企業インタビュー

東急株式会社 企業インタビュー

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交通インフラ事業からまちづくり、暮らしのニーズに応える生活サービスまで、グループ230社(*1)を展開する東急グループ。創立から約100年をかけて培ってきた膨大かつリアルな顧客接点を活かし、デジタル技術で全く新しいお客様体験を生み出そうとするDX戦略が動き出しています。
今回は事業持株会社である東急株式会社でDXチームを率いるプロジェクトオーナー、宮澤 秀右(みやざわ しゅうすけ)氏にインタビュー。日本最大級のスケールでDXを推進することの社会的なインパクト、生活者視点で新たなデジタルタッチポイントを一つひとつ形にしていく面白さ、社外人材を募って編成するエンジニアチームの狙いなどについてお話を伺いました。(掲載開始日:2021年7月21日)

まず初めに、貴社のDXが目指す姿について、他社との違いを念頭にご説明頂けますか。


経営企画室 デジタルプラットフォーム準備プロジェクト
プロジェクトオーナー 宮澤 秀右氏

2021年の4月に東急に入社して、ここで推進すべきDXとは、シンプルに「顧客接点を改革していくこと」だと考えました。

今、世の中でいろいろな企業がDXを進めています。ですが、成功しているのは全体の10%ほどで、多くの企業が成功していないと自己評価しています。これは、そもそも目標の立て方が適切でないか、日本人特有のメンタリティで謙遜してそのように評価しているか、まだ道半ばであるのかなど、いろいろな状況が混在しています。DXの難しいところは、企業ごと、事業ごとに採るべき手法が異なるという点です。

経済産業省の「DXレポート」も参考にはなりますが、どの会社もここで示される施策に沿ってDXを推進すれば成功するのかと言えばそうとは限らないのです。DXの道筋がまだ世の中に存在しないと言える段階で、各社それぞれ自社に合ったデジタルトランスフォーメーションを構築していかなければなりません。ここがDX推進の難しさであり、チャレンジングなところです。

では、東急に合ったDXとは何でしょうか。東急グループは、230社が80もの異なる事業を推進している企業グループです。東急線沿線の乗降客数は年間11億人(*2)を超え、多くの業種にまたがる複合的な企業体でありながら、ブランディングにも成功していると思います。でも顧客目線で見ると、現状ではそれぞれのサービスが個別に提供されているイメージです。

私自身、もともと東急ファンであり、東急線沿線に住み、東急グループの顧客の一人でもあります。東急電鉄の電車に乗る、東急ストアを利用する、まちを歩けば東急ベル(家事サービスやネットスーパーなど幅広い生活サービス事業を展開する企業)のトラックが走っている。妻は東急のスポーツクラブを利用したいと言っています。どれも東急のサービスでありながら、デジタル分野に関しては一本筋が通っていないと感じていました。

だから、東急グループのリアルな顧客接点、その全てをタッチポイントとし、お客様のために、満足度を上げるデジタルトランスフォーメーションを進めていく。これが私たちの目指すべきDXになります。

*1 230社:2021年3月末日時点。東急(株)連結、東急不動産HD連結、東急建設連結、世紀東急工業連結の会社数を合算した数値。
*2 年間11億人:2019年度実績

貴社ならではのリアルな顧客接点を活かしたDXを、どのような戦略で推進されるお考えですか。


基本的に3つのフェーズで推進していこうと考えています。

現在、私たちの会社が持っている顧客接点は、読んで字のごとく「点」です。鉄道の点、生活サービスの点、沿線の都市複合施設という点、全国のホテル・リゾートという点……。リアルな顧客接点が数多く点在しています。
そこでまず、交通インフラ事業、生活サービス事業、まちづくり事業、ホスピタリティ事業といった事業ごとに、顧客接点をデジタル技術でお客様にとって最適なものにしていく。これがフェーズ1です。

次に、カスタマージャーニー(*3)を考えて、お客様の生活動線に沿って「点」を繋げていく。例えば、お客様が鉄道を利用して駅を出た後に、渋谷スクランブルスクエアに入ってショッピングをされる。その時系列の動きに沿ってデジタルサービスを最適化していけば、一人ひとりのお客様の嗜好に合った情報をタイムリーに提供することも可能です。
つまり、既存のビジネス領域を横断して顧客接点を「線」で繋いでいく、という発想で新しいビジネスやサービスを創出できる。これがフェーズ2になります。

