ひとことで言うと、(株)カカクコムはCGM(※1)を運営している会社ですが、他のWebサービスとの一番の違いは、ユーザー目線でサービスが作り込まれていることです。
例えば、グルメ情報や不動産情報など各領域で当社と競合と呼ばれるサービス (主に広告メディア) はいくつかありますが、いずれも広告主である店舗や企業側が発信したい情報を掲載する場として運営されています。
一方、当社のサービスは、ユーザーの 「こんなことを知りたい」 や 「こんな機能が欲しい」 といった声に応えるというスタンスで運営しています。例えば、『価格.com』 は、世の中に数え切れないほどのECショップがある中で、ユーザーが商品を購入する際に、「どのお店が一番安いのかを比較したい」 という声から生まれたサービスです。さらに、「どの商品が使い易いかを知りたい」 といった要望に対しては、口コミやレビューなどの付随機能で応えています。
※1:Consumer Generated Mediaの略称。CGMについての詳しい説明はこちら
当社ではサービスごとに事業部が分れています。 それぞれサイトの規模や成長率は違いますので、事業部によって従業員数や組織体制も異なります。まだ立ち上げ間もない小規模サイトを担当する事業部であれば、少ない人数で、機動力を活かせる体制になっており、当然、1人ひとりに任せる裁量が大きく、担当業務も広範です。何より、小規模サイトを担当する場合、自分で企画したことが、すぐにユーザー全体に伝わり、その反応がダイレクトに返ってくる点がおもしろいと思います。
『価格.com』 や 『食べログ』 などの大規模サイトを担当する事業部は、企画担当者が綿密にプランニングし、それからエンジニア、デザイナーへと連動してサービスを開発する体制をとっています。これらのサイトを担当した場合は、ほんの少しの改善でも非常に多くのユーザーに影響を与えることができる点に楽しさや、やり甲斐があります。ユーザー数が3000万人を超えるサイトであれば、たった1%のユーザーに影響する改善だとしても、その対象は30万人以上ですからね。
サイトがある程度の規模まで成長したら、次に 「どうマネタイズするか」 という課題が出てきます。当社の場合、ユーザー本位という立場からユーザーに対しての価値を損なわずに、その上で店舗や企業などの顧客に対しても利点となるようにマネタイズしていく必要があります。全ての利用者の利害を一致させるのは簡単ではありませんが、そのバランスを考えながら、最善の策に取り組んでいかなければなりません。
また“大規模サイト”=“既に完成されたサイト”というイメージを持たれるかもしれませんが、これだけ多くのユーザーに利用され、更にユーザー属性も異なりますから、当然ユーザーからの不満も出てきます。なので、既存サービスを運用する傍ら、ユーザビリティの改善や新たな機能追加、使われなくなった機能の統廃合など、少しでも多くのユーザーの不満を解消できるような改善をコツコツと取り組んでいます。
サイトの改善に関しては、当社では現場の担当者だけでなく、全社員が取り組めるように、「SiteCatalyst」 (アクセス解析ツール) のアカウントを全社員に発行しています。 Webアナリストだけでなく、企画担当やデザイナー、エンジニアなど、職種に関係なく、サイトのログや数値をいつでも確認し、改善案を出すことができます。そのためか、会社全体として分析的に物事を進めていくことが根付いています。このような取組みを行いながら、大規模サイトならではのノウハウや成功事例を蓄積し、ゆくゆくは別のサイトにも水平展開していくつもりです。
『価格.com』 という安定したビジネスがあり、その収益を活用して新サービスにチャレンジできるバックグラウンドがあることが挙げられます。ただし当社が新サービスに積極的に取り組んでいる理由は、それだけではありません。まだ世の中にはユーザー目線という観点で提供されているサービスは少なく、それを考えると当社がやれることはまだまだありますし、自然と新たなアイディアも溢れ出てくるのです。
経営陣から 「こんなサービスがいいんじゃないか」 とお題を与えられるケースもあれば、エンジニアをはじめとした現場担当者の 「こんなサービスを作りたい」 という思いを形にするケースもあります。エンジニア主導で生み出したサービスのひとつが、フォトコミュニティサイトの 『PHOTOHITO』です。
ただし割合的には、まだ経営陣や企画担当者主導のものが圧倒的に多いため、会社全体としてもっと従業員のアイディアを新たなビジネスに繋げたいという考えを持っています。そのための施策として、2011年から 「ディスカバリー」 という新規ビジネスプランコンテストが開催されました。全社員の4割近い人が参加し、合計で128の新規ビジネスプランが集められました。入賞作品の中には、実際に事業化の準備に入ったものもあります。また入賞作品をプランニングした社員の中には、新規事業担当の部署に異動し、事業化に取り組んでいる者もいます。
その他には2012年4月から、新規事業を担当する専任部署が作られました。会社として新たなアイディアをビジネス化する仕組み整備に取り組んでいます。
新卒で新聞社に入社し、制作業務を担当した後に、社内異動で、人事、経理、総務など管理部門の業務を経験しました。管理部門に移ってからは、「どうしたらもっと社員が楽しそうに働ける職場になるだろう?」、「マスコミは入社したいという人が多いけれど、その華やかなイメージと実際の職場環境のギャップをどうやったら埋められるだろう?」 といったことを次第に考えるようになりました。それからヒト・組織・経営という3つの軸に絞って今後もキャリアを積みたいと思うようになり、経営大学院(MBA)にも通いました。そのような状況の中で、新聞記者への異動の配属辞令を受けたので、正直迷いましたが、記者への興味より、人・組織への興味が強く、転職することを選択しました。
