当社は日本初のミニチュアベアリング専門メーカーとして、1951年 (昭和26年) 7月に東京都板橋区で設立されました。創業事業であるベアリングの製造を柱に成長し、M&A等を取り入れながら現在は非常に多岐に亘る製品を世界各国で製造する総合部品メーカーとなっています。
主力となる製品は、ベアリング、ロッドエンドなどの機械加工部品やモーター等の回転機器、センサー等の計測機器、ライティングデバイス等の電子機器です。それらの精密部品が組み込まれる最終製品は、パソコンや液晶テレビ、スマートフォンやタブレット端末等の日常生活に身近な機器から、ATMや自動販売機、複合機/コピー機等に代表されるOA機器、自動車や航空機、衛星打ち上げ用のロケットまで、多様な領域に及びます。世界を見回しても、スマホの部品から衛星打ち上げ用のロケットの部品まで幅広く開発から大量生産までを行っている企業はあまり無いのではないでしょうか?
企業の歴史をお話しすると、ベアリング事業を成長させ、1960年代の初めから販路を求めて海外進出を図りました。1971年にアメリカの企業を買収して米国カリフォルニア州に生産拠点を設立し、翌1972年にはシンガポールに自社工場を設立する等、早い時期から海外に生産拠点を設け、グローバル企業としての長い歴史を有しています。
1981年には、当時の2部上場メーカー4社を買収し、社名を創業以来の 「日本ミネチュアベアリング株式会社」 から 「ミネベア株式会社」 に変更し、新たなスタートを切りました。更に1980年代から90年代にかけて、タイ・中国での工場開設を進め、現在では、海外生産比率は90%以上となっています。
21世紀に入ってからは、ベアリング・航空機部品・計測機器等の更なる拡大に加えて、機械・電子分野を融合させた高付加価値の複合製品の開発や、照明器具関連製品といった新領域への本格的進出の基礎固めを推進してきました。
前期の好業績の要因は3つあると考えています。
まず、主力製品であるミニチュアボールベアリングの外部販売数量が増加した事です。外径30mm以下の小型サイズを小径・ミニチュアボールベアリングと呼びますが、これらは極めて幅広い分野の製品の回転部分や接合部分に組み込まれています。一般に一国の経済が成長し、生活水準が上がれば上がる程小型ベアリングの使用量が増加していく傾向があります。家電であれ自動車であれ、高性能化や小型軽量化が進むに従って、製品内部でより多くのベアリングが使用されるからです。近年の新興国の急速な経済成長を背景に、世界規模でミニチュアボールベアリングの需要が増大しています。
2つめは電子機器事業に於いてLEDバックライトの売上が急拡大した事がプラスに作用しています。
スマホやタブレット端末の世界的な普及が進む中、当社のバックライトユニットは非常に薄型である事から、中国市場などで需要が拡大している高級機種に採用されており、シェアを伸ばしています。当社の中では後発事業であるバックライトにも、創業以来培ってきた精密機械加工技術が活かされています。バックライトの導光板をプラスチックの射出成型で製造する際、当社が持つ極めて精密な金型製作のノウハウによって、薄さ0.3㎜以下という世界最薄クラスの導光板の製造を可能にしました。
3つめの要因として、モーター等の回転機器事業に於ける収益改善が寄与しました。
ミニチュアベアリングと同様に非常に幅広い分野の製品に使用される回転機器は、世界市場での需要増に加え、これまでの構造改革の成果が出てきた事、加えて各国工場に於けるコスト削減と生産性向上へのきめ細かい努力の積み重ねが奏功しました。
2013年に発表した中期事業計画で、ミネベア100周年に向けた基礎固めとして 「5本の矢」 という戦略を打ち出しています。
当社の強みを、「ボールベアリング」 「複合製品」 「照明機器」 「計測機器」 「航空機部品」 という異なる5つの製品カテゴリーで更に伸ばし、特定分野に依存せずに相乗効果を図る成長戦略です。
ボールベアリングは、外径22mm以下の小型サイズで世界シェア60%以上を誇る創業以来の主力事業であり、2014年度初めに月平均外販数量目標を1億5000万個に設定していましたが、今期が始まってから6カ月ですでにその目標数量に達し、残り6カ月でまだまだ伸びて行くミネベアの基幹事業です。
