株式会社タカラトミーは、株式会社タカラと株式会社トミーという2つの玩具メーカーが2006年に合併して生まれた会社です。
先に創業したのは(株)トミーで、1924年(大正13年)、創業者の富山(とみやま)栄市郎が21歳の時、東京の立石に開いた、おもちゃづくりを生業とする小さな工房「富山玩具製作所」が会社の始まりです。富山は、当時のおもちゃの主流であった金属玩具で、子どもたちの憧れの乗り物だった飛行機玩具を数多く作りました。弊社の飛行機玩具は非常に高い人気を得て、玩具業界で「飛行機の富山」と称されるようになりました。
飛行機玩具の大ヒットを原動力に会社規模を拡大させながら、富山は日本の玩具産業の地位をより向上させたいと願うようになりました。そして、当時としては近代的な “流れ作業” を導入した製造拠点を国内に設置して玩具を量産化したり、研究開発部門を設置したりと、積極的に新しい取り組みにチャレンジしました。また、戦後には飛行機玩具(B-29)で国内外における成功を収め、輸出事業を拡大していきました。
このような弊社の原点にある創業者の思いが、創業理念として言語化されています。「われらの優良な商品で 世界市場をにぎわせよう」「誠意と努力は他を益し 自己の幸福の基となる」という言葉です。
現在も経営者自ら、年に数回全社員が集まる場でこの理念について語ることが多く、一人ひとりの社員の意識の中に、創業者のイメージと共にこの創業理念が根付いていると思っています。
この頃はおもちゃの主な材料が金属からプラスチックに変わり、また動力も電動玩具へと移行する中で、玩具業界は大きな転換期を迎えました。
金属とプラスチックでは製造工程が異なる上に、当然ながら電動玩具には新たに電気工学の知識が求められます。弊社は金属玩具で培ってきたものづくりのノウハウに加え、“第二の創業” を成し遂げる心構えで、新しい技術を採り入れていきました。
そして、この時期のおもちゃの技術革新に対応した代表的な商品が、1959年発売の「プラレール」の原型となった「プラスチック汽車・レールセット」という電動の鉄道玩具です。
事業体制についても、既にお話ししました輸出事業の拡大を受けて、早くも1960年代にニューヨークとヨーロッパに駐在員事務所を開設しました。自社のおもちゃを世界のより多くの子どもたちにお届けするべく、業界に先駆けて海外に販売拠点を設け、各国の市場に密着したマーケティングを開始したのです。
更に1955年には、(株)タカラの前身である(有)佐藤ビニール工業所が設立され、1960年に「ダッコちゃん」という空気で膨らませるビニール製の人形を発売、国内では誰もが知る大ヒット商品となりました。
また、着せ替え人形の「リカちゃん」は、1967年の発売以来、累計6千万体以上売れた人形として、現在に至るまで世代を超えて親しまれ、また対象者も女児にとどまることなく幅広い層に愛され続けています。
1970年、弊社はダイキャスト製のミニカー「トミカ」を発売しました。子どものお小遣いで買える程の低価格でありながら、本格的で質の高い外観やクルマとしての精巧な機構は爆発的な人気を呼び、現在も日本のミニカー市場のトップシェアを誇っています。現在は乗用車から救急車等のはたらく車まで常時140車種をラインアップし、世代を超えて親しまれるロングセラー商品となっています。
また、トミーが創業50周年を迎えた1974年には、二代目の富山允就(まさなり)が社長に就任しました。富山允就は、自らスケッチを描いておもちゃの開発を手掛ける程、おもちゃづくりの技術や品質に拘りを持つ経営者でした。
この時期には生産体制を更に強化し、香港での委託生産に続いて、シンガポールに自社工場を開設する等、海外拠点での生産を本格的にスタートしています。
その後、1980年代以降には株式の店頭公開から東証二部上場、更には東証一部上場へと段階を踏んだ企業成長を実現していきます。ですがその過程には、1985年のプラザ合意による急激な円高によって、海外事業の比率が高まっていた弊社の収益力は悪化し、会社の存続が危ぶまれた時期がありました。この状況を打開するため、国内生産拠点の縮小や従業員の削減を含む、痛みを伴う経営改革に取り組まなければなりませんでした。
当時の副社長で、1986年に三代目の社長となった富山幹太郎が、プラザ合意後の経営改革を主導しました。富山は後にこの時代を振り返り、弊社がそれまでの経営スタイルを抜本的に変革し、マーケティング主導型の会社へと舵を切った時期であると語っています。
