ひと昔前は、「ラーメンからミサイルまで」、現在では「ナノテクから宇宙衛星まで」と表現されるように、総合商社とは、あらゆる産業のあらゆる商品を取り扱っている会社です。そしてその商品に対して、トレード(貿易)、事業投資、事業育成(インキュベーション)、物流、ファイナンスなど、色々な側面からグローバルにビジネスを展開しています。
世界に類をみない日本特有の業態でありながら、今日までずっと根付いてきたのにはいくつかの理由があります。まず1つは投資銀行とは異なり、ビジネス(トレード)に根ざした事業投資を行っているのが特徴で、そのような観点から言えば一般的な貿易商ともまた異なる業態です。投資額が1案件で数千億円にのぼることもあり、当社の最近の事例では、チリの銅鉱山に創業以来最大となる約2000億円を投資し、2011年に入り、採掘された銅精鉱が、実際に日本に輸入される運びとなりました。
もう1つの理由としては、グローバルに人的ネットワークを持ち、それらを活用しながらビジネスができるということが挙げられます。丸紅の場合、世界70カ国以上に拠点を構え(2011年3月末現在)、400社以上のグループ会社と共に、全世界で知恵を結集しながらビジネスを展開しており、現在の海外での利益は全体の約8割を占めています。
海外電力(IPP ※1)事業では国内トップの地位を築いています。当社は海外の様々な地域で発電所を所有・運営しており、それら全ての電力量を合わせると、国内の地方電力会社1社分に匹敵します。また、中近東地域においては、発電と海水淡水化を組み合わせたIWPP(※2)事業で業界をリードしています。
また、大豆、小麦、とうもろこし等、穀物の取扱量も国内トップで、その他にもコーヒー豆の取扱いでは、日本の総輸入量の約1/4を占めています。
(※1)・・・自らが保有する発電設備で作った電力を、(電力会社などに)卸売りする独立系発電事業者のこと。
(※2)・・・自らが保有する発電・淡水化設備で作った電力・水を、卸売りする独立系発電・淡水化事業者のこと。
IPP事業は、例えば受注するまでに要する期間が1~2年、建設開始から設備完成までに要する期間が3~5年、そして電力供給開始後の契約期間が10~20年間という、合計すると20~30年のスパンで運営しています。
また穀物のトレーディングにおいては、北米のポートランドで穀物の輸出基地を30年以上にわたって保有・運営しています。
現在の地位は決して一朝一夕で築けたのではなく、このように何十年という年月を注ぎ込んで、地道に事業運営のノウハウを蓄積し、物流ネットワークを構築してきたからこそ今があるのだと思います。
当社では一定額以上の投資は全て取締役クラスによる経営会議の承認を得た上で決定されますが、更にその前段階として、投融資委員会(事業案件審査機関)によって、慎重にシミュレーション、分析、審査が行われます。
例えば、「どれぐらいのリスクに対して、どれくらいの利益が見込めるのか」、また「どれぐらいの期間で投資が回収できるのか」など、投融資委員会が社内の様々な指標を審査しクリアした上で、経営会議の場で最終的な意思決定がなされるのです。
過去には、総合商社は、何でもかんでも果敢に投資する傾向にあり、膨大な額の特別損失を計上していた時期がありました。そのような反省を活かして、当社では一つ一つの審査の精度を上げ、リスクマネジメントの強化に努めてきました。
ただ本案件で事業部門のトップが考えたことは、丸紅にとって一番のリスクとは、「何も持たないこと」だということです。つまり、リスクを恐れて何も投資しないことのほうが、結果的に利益を得る機会を失うリスクなのだということです。そのような観点も踏まえて、経営と審査機関と第一線の現場が連動し、チリの銅鉱山に投じた2000億円という丸紅史上最大の投資案件を成功させた意義は、とても大きいと感じています。
