これまで当社は、「M&A総合企業として世界No.1になる」ことを目標に企業努力を積み重ねてきました。外資系の投資銀行のように、M&Aのリーグテーブルにおいて取引規模や取扱金額で世界トップを目指すのではなく、M&Aの品質やお客様の満足度、M&Aを活用される企業の多様性等、8つの領域で世界No.1を目指してきました。
8つの領域とは、1)案件数、2)顧客満足度、3)業務品質、4)対象とする企業の規模・業種・地域等の多様性(カバー力)、5)成長戦略から統合後の成長サポートまでを提供できる総合力、6)業界のデファクトスタンダードを確立するイノベーション力、7)株式時価総額、8)従業員の満足度です。
これらの中で、分かりやすく数字で表せる指標として、2020年のM&Aの成約件数783件がギネス記録に認定されたということですね。また、時価総額につきましても1兆2,000億円を超え、M&A仲介会社としては世界でも例を見ない規模となりました。これら定量的な世界No.1の達成については、社内よりもむしろさまざまなお客様が驚きを持って好意的に受け止めて下さっています。
日本には今、中小企業が約380万社あり、そのうち約245万社の経営者の年齢が65歳を超えています。2025年には70歳を超える計算になり、その中で後継者がいない企業が127万社に及んでいます。つまり、127万社もの中小企業が事業承継を真剣に検討しなければならない時期を迎えており、このままでは約60万社が黒字でありながら廃業せざるを得なくなると予測されています。
黒字経営を続けているこれらの中小企業は、地域の美味しいものを製造していたり、その地域の伝統的な技術を担っていたり、地方文化の担い手であったりします。地域で重要な役割を果たしているこのような企業が廃業してしまうと、地方の活力は失われます。全国で廃業の危機にあるこれらの企業を一社でも多く救うことが、当社が今最も重視しているミッションであり、パーパス(存在意義)です。だから当社のコンサルタントチームは、業務品質が高く、顧客満足度の高い事業承継M&Aにこだわり、成約件数を大事にしているのです。
企業経営者にとって、M&Aは成長に向けた経営戦略の一つの選択肢です。そこで、当社では、経験豊富なコンサルタントチームによるM&A支援サービスを軸として、グループ会社が緊密に連携することで総合的なソリューションを提供しています。
まず、コンサルティングに先立つ情報提供サービスでは、会社経営に有益なさまざまな情報が入手できる経営者向けメディアプラットフォームの運営や、オンラインで手軽にM&Aの候補企業が探せる小規模事業者向けマッチングサイトを運営しています。コンサルティングサービスでは、事業承継に関する幅広い相談や経営者の資産保全に関するコンサルティングから、M&A成立後の統合プロセスを支援するPMI*コンサルティングまでを提供しています。また、譲渡先の選択肢となるプライベートエクイティファンドを複数運営しており、更に調査研究サービスでは、業界別の市場リサーチに強みを発揮する企業や、企業価値の正確な評価を担う企業があります。
このようにグループが総力を挙げて、中小零細企業から中堅企業、上場企業まで、持続的な成長を目指すあらゆる規模・業種の企業の経営戦略をトータルに支援できる体制を構築し、それぞれの専門サービスを深化させているのです。
*PMI…Post-Merger Integrationの略で、合併(merger)後の統合(integration)に関する経営上のコンサルティングを指します
一つには、成約までのプロセスと統合後の成長プロセスへの支援を分けて考え、基本的に別のプロフェッショナルチームが対応しています。
喩えるなら、M&Aとは「企業同士の結婚」です。お互いにどれだけマッチする会社と一緒になれるか、ということが最も重要なテーマになります。このため当社では、徹底的にマッチングの精度を高めるためのイノベーションを積み重ねてきました。