創業以来、弊社は自社に開発メンバーを厚く抱え、国内の生産拠点における生産技術の高度化を進めながら、自分たちで手を動かし、おもちゃ内部の機構をはじめ細部に至るまで徹底的に追求するプロダクトアウト重視の会社でした。
ところがこの “第三の創業期” を境にして、弊社の強みであるものづくりへのこだわりは大切にしながら、ある種 “プロデューサー” 的な立ち位置で新しい価値を創造するスタンスを重視するようになったのです。
つまり、戦略的に外部開発会社やデザイン会社等多くの企業と提携しながら、子どもたちが「楽しい」と思えるおもちゃの世界観――“情報付加価値” を提供していく、という事業スタイルへの転換を図りました。他社が権利を持つキャラクタービジネスへの挑戦や、おもちゃを切り口にしたアニメーション等の複合的なメディア展開にも取り組みました。
こうして幅広い視点で玩具ビジネスを展開していく上で、ものづくりにこだわってきた弊社のDNAがとても役に立ちました。人気の高いキャラクターの版権を有する企業は、自社の大切なブランドを任せるパートナーを厳しく選びます。その点、「トミカ」をはじめとする自社ブランドを大切に育ててきた弊社の技術力は高く評価され、多くのコラボレーションを円滑に実現することができました。
自社のものづくりにこだわる姿勢と、プロデューサー的におもちゃの付加価値を創造する姿勢とが、両輪で機能していったことで、激変する経営環境の下でも “第三創業” を成し遂げることができ、その後の事業成長にも繋げることができたと思っています。
合併について大半の社員は事前に知らされていませんでしたので、新聞の一面で合併の記事を初めて見た時には本当に驚きました。人事部門にいた私の立場からお話ししますと、合併期日まで1年もない状況で、新生株式会社タカラトミーをどのような会社にしていくべきか、タカラの社員、トミーの社員双方と何度も話し合い、就業規則をはじめとした社内規程を統一する業務に取り組みました。更に合併後は、人と組織の融和を図ることで事業のシナジー効果を最大化するというミッションもありました。
就業規則一つをとっても、全ての事項が両社のこれまでの歴史の上に成り立っているため、互いに譲歩できる部分とできない部分があり、なかなか簡単には一本化できませんでした。
更に人事部門同士で議論に議論を重ねてようやく着地した統一案を、役員会の了承だけでなく労働組合の理解も得なければなりません。
合併までの期間はとにかく多忙だった記憶しか残っていませんが、一つ有難かったのは、歴史も商品も異なる2社でありながら、共通点があったことです。それは、タカラ及びトミー双方の社員皆がおもちゃづくりという事業が大好きで、子どもたちが好きで、子どもたちに夢を届けたいという思いを持っていたことです。根底の部分で分かり合えているので、共通の目的のために今どうするのがベストかという視点で本音で話し合い、結論を導くことができました。
合併後も、それまで部署毎の常識だったやり方が通用しなくなったとか、帳票の書式が変わってしまったとか、細かい部分で社員が戸惑いを覚えることはありました。ですが、出身会社の違いで足を引っ張り合うといったことはなく、お互い自然に同じ方向に目を向け、「子どもたちのために良い商品を作ろう」という姿勢になれたと感じています。このため極めて短期間のうちに組織の融和が実現し、事業面での良い結果に繋げることができたように思います。人材の配置についても、例えばトミーの定番商品を扱うグループのトップにタカラ出身の部門長を配置する等、出身にこだわらない思い切った人事を実行していきました。
弊社では2014年を初年度として、新しい中期経営計画に沿った改革への取り組みをスタートしています。この中期経営計画を策定するにあたって、様々な部門・階層の社員によるプロジェクトチームが編成され、そこに私もメンバーの一員として参加しました。
もとより、非常にスピーディーで思い切った意思決定がされる環境ではありましたが、ここ数年経営判断のスピードは更に加速していると感じます。
中期経営計画に基づき、社内の組織数は約25%削減、フラット化され、幹部職の年齢も若返りが図られました。また、中期経営計画の軸として「商品改革」が進められました。業界や自社の常識に捉われずに意見を交わし、問題提起し合うことによって、新たな世界観を持つ商品展開も行われました。