中期経営計画 「SG-12(2010年度-2012年度)」の中でも触れていますが、当社では今後経営資源を重点配分する分野として、「資源」、「インフラ」、「環境」、「生活」の4つを掲げています。 それぞれの内訳について簡単に説明致しますと、1つ目の資源には主に、「金属資源」や「エネルギー」などが、 2つ目のインフラには、主に「海外I(W)PP」、「水事業」、「鉄道・交通システム」などが、 3つ目の環境には、主に「植林事業」、「クリーンエネルギー」、「排出権」などが、 4つ目の生活には、主に「食料」、「衣類」、「紙」、「自動車」などが含まれます。 海外の重点地域は、 北米、南米、アセアン、中国、インドです。 そして、これらとは別にCISやアフリカ地域も個別にフォローする体制を整えています。
トレーディングで儲けるには、「いかに効率良くモノを運ぶか」が非常に重要なファクターとなります。日本の貿易の9割以上は海上輸送(船舶)に頼っていますから、つまり「いかに安く」、「いかに港での停留期間を短くし」、「いかに効率良く運ぶか」によって収益が大きく変わってくるということです。
その中で三国間取引(※3)が果たす役割は大きく、例えば穀物のトレーディングに関していえば、今や穀物の輸入大国となった中国への輸出は、日本を介さずに北米の物流拠点から直接中国に運ぶケースが多くあります。またその逆に中国で生産した衣類等を米国やヨーロッパに直接運ぶこともあり、最近ではアフリカや中近東のプラント建設プロジェクトを直接中国メーカーに発注するようなプロジェクトベースでの事例も増えてきています。
当社では、船舶手配等の物流業務に関しては、多くの営業社員が日常的に携わっており、チームを組んで、「どの商品が」、「いつ」、「どこに」届くか(または航海中か)ということをフォローする体制があります。
このように物流ノウハウを蓄積しているからこそ、それを専門として活かしたビジネスも生まれており、中国企業と提携して中国国内の物流業務に取り組んだり、海外での港湾運営等の事業を展開したりもしています。
その他にも船舶業務に長年携わってきたノウハウを活かして、船舶の販売やリースなどのビジネスも展開しており、こちらも堅調に利益を上げています。
(※3)・・・日本を介さずに、外国間で貨物を移動させる取引のこと。
当社では、社会に対して資源を安定供給することを目標に掲げています。ここで言う資源とは、石油や銅等のエネルギーだけに限らず、穀物、社会インフラなど、生活に必要なもの全てを含んでおり、それらを安定的かつ永続的に供給し続けていくことが、結果として社会貢献に繋がるのではないかと思います。
ただ単に目先の利益ばかりを追い求めるのではなく、社会に貢献しないと会社として長く続きませんし、実際にそれは長い歴史の中で証明されています。会社全体として社員には、「もし利益と正義とで迷ったら、迷わず正義を取れ」と言い続けてきています。例え利益を得られる機会があっても、それがルールに反することならば、その機会を失ってもルールを優先する。そのことを遵守し、全ての社員が働いています。
少し古い言葉で「三方よし」という言葉がありますが、「売り手よし」、「買い手よし」、そして「世間よし」の理念を会社全体として徹底しています。すなわち、お客さんと丸紅はもとより社会に貢献するビジネスを継続していこうというものです。
またお客様第一という観点から、経営トップから全社員へ、「とにかくお客様のもとに足しげく通え」というメッセージを幾度となく伝え、それが染み渡っています。そうすることで、例え直接自分の商談に結びつかなくても、他の部門のビジネスに繋がることもあります。
インターネットで何でも情報を得られる現在では、こんな言い方をすると少し泥臭いイメージを持たれるかもしれませんが、丸紅は、お客様とface to faceで話をすることをとても大切にしている会社なんです。
中途採用では原則TOEIC730点以上という基準を設けています。これは当社の新卒社員が入社5年目までにクリアする基準と同じです。
英語以外の言語については、入社時には必ずしも必要ではありません。語学力よりも、ビジネス上での経験やノウハウなど、その人の中身を重視したいと思っています。