まず、当社のこれまでの成功事例を学習させたAIツールを活用し、膨大な条件を組み合わせて候補先企業を網羅します。その上で一人ひとりのコンサルタントが経験を通じて培った勘を駆使して企業を絞り込んでいきます。当然ながら、候補先企業は同業種だけではなく相乗効果が見込める異業種も検討され、両社の市場が異なる地方である場合も多いです。DXによる網羅性と人ならではの想像力をかけ合わせることで、最高のマッチングを目指しています。最高水準のマッチングができれば、成約率は上がり、時間をかけずにトントン拍子でM&Aが成立することが多くなるのです。
ただし、殆ど全ての経営者にとってM&Aは初めての経験。スムーズにM&Aが成立したとしても、日本人に特有の「わざわざ言わなくても分かるだろう」と相手に期待する姿勢では、M&A後の尚一層の成長は生まれません。
例えば、製造業と販売業の企業が一つになった場合、企業文化が全く異なるし、言葉の意味すら違ってきます。「売上をアップさせよう」と言っても、製造業では製品を工場から出荷すれば売上が立ちますが、販売会社ではエンドユーザーに製品が届いて代金が支払われ、売上が計上されます。
そこでPMIが非常に重要になってくる訳です。M&A後の成長を加速させていけるよう、新しい経営ビジョンを定め、具体的なKPIをつくって明確に目標を設定するサービスが必要になります。
また当社では、成約からPMIへのスムーズな移行を促す場として、売り手・買い手の双方の経営者とそのご家族等の関係者に出席していただく「調印式」というセレモニーの場を重視しています。
これは、譲渡企業(売り手)の経営者にとって、ご自身が苦労して育ててきた会社を譲り渡し、新たな経営者の下で更に大きく成長していくことを確認する場です。そして譲受企業(買い手)の経営者にとっては、会社を譲り受け、今後更に成長させることで従業員や取引先に対する責任を果たしていく決意を新たにする場になります。一流ホテルや結婚式場出身のM&Aセレモニストが進行役を務め、当社の担当コンサルタントも出席し、広々とした応接会議室において温かくも厳粛な雰囲気の式典を執り行っています。
このような流れで、マッチングから契約締結、PMIに至る一連の業務が、それぞれのプロフェッショナルによって高いレベルで遂行されます。その結果、M&Aの成約率が高く、成約スピードも速く、成功率も高くなっていると考えています。
当社は、1991年に全国の会計士事務所から出資を受けて設立されました。当時、会計士事務所の顧客である全国の中小企業には、都会で就職したご子息・ご息女がなかなか故郷に帰ってこない、という現在とは若干性質の異なる後継者問題がありました。M&Aによってこれを解決できると考えて事業をスタートしたのです。
とはいえ、当時は中小企業がM&Aで後継者問題を解決し、持続的に成長を目指すという考え方はまだ存在していません。「乗っ取り屋が来た」等と門前払いされたこともあります。このような状況の中、M&A業界にイノベーションを起こそう、革命を起こそうという高い志で一歩ずつ実績を築いてきました。
設立当初の10年でやろうとしたことは、「M&Aの標準化」です。
創業当時、世の中でM&Aといえば、優れたM&Aコンサルタントの職人的ノウハウによってのみ成し遂げられるものであり、限られた天才が強みを発揮する、極めて専門性の高い領域の仕事でした。
これは、かつてのコンピュータ業界に近い世界でした。当時のコンピュータのメモリは限られており、そこにさまざまな業務アプリケーションを組み込むには、理系上位校の博士課程出身者のような頭脳が必要でした。しかし、全てのアプリを一からプログラミングするのではなく、共通部分をモジュール化し、複数のモジュールを組み合わせていけば、文系出身のシステムエンジニアでも比較的容易に新しいシステムを構築できるようになっていきました。
これと同じ発想で、職人技であったM&Aを業務プロセスごとにモジュール化し、標準的なドキュメンテーションのひな型をつくり、案件ごとのニーズに合わせて誰でも組み立てられ、メンテナンスできるようにしました。そしてこれを日本のM&A業界のデファクトスタンダードにしようと考えました。コンピュータ業界同様、業界標準をとった者が市場を制すると考えたからです。そこで、自分たちがつくったビジネスモデルをオープンにして、M&A業界の誰もが活用できるような環境づくりを推進してきました。
