1969年、株式会社住友銀行(現・株式会社三井住友銀行)から分離独立した日本情報サービス株式会社が、当社の前身となる企業です。設立当初は旧・住友銀行およびグループ各社の情報システム構築・運用を担う企業としてサービスを展開する傍ら、サイエンス事業部等、高度ITの利活用が求められる特徴的な取り組みを始め、グループ企業外のお客様へも情報サービスを提供していました。
大きな転機となったのは、社名を変更した1989年です。当時の旧・住友銀行のトップが、総合金融グループとして持続的な成長を目指すためには、これからの日本がどうあるべきか、また企業はどうあるべきかを独自に考察し、発信していく機能を持つ戦略会社が必要であると考えたのです。
単に金融サービスだけを提供するのではなく、グローバルにおける日本のポジションをどう高めていくかをミッションに、次世代の国や産業のあり方を提言し、そのための成長を支援する企業をグループ企業内に育てていこうとの強い意志を込めて、新社名を株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)としました。
新社名でスタートする際、国内大手シンクタンクや外資系コンサルティングファームから複数名のコンサルタントを幹部社員に迎え、その他にコンサルタント希望者を市場からまとめて募集して、シンクタンク・コンサルティング事業の船出に臨みました。
この時に集まったメンバー自身がかねてから実現したかったサービスやソリューションのあり方を、日本総研で一つずつ形にしていったこの頃から、「個の創発」という日本総研のDNAとも言えるカルチャーが培われていきました。
「個の創発」とは、個人一人ひとりの自由で自律的な振る舞いの集積が組織にゆらぎを与え、ある時点で突然それが相転移して組織全体を新たな次元にシフトさせるという考えで、私たちが大切にしている価値観です。
その後、当社は同じ旧・住友銀行系の住友ビジネスコンサルティング株式会社との経営統合(1995年)、株式会社さくら総合研究所との統合(2001年)等を実施。これらの統合を通じて、競争力を高め、現在の姿になっています。
そして、来年には、いよいよ創立50周年を迎える予定です。
私たちの事業ビジョンは「次世代の国づくり」であり、クライアントが公共(官)であるか民間(民)であるかにかかわらず、共通のゴールは「今の日本が持つ課題をどのように解決していくのか」に集約されます。さらに申し上げるなら、そのゴールに至るプロセスにこそ日本総研らしさがあると考えています。それは次の点です。
日本総研らしさを一言で表現すれば、「個の創発」を出発点として、社員一人ひとりが自主自律の姿勢でテーマを設定し、追究していくことです。
「このテーマは今後の日本の課題解決に大きく貢献できると思うから、時間はかかっても納得できるまで取り組んでみたい。」
このような考え方で、コンサルタントが個人または部門内で各テーマを担当するグループとして、それぞれ追究したいテーマを深堀りし、発信しています。それらのテーマについて、その社会的な価値を私たちマネジメント側が公正に評価し、会社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)をどれに優先的に投下するかの意思決定をします。
また、一般的にシンクタンク・コンサルティング業界では、公共か民間のどちらかに事業の軸足を置くケースが多いと言えます。直近の目に見える成果を重視すれば民間のクライアントの比重が高くなり、社会的問題の解決を重視すれば、公共のクライアントの比重が高くなります。
これに対して私たちのスタンスは、各テーマの専門グループごとに、必要に応じて民間も公共もタッチするというものです。公共に注力して政策提言だけを行っても、実行者である民間を支援できないと、結局日本が抱える課題を解決することはできない、と私たちは考えています。その逆も然りです。
現在、当社のリサーチ・コンサルティング部門全体における官・民の仕事の割合はほぼ半々です。次世代の日本の成長支援を行う上で、バランスの良い体制が整っていると思います。