ただし、グローバルで活躍する上では、外国の文化を受け入れるということが欠かせませんから、異文化適応能力がある方は、より活躍の可能性が拡がります。
バックグラウンドに関しては特に求めているものはなく、実際にメーカー、金融機関、コンサルティングファーム、シンクタンク、電力・ガス会社、総合商社など、様々な業種出身の方が入社し、活躍しています。
当社は新卒採用で『ジブンカラー』というコンセプトを掲げています。これには2つの意味が込められています。一つ目は、丸紅には「ジブンカラー(個性)」を活かして活躍できるフィールドがあり、色々な価値観や考え方を持った人間が集まっているということ。
二つ目は、ありのままの個性を発揮し、「自分カラ」自発的に課題を見つけ、積極的に行動できる人に入社して欲しいということです。
どこを切っても同じ顔が出てくる金太郎飴のように、同じような価値観・考え方を持った人間ばかりが集まった会社ではおもしろくありませんよね。ですから丸紅が求めている人間になろうという意識は捨てて頂いて構いません。
このポイントはまさにキャリア採用にもあてはまります。キャリア採用を行うからには、今現在丸紅に居る人間とは全く違う環境で育ち、違う経験を積んだ方に入社して頂きたいと考えています。 そしてそれを受け入れる自由闊達な土壌が丸紅にはあると自負しています。
どんな会社にも言えることですが、これからの時代は、組織として、女性をもっと活用していなかれば生き残れません。当社では、2009年に人事部内にダイバーシティ・マネジメントチームを立ち上げ、性別、国籍、年齢等に関わらず、多様な社員が活躍できる職場環境作りを行っています。
中でも、ワーク・ライフバランス諸施策はダイバーシティ・マネジメント推進のための重要なインフラと位置付けています。誰もが働きやすい制度とは何かを考え、それを一通り創り上げ、現在は新卒・中途含め、女性の活用も進んでいます。
ただし、これらの制度は、全ての社員に長期的に活躍して頂く為、ライフステージの中で「きついな」と感じた時期に、会社から支援を受けられる仕組みだということをしっかり認識して頂きたいと思います。そうでない時は、男女共に「思いっきり働くんだ」という気持ちで仕事に励んで頂きたいですね。
キャリア採用の方を対象とした座学研修は年に1回行っていますが、当社の研修制度は、それぞれの目的に応じて選ぶ「目的別(選択型)研修」と、「階層/役割別研修」を柱としています。
更に2010年からは、各事業分野で必要な経験を共有したり、ディスカッションしたりするタイプの部門別研修の強化を図っています。この研修には、社長をはじめ経営会議メンバーも必ず参加し、社員と直接交流する機会を積極的に設けるようにしています。
研修以外にも、「経験」にこだわっており、事業の現場に出て活躍して頂く機会を設けるために、当社では社員が事業会社(主に国内・海外の投資先)に出向するのが当たり前になっています。
また新卒社員は原則入社7年目(※4)までに男女を問わず、海外駐在や、海外出張、研修を受けるなどの機会を設けて、海外で実務経験を積んで頂いています。
(※4)・・・中途採用の場合は7年という基準は該当しませんので、これよりも早い段階で海外経験を積むことになる可能性があります。
あらゆる分野で事業を展開している丸紅には、用意されているフィールドは無限大です。ゼロから新しいビジネスを創ることもできるし、今までの経験をそのまま活かした仕事だってできる。
また当社は、「若気の至りを応援する」ということを、会社全体として推奨しており、若手にもどんどん大きな仕事を任せるカルチャーがあります。ですから丸紅に入社するからには、周りに遠慮せず、成果を出すために、全力でチャレンジし続けて欲しいと思っています。小さくまとまらないで、多少荒削りでも構わないので、ある意味「とがった人」にお会いできるのを楽しみにしています。
丸紅の風土に共感し、向上心を持ち続ければ、きっと楽しい仕事ができると思いますよ。