例えば、大人も楽しめる新ブランド「LiccA(リカ)」は、これまでの「リカちゃん」のイメージを大きく覆すもので、大きな話題を呼びました。
スマートフォンやタブレット端末が身近な存在となり、SNS等個人が発信するメディアが発達する中で、子どもたちの遊びを取り巻く世界も大きく変わっています。
弊社も時代の変化に対応して新しいネットワーク技術等を採り入れ、パーソナルな情報流通の形を踏まえて商品やブランドを進化させていく必要があります。そこで2014年からを “第四創業期” と位置付けると共に、新しい中期経営計画に沿って「意識改革」「商品改革」「ビジネスの構造改革」を柱とする取り組みを進めています。
“ENDLESS”、“AGELESS”、“BORDERLESS” をキーワードに世界市場でマーケティングを展開する玩具メーカーであるべく社員の意識改革を促しています。商品についてもアナログの強みを生かしながらデジタルの要素をプラスし、新たな年齢層のユーザーも取り込み、進化し続ける玩具であることを目指しています。また、POA(Point of Availability:販売箇所)を増やしていく戦略に基づいて、書店やドラッグストア、外食店等、玩具店以外で子どもが足を運ぶ場所の開拓にも継続して取り組んでいます。
これまでの開拓の具体例としては、グループ会社である株式会社タカラトミーアーツが空港にガチャ(カプセルトイ)を設置したことなどが挙げられます。特に訪日外国人観光客に好評を得ています。
グローバル戦略につきましては、少子化で市場規模がほぼ横ばいの日本市場に対して、持続的に成長を続けている世界の玩具市場への展開がカギになります。
弊社では現在、アメリカズ(北米+中南米地域)、欧州、オセアニア、アジアの各市場でビジネスを展開しています。かつては、各国のマネジメントを現地主導で行っていましたが、2015年よりアメリカズ(北米+中南米地域)、欧州、オセアニアを東京のタカラトミー本社が直接経営管理する体制に変更し、これまで以上に各市場と密接に連携して、事業の “選択と集中” を推進する方針に転換しました。
北米には世界の玩具メーカーの上位2社があり、今後のグローバル展開において大変重要な意味を持つ市場です。弊社は米国市場でのプレゼンスを高めるため、既に2011年に米国の玩具メーカーRC2を買収、TOMY International, Inc.(TI)を設立しています。乳幼児並びにその母親のためのベビー用品や「JOHN DEERE(トラクター等の農耕車両玩具のブランド)」に強みを持つ同社との連携をより一層強化して、収益創造に寄与する事業への選択と集中を進め、グループシナジーを最大化していく考えです。
TI社との連携強化は北米市場に留まらず、グローバル市場でも相乗効果を発揮しています。各国の特性を見定めて、TI社の扱う商品やブランドの一部をヨーロッパの市場でも販売しています。また、注目度の高い映画関連商品をはじめとする大型コンテンツとのコラボレーション戦略も、引き続き展開しています。
今後の成長が期待されるアジア市場では、幅広いユーザー層に向けてきめ細かい商品展開を進めています。例えば、低価格帯の「トミカ」として「TOMICA COOL DRIVE」を展開するほか、子どもたちに人気の高い “車と動物” をテーマに、紙をベース素材とする簡素な機構のトイを展開する等、市場の特性に合わせて商品構成を拡充しています。
社風について社外の方にお伝えしようとすると、あまりに個性的なメンバーが集まっている会社であるため、一つの言葉で形容するのが難しく、いつも困っています。
寡黙だけれど優れた手腕を持つ職人気質の人もいれば、“お祭り人間” という言葉が似合う人もいて、敢えて言うなら、そんなバラバラな個性を「それでいいんだよ」と活かし合う社風でしょうか。
一つ共通しているのは、どこか純粋で、子どもの心を忘れていない社員が多いことです。先ほども触れましたが、タカラトミーという会社に対して愛情を持っていて、おもちゃを作る事業が好きで、子どもたちのために夢を届けたい、といった熱い思いを心の底に持っている社員が多いと感じます。
