかという点で顧客ニーズが高まっています。OECD(経済協力開発機構)実施のPISA 調査(生徒の学習到達度調査)によると、日本のPISA型読解力(※国語科における読解力とは一線を画したもので、持っている知識を生活場面での課題解決に活用する能力)は、2000年の8位から2003年には14位に低下しました。コミュニケーション力が世界標準で求められる中、これらを身に着けていく教育メソッドがまだ日本にないのが現状です。当社では、教育トレンドの最先端をR&Dする「Benesse教育研究開発センター」というシンクタンクを保有し、PISA型教育について、より先進的で高度な研究を行っています。現在は、東京大学や東京学芸大学の教授方と共同研究を行い、これらリテラシー教育(知識を使いこなす力)分野のメソッド作りを手掛けています。この内容は、来期から学校で使用される教材の中にも反映される予定です。
学校の教育体制は、今までの6年(小)―3年(中)―3年(高)から6年(小)―6年(中・高一貫)や12年教育(小・中・高一貫)といったように多様化しています。『進研ゼミ』でも、この個別化の動きや個々の理解度に合わせた「ノングレード制」のカリキュラム教材として、学び方の個別化に対応しています。ノングレード制への移行、少子化問題というビジネスの転機を迎え、『進研ゼミ』受講生約400万人、その家族の方々も含め約2400万人という膨大な顧客データベースの活かし方、管理方法の変革に着手しました。顧客を個人ではなく家族単位で捉え、これら各家庭に対するコンサルティングを通じて商機を見つけていくために、子会社のコールセンター運営会社(株)テレマーケティング ジャパン における進研ゼミ部門のオペレーター計2500名を、(株)ベネッセコーポレーションのインハウス・コールセンターとして内製化しました。入退会の受付だけでなく、勉強に係わる様々なご提案を通じて継続購買を促す“CRMコールセンター”の発想です。従来のような1学区30万人という大母集団に対して、月に1回教材を大量送付する形式は得意ですが、個別対応となると難しく、最適なプランをご提案しても、その教材の在庫確認が即座に出来ずに商機を逃すことが無いよう、仕組みを改善していかなければなりません。まさに物流改革(SCM)です。一方で、学習教材が紙からITへ移行してeラーニングが進み、インターネット学習素材(次世代進研ゼミ)の需要も増えています。当社内でも2007年1月にデジタル事業開発本部が立ち上がり、今後の注力分野ですが、ただ闇雲に何でもかんでもIT化を進める訳ではありません。学習の目的に応じて、紙とWEBの適材適所を決めていきます。今後は、これらビジネスフレームの変化に伴った社内基盤改革の推進の中で、ロジスティクス分野に強い人材と社内インフラを全面的にリニューアル出来るシステム分野に強い人材が必要となるでしょう。
一般的に認知されている当社のイメージは、「教育準拠型の教材を提供している、女性社員が活躍出来る会社」ではないでしょうか。メインの教育事業においては、前述の通り非準拠型のニーズに応える新たな施策をどんどん手掛けていきますし、教育以外の各事業カンパニーでも商品の多様化、新事業の立ち上げ等を積極的に推進しています。例えば語学分野における語学学校「Berlitz」やパソコン教室「アビバ」、現役生のための予備校「お茶の水ゼミナール」も、その一環です。また、イメージ同様、実際に女性社員の活躍の場も広く、社員の6割、管理職の3割が女性社員です。社名の通り「よく生きる」という視点から事業を展開していますが、男女比や年齢構成比を、社会の縮図と同じような社内構成に近づけていきたいと考えています。最近「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を耳にされる方も多いと思いますが、生活の価値観、仕事の価値観といった個々の価値観に柔軟に対応出来るような懐の広い会社でありたいとの思いから、個々のライフスタイルの変化に合わせ、正社員から一旦は非正社員となり、再度正社員に戻るといった、雇用形態を柔軟に変更出来る新しい仕組みを考えています。男性も女性も、自分の人生を充実させながら働いて頂きたいと思いますので、女性のみならず男性にも育児休職取得制度を積極的に活用して頂いております。家計を支えるという面で、男性の育児休暇取得は難しいと考える方も多いと思いますが、当社では既に10名以上の男性社員がこの制度を活用しています。出産という一大事を共有することで家族の絆がより強固になりますし、当社の場合、家族と過ごす育児休職という貴重な経験が、次の仕事のヒントに繋がることも多いのです。
