鈴木 : 当社は、JR東日本グループ約70社の中で、オフィスビルのプロパティマネジメント事業に特化した唯一の専門企業として、2005年7月に設立されました。
親会社であるJR東日本は、鉄道事業と並行して駅に近接する大規模な複合ビルやオフィスビルの開発を展開しています。不動産市場では、2002年頃からオフィスビルの大量供給が始まって競争が激化する中で、グループとしてより魅力あるオフィスを提供していくために、専門の会社が必要になっていました。 また、内部要因として、それまで複数のグループ会社が担っていたJR東日本のビル事業を再編し、各社に分散していたビジネスリソースを集約してグループの経営効率を高め、専門性を備えた人材を育成していこうとの狙いもありました。
当社のプロパティマネジメント事業は、JR東日本の所有するビル資産を借り上げ、新規テナントの誘致、既存テナントへの対応、建物の維持管理、長期修繕計画の立案と修繕工事の管理等を代行するものです。
管理物件は、東京駅周辺の再開発で誕生したノースタワー、サウスタワー、サピアタワーといった大規模ビルから、JR山手線沿線の駅の直上または近接するビル等、いずれも交通利便性が高くオフィス立地として優れた東京都心の複合ビル、オフィスビルになります。これらの物件の管理運営を通じて得られたノウハウを蓄積し、JR東日本が推進する不動産開発に対して、ハード・ソフトの両面から提言をするといった役割も担っています。
鉄道駅に近接するビル管理の実績では、2013年には 「JR神田万世橋ビル」 「JR大塚南口ビル」 が開業しており、2016年春には 「新宿駅新南口ビル(仮称)」 が誕生します。今後もJR東日本の開発物件の管理運営を担っていくことに加え、パイロット事業として、当社独自の物件開発にも着手しています。
また、テナント企業様の満足度向上を図りつつ、地域に根ざして駅・街を活性化し、オフィス事業にJRらしいブランド価値の創出を目指す 「価値創造事業」 にも取り組んでいます。東京駅に近いサピアタワーでは、テナントである各大学と共に様々な分野の講演会 「東京オトナ大学」 を開催し、JR恵比寿ビルの屋上では、会員制貸し菜園 「ソラドファーム」 を運営しています。またビルの立地を活かして、コンファレンス施設 (貸会議室) を展開しています。
武藤 : 基本的にJR東日本の所有するビルを1棟丸ごと借り受けて転貸し、当社で管理しますが、マスターリース契約の内容は非常に複雑で、また物件ごとに異なる構成になるのが、当社のプロパティマネジメント業務の特徴です。
大規模な複合ビルの開発プロジェクトは複数の企業体の共同事業というケースもあり、駅施設、商業施設、オフィス等建築物の用途区分によって管理企業が異なることも多い中で、テナントが負担する光熱水費や共益費一つを取っても、どのような割合でシェアするのかを緻密に計算して決定しなければなりません。
資産の所有形態も複雑であり、例えば建物の壁、床、柱等の構造躯体 (スケルトン) はJR東日本が所有しますが、テナント退出時の原状回復等にスピーディーに対応するため、オフィスの内装設備のみは当社が所有するケース等もあります。このように物件ごとに権利関係が複雑であり、それに応じて管理運営のスタイルが異なってきます。そうした複雑な契約スキームを個別に構築すると共に、関係各社と交渉を重ねて合意形成を図っていく事が重要な意味を持つ事業です。
私自身、2009年に当社に中途入社して約半年後、ターミナル駅に直結する大規模な複合ビルの契約に携わり、JR東日本が所有する大型物件特有の複雑な契約構成に戸惑いながらも、商業施設のテナントにはグループでショッピングセンターの管理運営を担う企業を誘致し、賃貸借契約を結ぶ事となりました。
その過程には多大な苦労がありましたが、プロパティマネジャーとして多くのことを学んだだけでなく、大型物件の契約を成就する初めての経験を通じて、大きな達成感を味わいました。更に、この案件は、社内で表彰を受けるという嬉しいプラスαの評価も頂きました。
鈴木 : プロパティマネジメント業務を第一から第五の 「ビル事業部」 が担当しています。各事業部は当社が所管する5棟のビルの中にあり、近隣の管理物件と併せて日常的なテナント管理・指導を行うと共に、グループのビルメンテナンス会社等と協業して各種設備点検・保守、清掃、防災・警備といった管理運営業務全般を担当しています。
テナント開拓 (リーシング) を担う営業本部には、新規ビルのテナント誘致営業を担当する 「営業企画部」 と、既存ビルのテナント誘致・継続や各ビル事業部への営業支援を行う 「営業推進部」 があります。
「技術部」 は既存ビルの長期修繕計画を立案し、JR東日本に対して予算申請を行い、グループの設計建築会社等と協業して実際の営繕工事を発注・監理しています。
「総合企画本部」 には、いわゆる経営企画全般を担う「経営企画部」、パイロット事業として自ら不動産開発を担う 「投資開発部」、広報企画及びイベント企画等価値創造事業を担当する 「ブランド戦略室」 があります。貸会議室の運営に関しては、別組織の 「コンファレンス事業部」 が所管しています。
あとは本社部門で、予算管理及び会計を担う 「財務部」、総務企画及び人事・採用・人材育成を担当する 「総務部」、法務全般を担う 「法務部」 等の間接部門になります。
