北米及び中国市場における新型車の販売が好調であったことと、継続的に積み重ねてきたコスト低減に向けた取り組みが功を奏した結果だと受け止めています。
特に今回の好業績を支える基盤として、ルノーとのアライアンスの拡大・深化が重要な役割を果たしているこ とをお伝えしたいと思います。日産自動車とルノーは、1999年のアライアンス以降、部品等の購買機能を共同化してコスト低減を推進してきましたが、このアライアンスの範囲を2014年に拡大しました。購買部門だけでなく、研究開発や生産技術・物流、人事部門についても組織の機能を統合し、ルノーと共にシナジー強化に取り組みました。その結果、共通プロセスの策定、人材や資源の共有、組織や業務の重複を省くことにより、単一の自動車メーカーでは実現しにくい水準のコスト削減を実現しています。
更に調達から生産、物流に至る全ての工程でコストをモニタリングし、削減に取り組むシステムを運用してきました。
これらの業務や地域を横断したコスト削減に向けた取り組みが、北米と中国という二大市場での好調と相まって、今回の利益確保に繋がったと考えています。
引き続き北米と中国という二大市場において収益を創造していくことは前提になります。そのためにも今、 「環境」 「安全」 という視点でクルマに求められている技術の変化に向き合っていくことが、弊社にとって重要な課題となっています。
技術革新のキーワードは、「日産インテリジェント・モビリティ」 です。日産自動車は持続可能なモビリティ社会の実現を目指し、「ゼロ・エミッション (走行中のCO2排出ゼロ) 」 と、「ゼロ・フェイタリティ (日産車が関わる交通事故の死亡・重症者ゼロ) 」 に向けた取り組みを推進しています。
「ゼロ・エミッション」 への取り組みについては、世界で最も売れている量産型の電気自動車である 「日産リーフ」 の更なるシェア拡大を目指していきます。
北米と中国は電気自動車の潜在的な市場としても有望です。排ガス規制の厳しい米国カリフォルニア州では、今後ハイブリッド車はエコカーの範囲から除外されることになっています。また、中国でも、新エネルギー車の普及を国として推進していく方針を打ち出しています。
今後、ガソリン車オーナーが違和感なく電気自動車に乗り換えて頂けるよう、日産自動車は車載するバッテリーの性能向上等によって1回のフル充電で走れる航続距離を更に伸ばします。これと並行して、各国が推進する充電インフラのネットワーク拡充にも貢献していく計画です。
一方、 「ゼロ・フェイタリティ」 を目指す上では、日産車が関わる交通事故の死亡・重症者数をゼロにするという究極のゴールを設けています。
そこで鍵となるのが自動運転技術ですが、日産自動車は2016年8月に高速道路の単一車線を走行する自動運転システムを搭載する 「セレナ」 を日本で販売しました。更に2018年には高速道路でのレーンチェンジが可能な自動運転技術を、2020年には交差点を含む一般道路での走行に対応した技術を投入する予定です。
クルマのインテリジェント化は自動運転にとどまりません。常時インターネットに繋がる 「コネクテッドカー」 が実現すれば、道路交通情報やセキュリティサービスに限定せず、極めて幅広い分野にわたる情報や付加価値の高いサービスをユーザーに提供することが可能になります。
これら一連の技術革新をスピーディーに実現するためには、車載システムのソフトウェア開発から人工知能の研究まで、極めて幅広いIT分野のプロフェッショナルを日産自動車にお迎えする必要があります。
一般に自動車メーカーでは同業他社の情報をあまり深く知ることはできません。私の所属する人事部門では業界全体で一定範囲の情報交換は可能ですが、開発や生産部門となると他社がやっていることは当然ながら超トップシークレットです。
ところがルノーとのアライアンスが深化・拡大したことで、フランスの伝統ある自動車メーカーの良い部分をベンチマーク (指標) として、ものづくりの側面でも学べるようになりました。CEOのカルロス・ゴーンは、両社がお互いのブランドを生かす方針を打ち出していますから、日産はルノーから優れた部分を学び、同様にルノーは日産の良い部分を吸収しています。国籍や文化の異なる自動車メーカー同士が認め合い、研究・開発、生産技術・物流、購買、人事という領域で互いの優れた手法に学ぶという関係が構築されており、これは非常に貴重な環境であると感じています。