この戦略は成功し、日本のM&A仲介ビジネスにおいて新たにさまざまなプレーヤーが登場するようになります。オープンな環境づくりの一例が、M&Aに関する情報基盤の整備です。当社は創業以来、全国の会計事務所を始め、証券会社、メガバンク・地方銀行・信用金庫等の金融機関、全国の商工会議所、中小企業庁等、官民連携した情報ネットワークの強化に努めてきました。今では日本のM&A仲介各社においても、潜在顧客を発掘するための譲渡企業/譲受企業の情報をこれらのネットワークから収集するのが基本となっています。
創業10年が経った時、改めて振り返ってみて「多くの経営者の方々に喜んでいただき、会社を存続させた有意義な仕事であった」と実感することができました。この時、事業の社会的な意義を見つめ直し、もっともっと多くの人にM&Aを活用してもらおうと決意。
そこから経営方針を成長路線に切り替え、次の10年で目指したのが、先ほども触れた「M&Aの総合化」です。併せて株式上場にも取り組み、更なる成長に向けて走り続けました。
そして次の10年、創業30周年を目安にチャレンジしたのが、ブリッツ・スケーリング(blitz scaling)、すなわち「爆発的成長」を目指すことでした。実際、この時期に当社グループの時価総額を200億円から1兆2,000億円以上にまで拡大することができました。
今、「第二創業」というキーワードを掲げ、「全社員が創業者」という意識を持って新たな取り組みをスタートしています。大きな方向性として、「M&Aの総合化」の延長線上で全国のあらゆる規模、ステージの企業の成長戦略を支援していきたいと考えています。
まず、地方で長年続く零細企業、例えば保有台数8台のタクシー会社や個人経営の食料品店等は、それがなければ地域の人の生活が成り立たない重要なライフラインです。喫緊の課題として、このような零細企業を存続させる手立てが必要です。
そして、社員数20人以下の中小企業についても、事業承継M&Aで廃業の危機から救わなければなりません。その上のレイヤーの中堅企業については、成長戦略を策定して事業の活性化を支援していきたい。そして地方の優良企業は、まずは上場することから信用力をより高め、スター企業へと脱皮していただきたいと願っています。
すでに当社は、成長企業向けの株式市場であるTOKYO PRO Marketのアドバイザーとして、北海道・東京・熊本の企業の上場支援、上場審査、上場後のモニタリングを実施しています。
こうした取り組みを同時並行で進めることで、実体を伴う地方創生が可能になります。更にその先には、上場企業の生産性向上も急務です。日本の上場企業は先進国の中でも著しく生産性が低くなっており、グループの子会社が担う既存事業に対して、カーブアウト含め「選択と集中」を進める等、M&Aコンサルティングが重要な意味を持つと考えています。
一方で、ベンチャー企業を育成していくことも重要です。少子高齢化によって今や日本の労働力人口は7,000万人を切り、2050年にはたったの4,400万人余りになってしまうことは避けられません。その状態でGDPを維持するためにはイノベーションが不可欠であり、イノベーションを実現できるのはベンチャー企業です。優れた技術を持ったベンチャーから、中小零細企業、中堅企業、上場企業まで、全ての持続的な成長を支援していくことで初めて、日本全体の創生が可能になると思っています。
一方でアジアに目を向けると、ASEANでは人口が増加し、新たなマーケットが生まれています。日本に足りない人材と市場がASEANにはあり、日本のブランド力や商品開発力とASEANのリソースを結びつけることで、新たなイノベーションが生まれます。当社グループがASEANに拠点を設けているのは、国境を越えたM&Aの需要に応えるだけでなく、世界を視野により長期的な日本創生の取り組みに繋げていく布石でもあるのです。
地方創生から、日本創生へ。これが私たちの次の10年のチャレンジテーマになります。
M&Aのアドバイスという仕事は、常に事業のミッションやパーパスを意識して取り組む仕事だと思っています。ですから、志や使命感を持ってチャレンジできる人というのが前提条件になります。また、経営者に寄り添い、経営者の想いにきめ細かく応えていく仕事であり、その意味でハードワークでもあります。従って、「このビジネスで成功したい」という強い上昇志向を持っていることも非常に大切だと感じています。
