企業インタビュー

A.T. カーニー株式会社 企業インタビュー

1926年にシカゴで創業し、現在世界32カ国で、約50カ所の事務所を構え、約2,000名のコンサルタントを擁する戦略系コンサルティングファーム、A.T. カーニー。 展開するコンサルティングの内容は、戦略の策定から実行、オペレーション、ITにまで広範に及ぶ。 今回は同社でプリンシパル(現:パートナー)を務める 矢吹 大介氏にお話を伺いました。

まず始めに、矢吹さんのご経歴と、A.T. カーニーに入社された経緯についてお聞かせ下さい。


A.T. カーニー (株)
プリンシパル(現:パートナー) 矢吹 大介氏

私は新卒で住友銀行に入行したのですが、25歳の時に外務省からの辞令で、在フランス日本大使館に2年間出向しました。その時は「パリクラブ」と言われる各国政府間の公的債権・債務の繰り延べ交渉の現場調整役/交渉役を担当しました。

そのような仕事を経験していく中で徐々に、日本が世界の中でどのような位置付けにあるのか、ということを考えるようになりました。それが次第に、日本の金融や日本全体を良くしたいという「想い」へと変わり、日本を変えうる各業界のリーディングカンパニーの支援に携われる「経営戦略コンサルタント」としてのキャリアを真剣に考え始めました。
今考えてみますと、ようやく社会人としての自覚が持てた頃に、国際金融というフィールドを通じて、日本について色々と考える機会を持てたことが、私にとっての大きな財産になっていると思います。

帰国してから数年後、海外留学を経てA.T.カーニーに入社しました。アソシエイトとして入社したのですが、当社の場合、通常マネージャーになるまでは特定のプラクティス(業界や課題テーマの専門グループ)に属さない為、私の専門である金融業界以外にも、製造業、消費財、IT業界等、様々なクライアントとのプロジェクトを経験しました。その後、マネージャーとなり金融グループに所属し、現在は入社6年目になります。

A.T.カーニーに入社してまず驚いたのは、中長期の成長目標に加え、個々のプロジェクト単位でも個人の目標を明確にし、短い期間で成果や課題がフィードバックされることですね。今の自分は何ができて何ができないのか、中長期の成長目標を達成するために今何をしなければならないか。知的好奇心を大いに刺激してくれる一方で常に成長に向けてドライブする、そのようなカルチャーの中で揉まれ、今も、ものすごいスピードで成長していることを実感しています。

御社の競合優位性について判り易くご説明下さい。

当社は、「高度な専門性」、「目に見える成果の実現」、「顧客企業と一体となった協働作業」の3つの点において、競合優位性があると思います。

まず1つ目の「高度な専門性」とは、プラクティスと呼ばれる、"業界別スペシャリスト"と、"課題テーマ別スペシャリスト"のことを指します。 当社では、金融、通信、ハイテク、自動車、消費財等の"業界別プラクティス"と、戦略立案やオペレーション、IT戦略等の"課題テーマ別スペシャリスト"とがチームを組んで、コンサルティング・プロジェクトを遂行しています。

次に2つ目の「目に見える成果の実現」とは、策定した戦略を"絵に描いた餅"で終わらせないために、「如何に戦略を実現するか」、「如何にクライアント企業を変革できるか」ということにフォーカスし、成果を重視したコンサルティング・サービスを提供するということです。

この「目に見える成果の実現」と密接に結び付いているのが、3つ目の「顧客企業と一体となった協働作業」です。これはまさに、A.T.カーニーの創業者 アンドリュー・トーマス・カーニーが提唱してきたことであり、また組織全体として創業以来80年間ずっと大切にしてきた価値観でもあります。

従って、ほとんどのプロジェクトはクライアント企業に常駐し、クライアントメンバーと当社のコンサルタントが協働で作業を進めていくスタイルが基本です。そこではクライアントと毎日机を突き合わせて、朝から晩まで一緒に作業をする訳ですから、我々が議論する内容、仕事に対する取り組み姿勢など、一挙手一投足全てが、クライアントの目に映ることになります。これはコンサルタントにとっては大きなプレッシャーです。一方で、クライアントと徹底的に議論を交えプロジェクトを円滑に遂行したり、クライアント全体を巻き込みながら戦略を実行に移す、変革を促すことができる、ということが大きなやりがいとなっています。