そしてフェーズ3では、全ての顧客接点が「面」で繋がる世界を目指します。お客様がリアルにどのような場所を訪れても、常に一つのデジタルプラットフォームで東急線沿線のエリア一帯と繋がっているような世界観です。お客様はこのデジタルプラットフォームを利用することで、例えば今まで知らなかったおいしいパン屋さん、確かな技術を持ったクリーニング屋さんなど、沿線のまちの事業者にアクセスできるようになる。事業者側から見れば、デジタルとリアルの相互送客が容易にできる環境を活かして、従来はできなかった新たな集客も見込めるでしょう。

このようなDX構想から、2021年7月1日付で「デジタルプラットフォーム準備プロジェクト」(Urban Hacks)という新組織を設立しました。

*3 カスタマージャーニー:一人ひとりの顧客が商品やサービスの購買・利用に至る一連の行動を「旅:journey」にたとえたマーケティングの考え方のこと

鉄道事業や生活サービス事業がシームレスに繋がっていくイメージですね。貴社のコア事業である「まちづくり」と連携したサービス構想にはどのようなものがありますか。


「顧客が真に求めているサービスについて考え、それに応えるために仮説を立てていくと、いずれスーパーアプリとなる可能性もあると考えています。
ですが、それを作ることが最終目的ではなく、あくまで顧客の求めているサービスを実現させるための一手段として検討しています」

わくわくするようなアイデアとしては、「東急ならではのスマートシティ」です。これまでに自動車メーカーなどが小規模なスマートシティを創り出しましたが、まちづくりにはやはりシティデベロッパーに優位性があります。スマートシティには100個ものキーコンポーネント(構成要素)があると言われていますが、それらを提供できるのはまちづくりの会社です。

東急グループは既に渋谷や二子玉川など、象徴的な都市再開発事業を手掛けていますが、「スマートシティ」という概念で見ると、まだまだやれること・やるべきことはたくさんあります。今そこに人がいて、建物があり、道路の幅も決まっている。そこに住むお客様の生活を、デジタル技術を使ってどのように便利にしていくのか、というテーマは非常にチャレンジングです。難しさはありますが、やはり東急がやらなければいけないビジネスなのではないでしょうか。

東急線沿線でのまちづくりという発想から言うと、私はここを「世界一住みたい沿線」にしていきたいと思っています。もはや「日本一住みたい沿線」はある意味達成しています。ロンドンやパリ、ニューヨークと比べても、東京やその近郊にはまだまだ都市として大きなポテンシャルがある。東急グループは2022年に創立100周年を迎えますが、次の100年に向けて、誰も見たことのないスマートシティづくりに挑戦するべきだと思いますし、私たちのチームもそれに寄与していきたいという個人的な夢を持っています。

そこまで壮大で、また一人ひとりのお客様志向のDXを実現するには、幅広い技術レイヤーで優れた人材が必要になってくると思います。

東急のDXはお客様視点で推進していくと申し上げましたが、デジタルサービス開発の順番もお客様との接点、フロントエンドから進めていくべきと考えています。最初に各事業にとって最適と思えるサービスを一つひとつ設計して、「どのようなお客様に」「どのようなサービスを提供するか」を考え抜きます。要するにUX(User Experience:顧客体験)デザインのプロセスを設け、Webアプリケーションとして、さまざまな属性や嗜好を持つお客様にとって役に立ち、楽しい体験をかたちづくっていく。

ですから、まずはフロントエンドのサービス開発経験のあるエンジニアやデザイナーと一緒に仕事を進めていきたい。そして、フロント側を推進すれば、次の段階には当然ながら膨大なデータのやり取りや蓄積を支えるバックエンドの環境を堅固に構築する必要が出てきます。どれほどたくさんのお客様が利用しても、全てのサービスが問題なく動かなくてはなりません。バックエンドにおけるサーバやデータベースなどの構築、システムの管理・運用についても、クラウドの活用を視野に入れつつ、できれば内製化していきたいと考えています。

東急グループの事業を横断し、全てのお客様にデジタルソリューションを提供する。これほど大規模かつ、きめ細かいサービス開発は、おそらく日本初の取り組みになります。決して簡単なミッションではありませんが、組織内のしがらみに捉われた内向きの仕事ではなく、あくまでお客様のために意味のあるサービス、地域や社会にとって有益なプラットフォームを一から開発していく仕事です。これから集めようとしているDXチームのメンバーにとって、やりがいは限りなく大きく、モチベーション高く取り組め、挑戦しがいのある仕事であることは保証します。