「各地の中小企業を廃業から救い、新たな成長軌道に乗ってもらって地方創生に繋げたい。」
このような志と使命感を持ちつつ、個としてはハイエンドのビジネスパーソンとなり、豊かな生活を目指したいという欲求も重要になります。志と上昇志向の両軸で振り幅が大きい人ほど、入社後に成長できると感じています。
出身業界の多様性も重要なポイントです。キャリア採用の人材ポートフォリオを大きく分けると、証券、銀行、製造、IT/サービスの4つの業界からそれぞれ25%ずつの採用実績があります。出身業界によって人材には得手・不得手があり、入社直後の時点では差がつくこともあります。銀行や信金出身の人は最初から企業の決算書が読めるので、一歩リードできるでしょう。証券出身者は電話営業や飛び込み訪問に強い。製造業出身者は工場に足を踏み入れれば社長と笑顔で対話できますし、日本の中堅中小企業の半数が製造業です。IT/サービス業出身者が経験を活かせる機会が多いことは言うまでもありません。
人物のタイプとしては、まず、地頭が良くて体力にも一定の自信がある人。次に、留学や資格取得、起業経験があるような、積極的なチャレンジを好む人。そのどちらでもないけれど、「演劇に打ち込んでいた」「バンド活動が命だった」等、徹底して凝り性の人。そして最後に、とにかく人懐っこい等、「人たらし」の才能がある人。大別するとこの4つのタイプの人材が、M&Aコンサルティングの経験を通じて経営者の信頼を得て、長く活躍できるようです。凝り性系の私を含め、役員クラスも全員これらのタイプに当てはまり、採用上はどのタイプも大切にしています。さまざまなタイプの社員が集まってミックスカルチャーを醸成しながら、多様性を強みとしていくことが重要だと感じています。
先ほど、「創業後の10年間でM&Aの標準化をしてきた」と申し上げました。これと重なりますが、当社は完全なチーム体制で未経験者に経験を積んでもらっています。
私は仕事を通じて「プロと組む面白さを知る」ことをすごく重視しています。チームには譲渡企業(売り手)へのアドバイスを担当するメンバーと、譲受企業(買い手)へのアドバイスを担当するメンバーがいて、それぞれリーダーがいます。そして、売り手担当、買い手担当と、公認会計士や税理士、弁護士等のスペシャリスト集団が連携。彼ら全員が一つのチームとして動いた時、若手メンバーはプロの仕事術からさまざまな要素を吸収し、大きく成長します。
売り手担当と買い手担当は、コンサルタントとしてどちらも一度は経験すべきですが、それぞれ向き・不向きがあります。
売り手担当は経営者の想いに寄り添える人が向いています。経営者にとってM&Aは一生に一度の決断であり、大きな痛みを伴うもの。経営者の気持ちの揺れに共感でき、従業員やその家族の行く末までを考えられる人でなければ務まりません。
これに対して買い手担当には、どちらかと言うとアグレッシブに提案する姿勢が求められます。「御社はいい会社ですけど、こんな機能をM&Aで強化したら、もっと成長できるのでは?」といったことを遠慮なくズバズバ言える人が向いているのです。
当社では、本人の好きな仕事を、好きな上司の下でやってもらうことを人材配置の基本スタンスとし、「人材ファースト」と名付けて全社的に推進してきました。
M&Aの価値を決めるのは、最終的には人であり、人がつくるノウハウです。100のポテンシャリティを持つ人材がキャリア採用で当社に来てくれても、仮に自分の嫌いな上司の下で、自分に向かない業務に我慢して取り組んだとしたら、がんばっても75くらいのパフォーマンスしか出せないはずです。逆に尊敬できる上司の下で、自分に向いていると思える仕事に取り組めば、きっと150の努力をして、150の結果を出してくれるでしょう。そう考えて推進してきたのが「人材ファースト」です。この取り組みをスタートした2年後の全社員アンケートでは、「個人の成長実感」と「会社としての一体感」のポイントが大きく向上しました。
また、「人材ファースト」の取り組みは、M&Aの総合化戦略との相乗効果も大きく、社員はグループ各社に転籍して専門性を磨くこともできるため、自分の志向に合ったフィールドでキャリアを発展させていくことが可能となっています。