当社の社風を敢えて表現すると「真面目」そして「アツイ人が多い」です。当社が手掛けるビジネスの根幹には「自分や自分の家族がしてもらいたいサービスを事業化する」という想いがあります。ただ単に売れそうだからではなく、一生活人として当社事業を客観視した際に、自分や自分の家族にも提供したいものをお客様にも提供する姿勢が貫かれています。これは教育分野に限らず語学・生活・福祉と、全社共通の価値観です。各事業に対する思い入れが強過ぎて採算度外視する訳でも、収益率一辺倒に走る訳でもなく、世の中にとって本当にいいものを提供したい!というマインドと数字(収益率)の両側面から事業を捉えられる“バランス感”が必要です。また、一旦過去の成功体験を捨て、クリアな状態から事業に参画出来る“ゼロベース志向”も不可欠です。
各事業一つ一つは小さいかもしれませんが、それが繋がると世の中に大きな影響を与えると思いますし、社会の仕組み・構造を変えていくことにも繋がる、ものすごくダイナミックな仕事だと思っています。『進研ゼミ』の事例を挙げますと、対象世代の約半数は、一度は『こどもちゃれんじ』あるいは『進研ゼミ』をやったことがある時代(現在、受講中の方は5人に1人)です。この数字のインパクトを考慮すると、良くも悪くも社会に与える影響が大きい会社だと言えるでしょう。良き市民・良き社会人として、人の生活や人生、社会の動きに興味を持てる方は、大いにやり甲斐を感じて頂けると思います。
人材紹介会社には2パターンあると思います。1つは、レジュメをとにかく大量に送って来る会社。2つ目は、レジュメの数はそう多くないものの、確度の高い方を紹介して下さる会社。(株)エリートネットワークは後者であり、人事としてありがたいのは明らかに後者です。(株)エリートネットワーク経由の候補者の方が入社される率、いわゆる成約率は、他の人材紹介会社と比べてダントツに高い。当社の事業はテーマを追いかけていく仕事であり、明確な職種の区分けがないため、ガチガチのスペックが書かれた求人票は存在しません。求めるスキルは求人票である程度表現が可能ですが、求める人物像といったニュアンス面での表現には、苦労することが多いのです。(株)エリートネットワークは、「このポジションでは何が一番大切か」という核心部分まで踏み込んで、表現に苦戦するこちらの意図を会話の行間から汲み取り「つまり、こういうタイプの人が望ましいということですね」と、新たな気付きを与えて下さいます。スキル面でのマッチ度合が高い=入社後に間違いなく活躍出来るという訳では決してありません。そのため、スキル以外のお人柄やマインド面にも重点を置いて候補者を推薦して下さる点は、非常にありがたく感じております。
自分で思い描いた、もしくは会社から与えられたゴールに向けた「達成能力」と、人の生活への「興味」は勿論のこと、採用の現場では「行動様式」を重視しています。 自らの業務範囲を限ってしまうのではなく、業務を完遂する中で必要に応じて自ら領域を広げていける働き方が出来るかどうかを知りたいので、前職ではどんな動きをしていたのかを伺います。その企業に合う・合わないは、行動様式が合うか合わないかで決まると思いますので、スペックの優劣より行動様式を重視しています。マインド面では、大きなビジネスを一発当てたいというタイプの方や、教育への思い入れが強すぎて利益を度外視してしまうような方は望みません。現状の教育制度に何かしらの不満を抱えており、その不満を解消するためだけに教育事業に携わりたいというのは、個人の見解の域を超えていないですよね。市場のニーズを捉え、ビジネスとして各論に落とし込み、それを成し遂げていく強い意志を求めます。
当社は、腰を据えて長く勤められる方を求めています。ですから、当社での就労を長いキャリアステップの中の1企業と捉える方は、難しいかもしれません。自分のスキルアップのみを望むのではなく、当社の事業領域やお客様が好きだということが、巡りめぐって最終的には自らのキャリアを磨くことに繋がっていることを、きちんと認識出来るような方がいいですね。