長年に亘ってリアルな顧客接点を磨いてきた貴社グループには、DXを推進しやすい土壌があるとお感じになっていますか。


人材戦略室 人事開発グループ 採用センター
課長補佐 百瀬 拓史(ももせ ひろし)氏

「何か新しいことをしたいという若手のアイデアに対して、『とりあえずやってみよう』と受け止めてくれる上司が多いですね。本人に意欲があり企画内容が優れていれば、直結で社長プレゼンができる制度もあります。採用されれば事業化され、若手がそのリーダーに任命された例もあり、ボトムアップ型のカルチャーは根付いていると感じています」

入社した日から、歴史ある大企業にありがちな「変化を嫌う体質」がないことに驚いています。コロナ以前からリモートワークがある程度浸透していましたし、コアタイムのないフルフレックスで働くことができました。
条件はありますが、許可を取れば副業も可能。社内起業家育成制度もあります。また、男女を問わず育児休業の取得率も高い。私が「デジタル人材を積極採用していくためには、こういう働き方ができるようにしなければダメです」と提言しようとしていた環境が、既にありました。

こうした制度拡充とその活用推進は、各部門の有志が集まって改革を提案し、実現してきた経緯があると知りました。組織としてボトムアップ型の提案が受け入れられるカルチャーがあるのですね。

また、社長をはじめ経営陣から「今こそDXに投資し、リアルな顧客接点を活かすためのデジタル改革を進めなければならない」という強い意思を感じています。コロナ禍でグループ事業が少なからぬ打撃を受ける中、この経営判断は非常に先見性に富むものだと感じています。経営層に限らず、これまで私がDX戦略の骨子をプレゼンテーションした東急の社員は皆、非常に優秀であるとともに懐が深く、この会社では新参者である私の言葉に真剣に耳を傾けてくれ、応援してくれています。

グループ企業全体を見れば、すでに独自のDXを推進している企業もあれば、そこまで進んでいない企業もあるでしょう。しかし、何よりも「お客様のことを考える」という点で、各社の想いは共通しています。少なくとも今、デジタル化を無視して事業が成り立つと思っている社員は一人もいないはず。
また、顧客接点をデジタルで最適化していくということは、お客様からのフィードバックをリアルタイムで得られるということです。デジタルだけで解決できないことも当然ありますから、そこは適切にお客様のアクションを分析し、リアルのサービスを改善していくことが重要。リアルとデジタルの両輪で改革を進めるからこそ、お客様体験の価値を向上させることができると考えています。

DXチームでは、どのような資質の人材をどのような処遇で迎えたいとお考えですか。

フロントエンド、バックエンドのエンジニア、UI/UXデザイナーともに、重視するのはとことん「技術力」です。そして、自分本位で行動せずに「お客様のことを考えて」商品開発ができるマインドセットを持っていること。この2点に尽きます。あとは当然ながら年齢、性別、国籍、学歴、服装、どれも不問です。今後もし東急グループという巨大な組織を横断して新しいサービスを形にする上で、何か乗り越えるべき問題が新たに出現しても、私が先頭に立ち取り除いていく覚悟があります。

正社員としての採用ですが、デジタル人材に特化した新たな人事制度での採用であり、給与体系は既存の社員とは異なります。本人の技術力をベースに市場価値に見合った給与を設定します。勤務地は渋谷スクランブルスクエアになりますが、勤務形態はリモート可能で柔軟です。余談ですが、230社を擁する東急グループならではの厚い福利厚生の恩恵が受けられることも付け加えておきます。

このような環境があるから、本当に腕のいいエンジニアやデザイナーに安心して声をかけられます。自由闊達で自律型の人材がここで自分の力を試し、純粋にお客様のことだけを考え、新しいサービスの開発に自らの技術を役立てていけるようなチームを作り、進化させていきたい。そのようなメンバーがお互いに触発し合いながら新しいサービスを形にしていくことが、この東急という企業でならできると感じています。

また、中期的な視野で見れば、エンジニアとして力量を発揮してくれたキャリア採用のデジタル人材が、東急グループのDX戦略を考える企画業務にもチャレンジするなどのキャリアステップも可能になると考えています。さらには、総合職として入社した社員がDXチームの仕事に刺激を受け、隠れた才能を活かして技術者としてサービス開発業務にチャレンジするなどの新たなキャリアパスが生まれる可能性もあります。