社内の雰囲気も変化しました。もともと日産自動車には、日本の製造業らしく長期的な視野でしっかり人を育てていくカルチャーがあります。そこにルノー流の経営スタイルが程よくブレンドされたことにより、個人の意思決定が尊重され、リーダーシップを発揮して最後までやり抜き、結果を出すカルチャーが根付いてきたと感じています。
また、各部門のプロジェクトがルノーと情報を共有しながら進むため、必然的に英語によるコミュニケーションが日常的に行われるようになりました。
部門を問わず、入社して頂いた人材には海外業務の門戸を開いています。海外要員とか国内要員といった区別はなく、日産自動車では誰もがグローバル人材なのです。
既にお話ししましたように、日常の業務で海外とやり取りする状況は普通にあります。出張や駐在の形で海外に足を運んで仕事をする経験は、技術系・事務系を問わず当たり前のようにあります。
また、日本の会社ではありますが、「外国人従業員が日本語を話し、日本のやり方に精通している人が多い」 という環境ではありません。年齢や国籍、性別に関わりなく、業務の中では日産自動車の人材もルノーの人材も常に同じビジネスの土俵に立って、侃々諤々のディスカッションを重ね、より良い解を求めて切磋琢磨する環境があります。
つまり、本来の意味でのダイバーシティ (多様性) の中で仕事を進める環境があると言えるでしょう。
ダイバーシティを推進する本来の目的は、専門性や価値観の異なる人材同士で議論を重ねて業務を推進することで、より価値が高いアウトプットやブレークスルーを生み出すことにあると思います。
私自身が日産自動車と中国の自動車メーカーとの合弁企業に赴任した際、いくつか新しい人事面の取り組みや仕組みを導入したことがあります。その際、ローカルの中国人と日本から来た私、そしてルノーのフランス人の考え方を融合することで、良い意味で触媒作用が起きたように思います。 「グローバルで見ればそういうやり方もあるね」 「日産とルノーの仕組みを踏まえて、中国ではこういう形で導入すれば良いのでは?」 といった、前向きな議論を経て実効性のあるゴールに着地することが多かったと記憶しています。
一方で日産自動車は、女性の活躍推進という軸でもダイバーシティマネジメントに取り組んできています。2004年秋に 「ダイバーシティディベロップメント オフィス」 という専門組織を設置し、日産グローバル本社として各国・地域の課題に沿った多様な取り組みを把握しながら、従業員の多様性を尊重する中から生まれるアイデアを事業に生かす取り組みを進めています。
このような活動の成果の一つとして、日産自動車 (日本) の女性管理職比率は、2016年4月の時点で9.1%となっています。理系出身者の多い製造業でこの数字はかなり高い水準であり、これを2017年4月には10%とすることを目標に掲げています。
また現在、すでに制度として運用している 「在宅勤務」 について、育児や介護ニーズのある従業員に限定せずに、間接従業員全員に定着させていく取り組みを推進中です。
私のチームの部下にも子育て中のワーキングマザーがおり、上手く時間をやり繰りして日常の業務を進めながら、お子さんを保育園に迎えに行く際は早い時間に退社しています。
そして、こうした働き方を周囲のメンバーは当たり前のこととして受け止める風土があります。会社として、業務においては子育てで勤務時間に制約のある女性従業員にも男性従業員と同等の機会を与え、海外出張は勿論、海外赴任についても本人の意思やご家族のサポート体制等を確認の上で抜擢する方針を採っています。
私自身は日産自動車には中途入社で、現在13年目です。
新卒で金融機関に就職しましたが、お金を動かすよりも 「人の育成」 への関心が高まり、退職して米国のビジネススクールに留学しました。そこで学ぶ過程で、ゴーンが主導した 「日産リバイバルプラン」 を組織改革のケーススタディに取りあげたことがきっかけとなり、当社の人事部門でのキャリアに興味が生まれました。
帰国後、縁あって日産自動車の一員となってからは、一貫して人事部門の業務を通じてキャリアを積んできました。中でも現在の自分の基礎となったと感じるのが、技術開発拠点である厚木市の日産テクニカルセンター (NTC) 内の600人規模の購買組織の人事部門で働いた約5年間の経験です。