加えて、調査部、創発戦略センターといった社内の他部門との連携も密に図っています。調査部は、国内経済やグローバル経済の動向分析、その観点からの政策提言・情報発信等を行い、事業インキュベーションを担う創発戦略センターでは、1990年代から今後必要になる新たな産業の創造・新しいアプローチによる既存産業の競争力回復等に取り組んでいます。
そして、リサーチ・コンサルティング部門では、個別のクライアントに具体的なビジネスモデルを構築・提案することで、企業の事業展開の支援や、個別の公共課題の解決方向の提案等を実施しています。
つまり、調査部が政策提言を行い、実際に事業化できるのかを創発戦略センターが検証し、リサーチ・コンサルティング部門が、具体的なビジネスモデルの展開や政策の実行支援を担う。このように三つの部門でシームレスな連携ができる、という点も当社の特長です。
当社は基本戦略としてフルラインのサービスを目指すのではなく、強みを出せる分野に絞る「カテゴリーニッチ」の戦略を打ち出しています。その中で現在、強みとしている代表的な分野は、「ヘルスケア分野」「環境・エネルギー分野」や公共分野における「地域政策」です。また、分野を横断した「オープンイノベーション」というテーマについても豊富な実績を築いており、競争力を確立しています。
ヘルスケア分野につきましては、製薬会社や医療機器メーカーをクライアントとする戦略系コンサルティング、およびヘルスケア業界への新規参入戦略を検討するコンサルティングの実績が豊富です。さらに最近では、健康に生きるという意味での「未病」「予防」、あるいは「介護」といったテーマでのサービス展開を強化しています。これらのテーマにつきましては経済産業省、厚生労働省への政策提言を積極的に重ねると共に、大学等のアカデミアや理化学研究所、産業技術総合研究所等とも連携して、新しいシーズ開発と事業化に向けた取り組みを推進しています。
ヘルスケアや環境・エネルギーといった分野のテーマは、中央省庁への政策提言と企業を巻き込んだ実効性のある取り組みが不可欠です。調査部と創発戦略センター、そしてリサーチ・コンサルティング部門の3部門によって、これらをシームレスに展開できることが、日本総研らしいエッジの立ったサービスであり、提供価値になります。
とはいえ、これらの分野のテーマだけを追究している訳ではありません。例えば、当社調査部の理事である山田 久(やまだ ひさし)を中心に、「働き方改革」に象徴される労働生産性の向上を軸とした人事施策について、調査部とリサーチ・コンサルティング部門が連携して、日本におけるプレゼンスを高めています。
また、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)という観点で企業価値を評価するESGの活用戦略についても、創発戦略センター発の重要テーマとして三井住友銀行と共同で情報発信活動を継続しています。
加えて、世の中のサービスやビジネスをITソリューションによって変革し、新しい価値を生み出すデジタルトランスフォーメーション(DX)、コーポレートガバナンスの強化を前提とした海外を含むグループ経営の最適化、ポストM&Aマネジメントといった分野のテーマについても、戦略的に強化しています。
他の銀行系シンクタンクと比べ、案件受注面での銀行との密着度は低いですが、当社の得意とするコンサルティング分野においては、銀行と連携して顧客への提案を実施したりしています。またここ3年程はSMBCグループとの連携を強化する戦略の一環で、組織間の人材交流にも積極的に取り組んでいます。
例えば、三井住友銀行のITイノベーションの担当者と当社のコンサルタントが連携し、おのおのが持つITノウハウをビジネスや街づくりに活かしていただいているケースがあります。逆に当社のコンサルタントが銀行の新市場マーケティング部門に出向し、法人顧客との新たなビジネス開拓に貢献している例もあります。
いわゆる、クライアント先への “常駐サービス” は少なく、コンサルタントはマルチタスク(同時並行)で3~4つの案件に携わるケースが一般的です。