転職先としてネット業界を選んだのは、もともと自分がWebサービスが好きだったからです。また、どうせならすごく成長している企業か、逆にものすごく落ち込んでいる企業で働きたいと思っていました。その方が、人事として組織に変化をもたらすようなおもしろい仕事ができると思ったからです。
最終的に(株)カカクコムに入社を決めた理由は2つあり、1つ目は、やはりものすごく成長していたからです。2つ目は、他のWebサービス企業が今後の展望 (ex:海外展開) などのメッセージを外部にどんどん発信していたのに対して、カカクコムは今後の方向性をまだ明確には打ち出していませんでした。今後どのような方向に進むのかとても興味がありましたし、その部分に自分が関われるのではないかという期待もありました。
入社前までは、一部上場ということもあり何となく社内体制など出来上がった会社というイメージがありましたが、実際には未整備な部分も多かったですね(笑)。勿論しっかりと整備された部分もあり、大企業的な側面もありますが、ベンチャー気質もある組織という印象でしょうか。だからこそ自分が役に立てることも多いと考えています。
論理的思考を持ち、分析的に事業を考えるのが好きなタイプです。勢いやノリで物事を進めることはあまりありませんので、社内は比較的落ち着いた雰囲気です。
加えて、コミュニケーション能力に長けた人間も多いですね。一緒に話をしていても、判り易い説明をしてくれる人が多いですよ。採用面接の場では、こちらの意図を汲んだ上で回答できているか、自分が意図したことをちゃんと相手に伝えることができるか、といったポイントも観るようにしています。
そうですね。直近2年間は、年間70~80名ペースで中途採用を行っています。中途採用を積極的に行っているのは、外部の経験をもっと(株)カカクコムに持ち込んで変革をもたらして欲しいという理由からです。私も最初は、前の会社の流儀や、やり方を出し過ぎると、組織から弾かれてしまうのではないかと不安でしたが、実際に入社してみたら 「もっと出して欲しい」 と言われたのには驚きました。これは社員の大半が中途入社組で構成されている当社ならではの考え方かもしれませんね。
採用の際にポイントとなるのは、入社後に少しでも早く独り立ちできそうな人、そして少しでも長く活躍できそうな人です。いくら実力があっても、この条件に当てはまらなければ、難しいと思います。当社に入社するからには、短期的なキャリアの通過点としてではなく、中・長期間を想定して、色々なものを吸収しながら活躍を続けて欲しいと思います。
その一方で、当社でしっかりと成果を出しているけれど、一旦外に出てもっと色々な経験を積みたいという人に対しては、転身支援や出戻りを受け入れるユニークな制度もあります。また2012年4月には人事制度が変更となり、今まで以上に社員の実績と希望に応じて、事業部を跨ぐ異動がし易くなりました。 このような制度によって、当社では社員が中・長期的に自分のキャリアを見通しながら築くことができるよう支援しています。
制作・開発系の社員は、Webサービス会社や制作・開発会社出身者が多くいます。彼らの転職理由で一番よく聞くのは、自社サービスを行っている会社で、「もっとユーザーの声を反映させるような仕事がしたい」 ということです。管理系の社員では、異業種出身の者も多くいます。
制作・開発系で入社された方はまず既存サービスを担当して頂き、当社の業務の仕方や進め方を学んで頂きます。その後は経験と成果に応じ、上長との相談を重ねながら、その人がやりたい業務を徐々にお任せする予定です。比較的早い段階で新規事業に挑戦するチャンスもあります。
要因として挙げられるのは、他社ほど短期間で急激な成長や成果を求められない点でしょうか。 ある意味でゆるいとお感じになられるかもしれませんが、当社では長期的なスパンで20~30%の成長をずっと続けるという考えに基づいた経営がなされています。 新規サービスに関しても、マネタイズを急がずに、まずはサービスをしっかり育ててからというスタンスで運営しています。
また就労時間に関しては、一般的なネットベンチャーのように毎日夜遅くまでということはありませんが、仕事量自体はそれなりに多いので、制限された時間の中で密度濃く働くことが求められます。限られた時間の中でどうやって成果を出すか、常に工夫し考えながら、効率的・スピーディに働くことが求められますので、これまで残業の多かった自分にとってはとても新鮮でした。
CGMというサービスは、どのようなジャンルでもNo.1サイトに自然と口コミやレビューが集まり、それに応じてどんどんメディアの力も大きくなり、No.2、No.3は淘汰されていく構造になっています。CGM領域で事業を展開する以上、No.1で居続けなけば生き残れません。そのためにはユーザーのことを第一に考えたサービスを作ることであり、それこそが(株)カカクコムの原点です。
当社は 「質実剛健」 という言葉がぴったりの会社です。儲かれば何をやってもいいという考え方は捨てて、ユーザーのことを一番に考え、その思いを形にしたいという方に来て頂きたいと思います。面接では特別なことをして目立とうとする必要はありませんので、自然体で等身大の自分を語って下さい。
はい。現在、15周年特設サイトを運営し、当社がこれまでに歩んできた道のりや、当社社長のメッセージ、著名人からのコメントなどを掲載しています。
今回のインタビューでは、特設サイトとはまた違った視点から、実際に中途で入社した私が感じたことなども踏まえてお話しさせて頂きました。お読みになった方に、(株)カカクコムのサービスだけでなく、“働く場”としてのイメージも持って頂けたら嬉しい限りです。