複合製品 (EMS:Electro Mechanics Solution) も軌道に乗って来ており、東京研究開発センター (東京都港区三田) の本格稼働に伴い、ミネベアの持つ様々な技術を融合し、機械加工品、回転機器、電子機器を組み合わせた付加価値の高い複合製品・複合部品の開発、拡販に取り組みます。具体的には、カメラ、医療機器、自動車、アミューズメントの分野に注力しています。
今まさに強化している照明機器分野では、2014年4月に岩崎電気(株)とコイズミ照明(株)と合弁でMIK Smart Lighting Network株式会社を設立し、スマートビル及びスマートシティ用の照明設備の開発を推進しています。スイスのネットワーク構築会社パラドックスエンジニアリングにも出資しており、ネットワーク技術と組み合わせた遠隔操作等のサービスを同分野で実現していこうと考えています。
計測機器事業は、新たなモジュール化やシステム化によって新用途を開発し、顧客を開拓していきます。現在この事業は100億円の売り上げ規模ですがこれを早急に200億円の売り上げ規模へ引き上げる事を目指しています。
航空機部品事業も非常に好調です。欧米の航空機産業で従来機種の安定生産に加えて省エネ型の新型機種の量産が開始される等、好調な市場環境を受けて、売上・利益の一層の拡大を目指します。
グローバル市場では、今後も引き続き新興国の需要増が当社にとって強い追い風になります。一方で成熟した欧米の先進国市場に於いても、消費者の高品質志向や環境志向が新たなニーズを生み、例えば自動車の高級化や制御技術の高度化が進む中で、今後搭載されるミネベアの製品がますます増えていくと考えています。この様に将来に亘って市場を限定しない強み、すなわち幅広い分野に当社製品へのニーズがあり、技術シーズが活かせる点が、これからのミネベアの可能性の大きさを示していると感じています。
既にお話ししました様に、1970年代から海外工場を稼働させ、軸足を置いてきた40年もの歴史を通じて、ミネベアならではのグローバルな生産体制と企業文化が形作られてきました。
品質の担保については、垂直統合型の内製体制が確立している事が大きく寄与しています。設計図を書き、試作品を作り、治具・工具・金型を製作し、製造設備も自前で作ってメンテナンスも行っています。その上で構成部品の製作、組み立て、品質管理に至るトータルな生産体制を自社工場内に構築しています。材料の調達は勿論、潤滑油を初めとする材料の調・配合等も自社で研究しています。
但し現在では、過去の成功体験に囚われず、内製と外注できる部分を戦略的に使い分け、需給バランスの変化に際しても在庫リスクを抱えずに臨機応変に製品を提供できる体制の構築を意識する様になっています。製造業として持続的に成長する上では、常に新しい視点で生産体制を見直していく必要があります。
日本のマザー工場と海外工場との関係も、海外進出初期の70年代と現在とでは大きく変わりました。初期には日本のマザー工場の技術を海外工場に移管して生産性を上げ、稼働率を高めて早期に黒字化を図る事がミッションであり、技術的な役割分担が明確でした。
今では海外工場の中にもR&D機能はありますし、ローカル採用の技術者も育ち、多くはベテラン指導者の域に達しています。勿論日本のマザー工場が開発や生産技術面で海外工場を支援する場面は多いですが、逆に、ミネベアのお家芸とも言える 「精密部品の量産体制」 は、日本の若手技術者が海外の工場で学びます。2011年にカンボジアに工場を立ち上げた際には、タイや中国の工場から技術者が派遣され、現地スタッフを指導しました。カンボジアの若手技術者がタイ・中国の工場で研修を受けてもいます。
つまり当社では、「日本だから」 「海外だから」 といった垣根は非常に低くなっており、国内外問わずにミネベアの工場が同じ技術水準で稼働しています。日本の技術者は日常的にタイや中国の工場に出張していますし、2~3カ月の長期出張や、海外赴任も一般的です。当社の平均的な技術者のキャリアでは、新卒入社4年目から徐々に海外に赴任し、異文化圏でのマネジメントや生産体制を学んでいます。
何事にも堅実に取り組み、製品の歩留まりをコンマ何パーセントでも向上させる為にコツコツ改善を積み重ねていく。そんな日々の努力をごく当たり前に実行する製造業特有の文化が根付いています。