昨今の御社のビジネスを取り巻く環境や市場動向についてお聞かせ下さい。
●まずは金融業界の市場動向について教えて下さい。


金融業界では、バブル崩壊以降、バランスシートの健全化に追われてきました。今ではようやくそれが一段落し、再び成長のステージへと変化しています。それに伴い、我々に要求されるコンサルティングのテーマもより複雑化してきています。

例えば数年前までは、コスト削減や業務改革といったオペレーション系のプロジェクトが大きな割合を占めていたのに対し、現在は大手金融機関・地方金融機関を問わず、"成長戦略"に関する様々なテーマを多く扱うようになりました。

例えば、大手金融機関の場合、過去に業務の効率化や債務の健全化等を重視してきた中で、今後の成長の柱となる「グローバル展開をどう進めていくか」、ということが最も重要な経営課題の一つとなっています。

一方、地方金融機関の場合、近年は大手金融機関の地方進出や、ゆうちょやリテール業界などの他業態からの新規参入、地方金融機関同士の地域内競争など、これまでになく競争が激化している状況です。従来のように単純にアセット(預金や貸出)を拡大して収益を上げることが難しくなってきている状況の中、どうやって競合との差別化を図り、競争優位性を高めていけば良いか?という問題に直面しています。

プロジェクトのテーマとしては、企業グループ全体の権限や意思決定機能の見直しから、社内の意識改革、社員のモチベーション向上、M&A、マーケティング、リスクマネジメントなど、非常に幅広いテーマに取り組んでいます。

●その他の産業の市場動向は如何ですか? また特に印象深いプロジェクトの事例についても教えて下さい。

近年は自由化が進み、国内産業全体の大きな流れとしてグローバリズムが進展しており、各企業は、M&Aや他社との提携を通じて、グローバル競争の中でどう戦うか、という問題を抱えています。

特に印象深い事例としては、国内大手製造業A社のケースが挙げられます。
A社では特定の部門(B)が強い権限を持ち、そこにお金や人材が集中していました。
ところがBのマーケットは将来的に大きな成長が見込めないという課題を抱えていました。そこでグループ全体における力関係を見直し、部分最適ではなく全体最適を図る為に、グループ内に強力な権限を持つコーポレート(企画機能)を設置し、様々な権限や機能を集約させました。その結果、グループとしてどの事業にお金や人材を投下するのが良いのか、という全体最適の視点での戦略策定が可能となり、結果的にC部門をグループを挙げて強化すると方針が固まったのです。現在A社のC部門は、グローバル競争に勝ち残るために、積極的に海外企業の買収を展開し、グループの次世代の柱となるべく成長を続けています。

実際にプロジェクトはどのように進めていくのですか?


同社 刊行物の一部

プロジェクトの初期段階では、企業のコーポレート部門や企画部門の方だけでなく、実際に現場で働く方々の意見も聞き、現場レベルでの課題を把握します。その他にも業界の専門家や、クライアント企業のお取引先に対してインタビューすることもあります。
このようなインタビューを通じ、色々な論点が洗い出され、精度の高い仮説が作られていきます。

また、我々が持っていない知識については、お客様と一緒に考えていくスタンスが基本です。我々は、専門性とは各業界や課題テーマに関するスペシャリティだけではなく、戦略を立案する上での視点や考え方、コミュニケーションスキルも含まれると考えています。協働作業を進めていく上では、クライアント企業の意識変革を求められることもあれば、反対に我々だけでは判らなかったことに気づかせてもらったり、鍛えて頂くこともあります。そのような補完関係の中で課題解決に向けた「実行できる戦略」の策定と「意識改革」が実現できるのです。クライアントとの協働作業をすることは、専門性を活かす上でもとても重要なのです。

御社の企業風土や、社内での新しい取り組みについて教えて下さい。

当社は2006年1月に、MBO(マネジメント・バイ・アウト)により、独立しました。それ以降、各地域のパートナー、社員が一体となって、会社全体の価値をこれまで以上に高めていくためにどのような取り組みが必要か、また東京オフィスとしてのグローバルにおける位置付けや、今後どのような貢献ができるかといったことも、真剣に議論しています。そのような議論の中で、人材の多様性をこれまで以上に重視する、といった方針を打ち出しています。

今後の方針として"多様性のある組織"を掲げておられる背景や、その具体的内容について教えて下さい。


近年は成長戦略やグローバル展開といったテーマをはじめ、コンサルティングに対する要望が多様化しています。そのような広範な課題に対応する為には、今まで以上に多様性のある組織にしていかなければなりません。