応募を検討される人材の多くが、DXチームを率いる宮澤様がどのようなキャリアを積み重ねて来られたのかを知りたいのではと推察されます。

1996年に新卒で、ソニー(株)傘下の金融会社に入社し、通販会社の決済システムや電子マネーの企画・開発などに携わりました。今振り返ると、親会社のメーカーの影響が色濃く、技術先行型でプロダクトが開発されていくカルチャーの中、ハードとソフトを融合してどうやってユーザーにとって意味のあるものをつくるのか、「お客様視点でシステムやサービスを形にしたい」という志向が培われました。これは現在でもブレることのない私の原点だと言えます。

8年ほど経験を積んだ後、当時のソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(株)で非接触型ICカード技術を活用したモバイル事業の商品企画に取り組むことになりました。ガラケー上のさまざまなWebサービスのプロジェクトマネジメントに携わり、プロダクトの出荷計画に合わせてあらゆるアプリを開発するメーカーならではの納期を遵守する思想の中で鍛えられました。
その後、スウェーデンのルンドにも駐在。約30名の多国籍チームを率いてグローバル市場向けのIoTデバイスや、スマートフォンアクセサリーの商品企画などに携わりました。
スマートバンドなどのIoTデバイスの商品開発を経験したおかげで、バンドというモノに価値があるのではなく、心拍数が分かったり、睡眠の質が測れたりなどの「体験価値」に値段が付き、事業収益を生み出すということを改めて認識することになった海外での5年間でした。

その後、親会社でモバイル事業が縮小したことを契機に帰国し、日産自動車(株)へ転じました。IoTデバイス開発の経験から、インターネットと繋がるコネクテッドカーの時代が来ると分かっていたからです。コネクテッドカーや自動運転技術の戦略立案やUXデザインを担当した5年余りの間に、自動車メーカーでできることは一通りやり切った手応えを得ました。
すると今度は、クルマのユーザーだけではなく、より幅広い視野で生活者のカスタマージャーニーを考えていくような仕事に挑戦したいと思うようになりました。その一つが、まだ日本では実証実験の域を出ていないスマートシティ事業でした。まちづくりの視点でDXに取り組み、生活者の体験価値を高めてみたいという意欲が生まれたのです。

エレクトロニクス機器メーカーには難しく、自動車メーカーにもできない、よりスケールの大きなDXはどこでなら可能になるのか。100年に亘って交通インフラとまちづくり、生活サービスを磨き続け、リアルな顧客接点を培っている東急グループであれば、私のこれまでの経験を集大成して、新しいチャレンジができると考えました。私が東急にジョインしたのは、このような経緯になります。

最後に、貴社を志望する方や、潜在的な候補者へメッセージをお願い致します。


WeWork渋谷スクランブルスクエアにて

私たちのDXチームで働くことは、スタートアップ(企業)に参加するようなものです。少数精鋭チームからスタートして、新しいデジタルサービスを世の中に出していきながら段階的に人材を増強し、組織を大きくしていこうと考えています。大企業のスケールもありながら、スタートアップの機動性があります。

また、先ほどお話ししましたように、DX戦略として点から線、そして面へとサービスを拡大し、お客様一人ひとりの生活を楽しく豊かにできるデジタルプラットフォームの構築を目指していきます。東急グループには、それを可能にするリアルな顧客接点というビジネス基盤が既にあります。これが、さまざまなIT系プラットフォーマーとは一線を画す最大の優位性となっています。デジタルサービスを作ってからリアルなお客様を創造するより、リアルな顧客接点を活かすデジタルサービスを創出するほうが、はるかに取り組みやすいからです。

リアルとデジタルをどのように組み合わせてお客様に価値を提供していくのか。事業領域を横断した新しいデジタルプラットフォームを、沿線のまちの商店などの事業者も含めて、お客様にどのように活用して頂くのか。ここに新しい価値の源泉があり、これを事業化・サービス化することは私たちの使命であると思っています。自分たちで手を動かしてコードを書き、誰もが我が事としてお客様にとって価値あるサービスを生み出していくチームを育てたい。お客様目線で妥協を許さない厳しさはありますが、間違いなく楽しい仕事にチャレンジできます。

このような考えで推進するサービス開発に共感できる方と、一緒に働ける日を楽しみにしています。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力頂き、ありがとうございました。

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東急株式会社
設立
1922年9月2日
資本金
121,724百万円(単位未満切捨)
所在地
 本社: 東京都 渋谷区 南平台町 5-6
 分室: 東京都 渋谷区 桜丘町 31-2 東急桜丘町ビル
    
従業員数
1,408名
取締役社長
髙橋 和夫
主な事業内容
不動産賃貸業、不動産販売業、その他事業
※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。
職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約28,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか40社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)、令和5年:全国で40社のみ(第四回認定)
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