「売り手企業に寄り添う経験から貴重な学びがあったが、自分はもっと積極的に提案したい」のであれば、買い手企業を担当できます。「より緻密な仕事がしたい」志向があれば、企業価値の算定等の業務があります。「コンサルティングの幅を広げたい」人には、事業承継ナビゲーター或いはPMIコンサルティングでのキャリアを検討できる。「中小企業だけでなくもっと大きな企業に法人営業したい」人は、上場企業を担当できます。「どうも新規開拓には向いていない」のであれば、提携する証券会社やメガバンクへのルートセールスで信頼関係を築く、というキャリアもあります。
その人がどのような強みと志向を持っていたとしても、グループ全体でほぼ全ての希望に応えられる職種や業務が用意できます。その意味でも、未経験者も安心してM&Aの世界に飛び込んでいただけるのではないかと考えています。
出身業界を問わず、またどのようなタイプの人であっても、入社して3年経てば一人前のコンサルタントとして活躍しています。それは誰もが3年間で一人前になれるよう、きめ細かいマネジメントの下に育成しているからでもあります。
最初はチームの先輩に学びながらではありますが、キャリア入社の人材の場合、最初から自分で積極的に動いていく姿勢を求めています。「自分はまだ会社法に明るくないので……」等と尻込みする必要はありません。先にも述べた通り、M&Aとは「企業と企業の結婚」です。当社を目指す転職者の中には、既に結婚されている人もいると思いますが、プロポーズをする時に、婚姻法や民法の勉強から始めましたか? そのような知識より、フィーリングが大事です。つまりM&Aでも、まずはビジネスパーソンとしての直感が物を言うのです。
M&Aとは、「この会社にあの会社の事業をプラスしたら生産性がぐっと上がるのでは?」「この地域にあの会社の営業力があれば、もっともっと市場開拓が進むはず」といったワクワク感でまとめ上げるもの。そもそもM&Aは非常に創造的な仕事であり、売り手・買い手の両経営者に喜んでいただけて、心から感謝していただける仕事なのです。
未経験者であっても、多くの人が4カ月でアドバイザリー契約は取れます。専門的な知識が必要になる場面もありますが、それはM&Aのストラクチャー設計や契約書作成等エグゼキューションの局面になってからです。そのために公認会計士を始めとするスペシャリスト集団が社内に在籍し、緊密に連携しています。新人に対しては、経験値の高い先輩がフォローしてくれる体制があり、入社して8カ月もすれば初クロージング―M&Aの最終契約の締結に至るでしょう。そして入社後3年で約10件の成約を経験し、年間8,000万円以上の粗利益を挙げるコンサルタントを目指せます。
向かい風の中での快挙を可能とした要因は、全て現場の若手社員のアイデアによるものです。2020年4月に初めての緊急事態宣言が出され、世の中に閉塞感が広がっていった時期、私は今後業績がかなり悪化するだろうと覚悟を決めていました。また、お客様からは「わざわざ東京から会いに来ないで欲しい」「大阪からは会いに来ないで」等と言われていました。
M&Aは基本的に対面して進めるリアルの仕事であり、オンライン面談では限界があります。お客様に会いに行けない環境では正直難しいと思っていました。ところが、全国の若手から「じゃあ岩手県に事務所をつくりましょう」「和歌山県にもつくりましょう」といった声が次々と上がったのです。そしてほんの2、3カ月の間に全国20カ所にサテライトオフィスを設置した結果、地方のお客様から非常に喜ばれました。「東京から来られるのは困るけど、盛岡からなら全然OKですよ」等と。
更に本社メンバーからは「ハイブリッド面談をしましょう」との提案が上がり、サテライトオフィスの若手がお客様を訪問し、オンラインで本社のベテランコンサルタントや公認会計士等のスペシャリストが面談に参加しました。