購買部門は日産自動車の中で最も早い時期からルノーとのアライアンスを構築していましたので、当時からグローバルな視野で部品等の調達を行っていました。この部門ではビジネスパーソンとしての私の視野を広げてくれた上司と出会い、日産自動車の全てを一から学ぼうとの気持ちで幅広い人事業務に取り組みました。最後の1年間は購買部門の人事の課長に昇格し、役員に対して直接報告や提案をする経験もしました。そこで自ら人事部門を代表して意思決定を行う責任とも向き合い、自分なりに成長できたと考えています。
更にその後、本社の人事本部での勤務を経て、先程申しあげた中国の合弁企業に赴任した2年間は、日産自動車らしいダイバーシティを直接的に体験する格好の機会であったと感じています。何より中国の都市部には活気があり、合弁企業の従業員も20代・30代が中心で若く、成長意欲が旺盛でした。この組織に人材育成の仕組みを新たに導入し、機能させていくのはエキサイティング且つ非常に楽しい仕事でした。
そして、2016年の4月に本社の人事本部に戻り、Chief of Recruitment (部長) として中途採用と新卒採用を統括して見るようになりました。
注力する電気自動車や自動運転技術、コネクテッドカーに関連する部門を中心に、技術系職種の中途採用ニーズが急速に高まっています。これらの部門では日産自動車とルノーのアライアンス組織を新設してプロジェクトを推進していく計画で、これまで自動車には縁のなかった業界を含め、幅広い領域のエンジニアの方を大量に採用していきます。
電気自動車の開発や、自動運転を支えるAI (人工知能) 技術研究、コネクテッドカー新組織でのサービス開発まで、幅広い技術領域から多様な経験値の技術者を募集しています。
一方で、従来型の車に加え、これら次世代カーのセールス、マーケティング、商品企画、広報、部品原価管理についても中途採用ニーズが高まっています。これらの職種の方々には、グローバル市場におけるNISSANのブランドパワーを更に向上させ、シェアを拡大していく役割を担って頂きたいと考えています。
グローバルな視野で見ると、自動車はまだ成熟産業ではなく、新興国市場を中心として今後も大きく成長していくビジネスです。
多くの人にクルマを運転する楽しさや喜びを提供するだけでなく、地球環境に優しく、同乗者も含めて人の命を預かる便利で安全な移動手段として、世界中の人々の生活の基盤を支える産業であると思っています。しかも、自動車は日本製品の中で今なお世界市場で戦えるプロダクトであり、自動車業界の世界トップテン企業には、日産自動車を含め日本の自動車メーカーが複数ランクインしています。
日本発のNISSANブランドを背負って、グローバル市場で競い合うことができます。このようなビジネスは自動車業界以外ではなかなか経験できないのではないでしょうか。NISSANという日本発のグローバル企業に身を置いて、言わば日本代表として世界レベルのビジネスに参加することは、職種を問わず大きな魅力になると確信しています。
日産自動車に入社してからというもの、一つとして 「同じ仕事を繰り返している」 といった記憶がありません。毎年毎年、新しい変化にさらされる業界であり会社であると感じています。私自身も中国から本社に戻り、再び採用業務に携わっていますが、数年前とは採用課題も採用ボリュームも大きく変わっています。しかも、電気自動車や自動運転技術システム搭載車、コネクテッドカーといった注力事業と併走しながら、スピード感を持って採用プロジェクトを進めていく必要があります。トップマネジメントからの中途採用に対する期待も、これまでになく高まっています。
変化の中で絶えず新しい対応が求められるような業務に抵抗感がなく、むしろそうした環境を楽しめる人には、日産自動車は間違いなくフィットする会社です。こうした業務を様々な国籍の多様な個性の人材と共に実現していくことに積極的になれる人や、自分の可能性を広げながらグローバルビジネスで戦っていきたい方。或いは個の意思を尊重する実力主義の下、長期的な視野で多様な業務を経験してステップアップしていきたい方にも期待しています。このような志向を持つ一人でも多くの皆さんが、日産自動車の仕事に魅力を感じて頂ければと思っています。