一方で、積極的なM&Aによって新しい事業分野に次々と進出してきた歴史があり、これ迄に経験した事の無い事業への挑戦であるとか、新しい技術領域で製品開発に取り組むといった、現状を変えるチャレンジに対して組織としても抵抗がありません。
社員一人ひとりを見ていると、どちらかと言えば生真面目で努力家、地に足を着けて仕事をしている人が多い。また、人間的な温かみを感じる人も多い気がします。
以前タイの工場を見学した際、ボールベアリングの構成部品である 「ボール」 の製造を担当するベテラン技術者の説明を受けた事があります。その時彼は日本から10年以上タイに駐在して工場の品質改善に取り組んでいました。ベアリングの精度は、ボールの真球度を極限まで高める事で向上するのですが、当社の技術者が一つの部品に賭ける追求の度合い、想いの強さを実感しました。
堅実さとチャレンジ精神が共存する当社の社風に共感できる方は、入社後に周囲に溶け込むスピードも早いと思います。
技術者を採用する際には、ものづくりに情熱とこだわりが持てる人、チームワークで仕事ができる人、という2点を重視しています。逆に言えば、自分の専門分野だけを深く追求していきたい志向の研究者タイプの方は、当社には合わないと考えています。ご自身の得意とする専門領域を活かして新たな製品化に繋げていく、或いは量産体制をグローバルに構築するという仕事になります。量産化を実現した後も継続的に生産工程を見直し、品質向上に取り組みます。その際には部門を横断した連携は勿論、国境を越えたチームワークが重要であり、多様性の中でオープンなマインドを持って周囲を巻き込み、目標を共有してメンバーを邁進させるリーダーシップが求められます。
営業職では、ビジネスパーソンとしてのコミュニケーション力、顧客志向、スピーディな対応、関連部門と迅速な連携・調整ができる等、基本的な資質が求められます。更に当社の営業職に特徴的なのが、専門知識を持って長期的な視野でニーズの発掘から取り組む提案型の営業スタイルです。日頃からお客様とのリレーションを深め、新製品の開発に設計段階から参加します。新しい製品のニーズを汲み取って要求される仕様を見極めつつ、コストをかけて部品をカスタムメイドするのか、お客様の設計図の部品サイズを当社の規格品に合わせて頂くのか等、案件毎にベストな着地点を模索し、二人三脚でより良い製品を作り上げていく姿勢で臨みます。
中途採用者の場合、事業部門によって求める経験や技術力は異なりますが、専門的な技術領域で豊富な経験をお持ちの中堅・ベテランの方々をお迎えするケースが多くなっています。
今年度より、係長・課長等のマネジメント層を対象に、次世代リーダーを中長期的な視野で育成する選抜研修の運用をスタートしています。ミネベアの各事業を育ててきた経営トップや役員が当社の歴史を直接語る 「企業理念研修」、経営の視点を持ったクリティカル・シンキングや戦略構築のフレームワーク等を学ぶ 「事業戦略研修」 を実施しました。
同時に、女性の登用と活躍推進のため、現管理職および管理職候補にあたる職階の女性社員全員にキャリアに関するアンケートを実施し、意欲と能力をより発揮できるキャリア開発支援の施策をスタートさせようとしています。
また、米国コロンビア大学ビジネススクールの 「日本経済経営研究所」 に、毎年立候補者を選抜して客員研究員として派遣しています。この10カ月間に及ぶ社費留学では、多様なバックグラウンドの留学生と経営や経済について徹底的にディスカッションする機会が得られます。修了生は、これまでの社会人経験を通じて培った価値観の殻が破れ、「視野が広がる」 という得難い経験ができたと語っています。
繰り返しますが、当社は日本と海外の垣根がとても低い会社です。
技術者も営業職も仕事のフィールドはグローバルであり、特に意識する事も無く当たり前の事として国境を跨いで仕事をしている日常があり、そうした環境を楽しめる人に向いていると言えるでしょう。
また、手掛ける部品がとても幅広い分野で使われていますので、当社でご自身が作り、販売する部品が、世界の人々の日常生活やビジネスに欠かせない製品の中で動き続けている、というちょっと誇らしい気持ちも味わえます。自社の動向が経済紙などに報道される事も多く、B to B の部品メーカーでありながら 「ミネベア」 という社名の認知度はグローバル市場で予想以上に高い事も、仕事を通じて実感されると思います。
当社に興味を持って頂いた一人でも多くの方と、お会いする事を楽しみにしております。