この試みによって面談の「量と質」が一気に上がったのです。従来であれば、例えば秋田での面談に本社からベテランメンバーと公認会計士が出張するとなれば一日がかり。これがリモートによるハイブリッド面談であれば、1日に5件、しかも秋田、札幌、帯広、和歌山、富山といった広域での商談が可能になります。若手メンバーはそれぞれ最も近くにあるサテライトオフィスから訪問するので、訪問件数もおよそ1.5倍に増えました。面談の量と質が上がれば、当然ながら成果も上がります。
このような新しいアイデア、イノベーションが現場主導でいくつも実現していったお陰で、コロナ禍でも過去最高の収益を達成し、M&A成約件数がギネス世界記録に認定される結果となったのです。多くのイノベーションが現場から、若手の主体的なアクションから生まれて来たのを見て、私は「人材ファースト」を進めてきて本当に良かったと思いました。
私自身の経験から、M&Aコンサルティングにはさまざまな個性が活かせることを知っていただきたいと思っています。私は工学部の出身で、新卒で日本オリベッティ(株)というイタリアのコンピュータ会社の日本法人にシステムエンジニアとして就職しました。当時の日本オリベッティ(株)は大学生の就職ランキング6位くらいの人気企業。イタリアのカミロ・オリベッティという人が創業した会社で、もともとタイプライターの世界No.1 メーカーでした。
オリベッティは面白い会社で、経営者の一人が「ローマクラブ」というシンクタンクをスイスに設立しています。そして1972年のローマクラブレポート「成長の限界」において、このままでは資源等が枯渇し、将来的に地球規模で社会が破綻すると警鐘を鳴らしていました。こうした考え方は、現在では国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも受け継がれていますから、非常に先見性のある会社だったと思います。
この会社でSEから営業部門へ異動となり、会計事務所や金融機関向けに相続税対策の業務システムを搭載したオフィスコンピュータを販売していました。当時は喋るのが苦手だったこともあって苦労しましたが、この時期に築いたネットワークが、現在では当社の情報ネットワークの基礎となっていますから、ビジネスとは面白いものです。
営業なのに話すことが得意ではない私でしたが、なぜか問題解決に対する自信だけはありました。学生時代も、いろいろな社会問題の解決に取り組む活動に興味を持って取り組んでいました。そんな自分の持ち味を生かして、時間をかけてお客様の課題を聞き出し、その課題をことごとく解決できるようにシステムを作り込んで提案。徐々に信頼を獲得していったのです。気が付くと社内ではトップ営業の常連となり、経済誌のインタビューも受けるようになっていました。
当時の私にも似た、一見地味なタイプの若手コンサルタントも、今当社で活躍していることを知っていただきたいと思います。M&Aコンサルティングには営業マインドが必須の要件ですが、当社のコンサルタントはアグレッシブな提案型ばかりではなく、聴き上手でじっくり課題を解決していくタイプも多く、本当にいろいろな形の営業マインドを持った人材が成果を挙げています。
今から1、2年のうちに当社でのキャリアを選ぶ人は、とてもラッキーだと思います。当社は、今まさに創業30周年という転換点を通過し、「全社員が創業者」という気概で誰もが「第二創業」に向けたイノベーションに挑戦している時期だからです。一人ひとりが新しいことに挑戦し、制約を設けずに新しい事業を形にしていく。会社として新しいパーパス、ミッションをつくる。新しい倫理観を持って日本のM&A業界の健全化をリードするとともに、新たなDNAを生み出していく時期でもあります。
20代後半から30代に「どのような仕事を」「誰とするか」によって、ビジネスパーソンの人生が決まると私は考えています。その意味でM&Aコンサルティングという仕事は、譲渡企業と譲受企業、一つひとつの会社の経営戦略を考え抜き、一人ひとりの経営者の経営哲学や人生を見つめる仕事です。最終局面では公認会計士、税理士、弁護士等のスペシャリストとタッグを組みます。このような仕事にチャレンジすれば成長しない訳がありません。「ハイエンドのビジネスに挑戦したい」「人として、ビジネスパーソンとして成長したい」という人であれば、当社のプロフェッショナルと仕事をする経験を通じて、爆発的に成長できる機会が得られることをお約束します。