民間企業をクライアントとする場合は、コンサルタントのカウンターパートは経営幹部クラスの方が中心です。プロジェクトの規模は、3~7名程度で、2カ月~半年間程度で行うものが多いです。
公共のクライアントの場合には、中央省庁であれば課長代理や課長補佐といったクラスの方々と日常的に情報交換しながら、平均して1年、長いと3年程になるものもあります。テーマに応じて設計事務所や弁護士事務所等の社外スペシャリストと連携しながら進めていくこともあります。
リサーチ・コンサルティング部門では、クライアントに直接プロモーションができ、若手メンバーを束ねてプロジェクトのマネジメントに手腕を発揮していただけるマネジャー層を特に積極的に採用していきたいと考えています。プロジェクトの分野やテーマは問いませんが、中でも当社が強みを持つ分野(ヘルスケア、環境・エネルギー等)、注力分野(デジタルトランスフォーメーション等)のコンサルティング経験をお持ちの方々は特に歓迎しています。
先にお話ししましたように、当社はコンサルタントの「個の創発」を大切にし、社員個人またはグループが自主自律のスタンスでテーマを追究するカルチャーが根付いています。
例えば、提供できるソリューションが会社の大方針の中で注力するサービスだけに限られ、クライアントのニーズに真に合致した提案ができないと悩まれているコンサルタントの方には、当社で構築できるソリューションの自由度の高さは大きな魅力となるはずです。
また、現職で昇格を続けなければ辞めざるを得ないといった “up or out” の文化の中で、短期間に成果を追求する働き方に疑問を感じているような方には、自分のテーマを深掘りしつつ、若手メンバーの育成も含めて長期的に安心してご活躍いただける環境があります。
さらに当社では、リサーチ・コンサルティング部門内に人事機能を担う組織を設けています。コンサルティング現場での業務にも精通した人事担当者が、日本総研の競争力の源泉である “ヒト” の採用、適材配置や主体的なキャリア形成の支援、カウンセリング等に努めています。
求める資質としては、お客様との関係を強化する上でも、自分のテーマを深めていく上でも、プロアクティブな取り組みを継続できる意識を持った方がフィットすると思います。例えば、「私の専門は●●なので、ここまでが担当範囲です」と自らの可能性を狭める姿勢でいると、人材価値は陳腐化しやすいと感じています。
加えて、グループを超えた連携が日常的に発生し、またSMBCグループの組織間で連携する機会も増えていますから、リレーションづくりに長けた方は親和性が高いと言えるでしょう。
例えば、2年半程前に中途入社したエネルギー分野に強みを持つコンサルタントは、現在三井住友銀行の法人営業の支援部門に出向し、銀行の様々なクライアントに対して新しいビジネスの創造をサポートする銀行担当者をバックアップしています。前職および学生時代に培ったエネルギーとITの知見を融合し、クライアントの10年後、20年後を見据えた技術分野への先行投資を提言する等、産官学を横断した視野を持って、ビジネス創生をプロデュースしています。この方は現在30代半ばですが、既にシニアマネジャーとしての期待通りの活動ができています。
また、約2年前に当社へ転職した人事コンサルティング経験者は、クライアントに対して業務改革を提案することで人材の定着と成長を促しています。この方はまだマネジャー手前の若手ですが、業務改革コンサルタントと連携し、人事制度改革に限定しない豊かな発想でクライアントの経営課題の解決を目指したのです。
まさに自主自律のカルチャーを体現する働き方であり、部門としても、こうした方には継続して分野横断型プロジェクトに携わる機会を提供していく考えです。
最後に、1年半前に入社したコンサルティング未経験者の例として、霞が関の中央省庁のキャリアから20代後半で当社に転じ、東北地方での地方創生に関わる仕事に取り組んでいる方がいます。前職でのアプローチとは異なり、自ら現場に出て現状を変える仕事に尽力したいという思いからコンサルタントへの道を選択。地方自治体や地域の事業者と向き合い、国からの予算措置も適切に活用しながら、復興に向けたベンチャー支援や人材育成等に取り組み、ここ2年程で成果を上げています。