日々の仕事の中では意見がぶつかったり、ピュアであるが故に議論が熱くなったりする場面もありますが、お腹の底には共通した思いがあるため、同じ方向を向いて仕事に取り組むことができています。また、どこか新しいものや楽しいことが好きな人が多く、話してみると皆前向きで、接していて飽きないなと感じる人が多いです。私自身も、社員にそうした共通項があるお陰で、ここまで長く働き続けることができたのではないかと思っています。
また、弊社が生み出した多くの商品が、世代を超えて愛され続けていることは、お客様のニーズに寄り添おうとする社員の “思い” が先輩から後輩へと受け継がれてきた証でもあると受け止めています。時代の変化の中で、変えるべき部分と変えてはならない部分を見極め、一方で安全品質を徹底的に追求する姿勢を保ち続けて、商品に絶えず新しい価値をプラスすることによって、ロングセラー商品として存続することができたのだと思っています。
弊社は離職率が非常に低く、これまで中途採用に注力してきませんでしたが、事業の拡大に伴い、今後は経理部門や法務部門等、管理部門で即戦力のプロフェッショナルの方々をお迎えしたいと考えています。
これは弊社ならではの特徴ですが、おもちゃというのは “遊び” を軸として、本当に何でも作り得る事業です。例えば、コップを使って新しい遊びを生み出そうとなれば食器を扱いますし、化粧品や衣料品を扱うこともあります。一つの会社に身を置きながら、経理部門では非常に幅広いアイテムに関連した数字を扱い、法務部門では知財をはじめ様々な権利を扱い、また新しい技術に触れることになります。しかもビジネスを通じて弊社がコラボレートする企業は、日本だけではなく世界に広がっています。従って一定の語学(英語)力は必要となります。
玩具業界でのご経験は問いませんが、消費財メーカー等で経理や法務を担当されたご経験をお持ちの方は、弊社の事業には馴染みやすいのではと考えています。部門やポジションごとに求めるスペックは異なりますが、基本的にはご本人のお人柄や資質を重視してマッチングを行っています。
また、グローバル事業の本格展開を担い、将来的にこの事業を牽引して頂けるリーダー候補としての人材にもお会いしたいと考えています。その方には、海外事業のマーケティング及びマネジメントの職域を担って頂くことを期待します。勤務地は国内と海外をどちらも想定していますが、語学(英語)力については必須要件としています。こちらも玩具業界でのご経験は不問ですが、消費者一人ひとりに商品を提供するB to Cの事業をご経験されている方のほうが、弊社の事業との親和性は高いと考えています。
これは新卒採用で入社される皆さんにもお話ししていることですが、「究極的に利己的でいて下さい」ということを強調しています。
折角仕事をするのなら、堂々と「自分のため」と思って頂いて、会社としてもそういった方々が活躍できる場を提供したいと考えているからです。上司のため、会社のためにではなく、タカラトミーというビジネスの舞台を使って、自己実現を成し遂げたいといった気持ちで入社して頂くほうがいいと思っています。
おもちゃ業界の環境変化は激しく、「こうすればうまくいく」といった正解はない世界です。そこで責任ある仕事を担ってチャレンジを重ねていくからには、ほかでもない「自分のため」に頑張る覚悟がなければ、いずれ立ち行かなくなってしまいます。
待ちの姿勢ではなく、自分のために主体的に行動できる人であれば、弊社として用意できる舞台は沢山あります。また、社員数も単体で500名程の会社ですから、自分から手を挙げれば、大抵のことは任せてもらえる風土があると思っています。
私個人も、新卒で弊社に入社してから長らく人事に携わってきましたが、20代の頃から自分が興味を持ってやってみたいと思った責任ある業務を全面的に任せてもらった経験があります。
報酬体系もポジションによって明確であり、ステップアップも早かったと感じています。若いから、女性だから、或いは中途入社だからといった理由で、やりたいことをやらせてもらえないといったことがないフェアな会社だと思います。また、育児休業復帰率は100%と女性が長くキャリアを築ける環境も整っています。
タカラトミーは玩具メーカーとしてネームバリューがあり、社名や商品名を言えば、殆どの方がご存知です。これ程に有名な商品やブランドに新しい価値を加えていく仕事は、非常にエキサイティングだと思っています。
弊社は今、グローバル企業を目指して大きく変わろうとしています。タカラトミーというステージに、新しい風を吹かせて頂ける方との出会いを楽しみにしています。