武藤 : 私も含め転職者の印象を総合すると、プロパティマネジメント会社としては若い社員が多く、活気に満ちた雰囲気の会社だと思います。それでいてJR東日本のリベラルなカルチャーを受け継いでいて、現場の社員が月に30時間を超えるような残業をすることがないよう組織として気を配るような、働き易い職場であると思います。皆さん物腰は柔らかいけれど、しっかりとした考えをもつ社員が多いと感じています。
鈴木 : 現在の社員数は108名で、その中でJR東日本からの出向者は約20名ですから、中途採用を含めプロパーの社員比率が高くなっています。それから、私自身も2008年に中途入社して、社風に関連して大きなカルチャーショックを受けたのが、JR東日本から綿々と受け継がれる 「安全」 に対する意識の高さです。
武藤 : 同感です。当社では、人命を預かる鉄道事業と同等の意識を持って、日頃からビルの管理運営業務に於いて 「安全第一」 を徹底しているのが大きな特徴となっています。
例えば、東京駅の周辺のビルには駅施設から直結する通路があるのですが、以前この通路の天井部分に埋め込まれていた電球が落下したことがありました。幸いケガ人等はありませんでしたが、ビルの所有者であるJR東日本と共に、当社ではこの落下事故を極めて重く受け止めました。
何故落下事故が起きたのか、原因を徹底的に究明する事と並行して、当社が管理する全てのビルで照明設備の再調査・再点検を実施し、再発防止に努めました。この時電球が落下した通路は、共同事業者の管理部分でしたので、以降は報告・連絡のルールを改変し、こうした事象の発生については即刻当社とJR東日本で情報共有できる体制を整えました。
その他にも、例えば鉄道軌道の近くに建つビルの外壁清掃や修繕工事については、作業員が乗り込むゴンドラ等からたとえ図面の紙1枚、ビス1個が落下しても、列車運行に影響を与えます。従ってお盆や正月等の多客輸送期間には、基本的に屋外作業は実施できません。このように安全管理に対する意識の徹底とリスクを回避する仕組みづくりを、管理運営業務の中で重点的に推進しています。
武藤 : 経験・スキル面について言うと、ビル管理運営業務については、オフィスのプロパティマネジメント業務の経験をお持ちの方。技術職では、ゼネコン、設計事務所等でオフィスの設計・工事監理経験、電気・設備関連の設計・工事監理経験がある方であれば、それぞれの経験や専門的なスキルを活かして当社の案件を動かして頂けると思いますし、実際に数多くの方々が中途入社後に活躍しています。
仕事に対するスタンスの面からは、当社で所属するセクションがどこであれ、上司に対してきちんとした説明能力を持ちつつ、自らの意思で計画を立てて所属組織に働きかけ、ゴールに向けてプロジェクトを動かし、完遂する自発的な姿勢がカギを握ると考えています。若手メンバーや協業企業のメンバーのモチベーションを高めながら、個々のスキルをうまく融合して成果に繋げていくリーダーとしての手腕も求められます。
それと併せて、物件の所有者であるJR東日本の担当者に対して、しっかりと説明責任を果たす姿勢が求められる仕事でもあります。柔軟な対応力と専門領域のスキルの両方を備えた人材が、当社に於いて大きな案件を任され、コンスタントに成果に繋げている例が多いと感じています。
鈴木 : 当社が管理する物件は大規模なものですが、当社自体は一人一人の社員の顔が見える規模の組織であり、業務が細分化された大企業で “部分最適” を深く追求されて来た方よりも、中堅規模の企業でプロジェクト全体を任され、周囲を巻き込んで結果を出して来られたような方が、当社の仕事にはよりフィットすると考えています。業務経験のある中途採用者に求めているのは、自律型の人材である事です。
武藤 : これは転職者に求める姿勢の延長線上にある事ですが、仮に自分に不足している知識等があるとしたら、それを自ら学び取ろうとする積極的な姿勢を持っていて欲しいと思っています。
当社に入社してこれまでに経験したことの無い大規模物件を任され、果たして自分に出来るだろうかといった不安があれば、自ら足りない部分を補完する姿勢を持って行動を起こす人材であって欲しい。グループ企業内で特定の分野の専門家を紹介して欲しいとか、外部の勉強会や講演を聴きに行きたいとか、本人が希望すれば承認され、サポートも受けられます。
鈴木 : プロパティマネジメント業務に必要な専門知識を学習する機会を会社として支援する体制は整えています。
また、グループ会社を含め、社内には自ら学ぶためのリソースはとても豊富にあり、仕事を通じて個人が成長できる数多くのチャンスと出会える環境があると思っています。あとは如何に自分の嗅覚や感性を磨いて、「ここは学んでおかなければ」 と言う部分に気付き、どこまで貪欲に吸収していく姿勢をキープできるか。私自身も、日々そんな緊張感を覚えながら業務に取り組んでいます。
武藤 : 応募者の皆様との面接を担当していますが、時々 「自社で投資開発をやりたい」 とか、技術職で 「大規模物件の設計を手掛けたい」 といった志望動機をお持ちの方とお会いすることがあります。当社が扱う大規模ビルは基本的にJR東日本が開発した物件であり、当社の事業は、竣工後の建物を借り受けて転貸事業を展開する管理運営が基本になります。この出発点を誤解なさらないようにして頂きたいと思っています。
その上で、なぜ今の会社ではなく当社でプロパティマネジメント業務をやりたいと思われるのか、その方の経験に応じて本音で語って頂きたいと思っています。特に転職動機については言葉を濁さずに、現状の小さな不満等も含めて率直にお話し頂くほうが、当社での仕事内容や期待する役割等を具体的に提示し易くなります。
当社の事業に興味をお持ちになった一人でも多くの方と、お会いすることを楽しみにしています。