そのような組織にする為には、まずは様々なバックグラウンドやスキルを持った方々に、当社に対する興味を持っていただくことが重要だと考えています。当社はこれまでにも前職においてコンサルティングファーム、金融機関、総合商社、官公庁、シンクタンク、大学講師、設計事務所、経営者等、実に様々なバックグラウンドをお持ちの方々を採用してきましたが、今後も引き続き、様々な経験を積まれた方に来て頂きたいと考えています。

また、働く人全員にとって、働き易い環境を整備することを心がけ、一人一人個別に対応できる組織風土であるということも当社の特徴です。もちろん産休や育児休暇、留学支援等の一般的な制度はありますが、それ以外にも比較的少人数の組織であるからこそ、一人一人の事情に応じたフレキシブルな対応が可能なのです。

具体的にはどのような経験やスキルを持った方の採用を強化していく方針ですか?

バックグラウンドに関しては先述した通り、多様性のある組織を目指していますので、様々な経験をお持ちの方を採用していく方針に変わりありません。その中でも当社が特に強みを持つ領域である金融、通信、自動車業界、そして今後更に強化していくハイテク、消費財、小売業界。これらの業界の実務経験者に加え、専門的な知識や経験を有する方々を今後も積極的に採用していきたいと考えています。

英語力は重要ですが、入社時に必ず必要という訳ではありません。ただし、入社後は海外のオフィスと一体となりプロジェクトを進めていくケースも頻繁にあります。また、日々世界各地のオフィスで色々な知見が蓄積されていく為、情報交換・知識獲得をする上で英語は欠かせません。その為入社後に強化して頂くスキルとして、コンサルタントとしての専門性と共に、英語力もとても重要です。

コンサルタント未経験で入社された方には、どのようなドレーニングが用意されているのでしょうか?

中途で入社された方の場合、制度を通じて何かを学んで頂くよりもOJTがメインです。ただし、新しく入った方をプロジェクトに参画させる条件として、プロジェクトマネージャーやアソシエイトが直接指導できる体制が整備されていることが前提としてあります。ですから、組織全体として人を育てるという意識が浸透しています。

一般的にコンサルティングファームでの働き方については、Up or Outと表現されることがありますが、御社のコンサルタントの就労パターンについて教えて下さい。


コンサルタントとして最もバリューを出すことができるポジションやタイトル、また、成長のタイミングは各個人によって異なると考えていますから、その点も柔軟に考えなければなりません。当社の場合 、一律に一定の期間でUpしなければ残れないというルールはありません。やる気があって、成長のポテンシャルがある方は各個人の成長のスピードに応じて柔軟に対応している、というのが現状です。

就労時間については、プロジェクトの状況や中身によって大きな差がありますし、それなりのハードワークであることは事実です。一方で、組織全体として就労時間を短くする工夫をしているのも事実です。ですから、常に際限なくハードワークしているという状況ではなく、業務の効率化も考えながら働くという意識が根付いています。皆が時間にメリハリをつけて働く意識が根付いている組織と言えば判り易いですね。

御社で活躍されている方の共通点はありますか? また御社で働く上で大切な人物的要件やパーソナリティについても教えて下さい。

当社では、「クライアント企業を良くしたい」、さらにその先にある「世の中全体を良くしたい」という想いを持った方が本当に多いですね。また外資系企業ではあるものの、社員の大半が日本人ですし、クライアント企業の大半も日本の企業ですので、皆「日本の企業や社会に変革をもたらす」ことに対し、特に強い思い入れを持っています。

コンサルティングのスキルは経験を積めば身に付けることができますが、それ以前に自分から何かを切り開く力や、自発的に「こんなことをやってみたい!」という前向きな姿勢を持っていることが大切だと思います。反対に会社や組織から何かを与えてもらうことを期待する受け身の姿勢では、この仕事を長く続けるのは難しいと思います。

自発的に「こんなことをやってみたい!」と取り組む姿勢を持った方に対しては、年齢やタイトルに拘わらず常に歓迎される風土を当社は持っています。我々と同じような志や価値観を共有できる方にご入社頂けたら嬉しいですね。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力頂き、ありがとうございました。

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A.T. カーニー 株式会社
日本オフィス開設
1972年
日本代表
岸田 雅裕
全世界拠点数
世界40カ国に約60のオフィス
全世界従業員数
3,600名以上
事業内容
経営コンサルティング
※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。
職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約28,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか40社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)、令和5年:全国で40社のみ(第四回認定)
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