企業インタビュー

日本郵船株式会社 企業インタビュー

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世界をステージに海運市場を切り拓き、国際物流を通じて日本経済の発展を担う日本郵船株式会社。同社は今、従来型海運業の枠組みを超え、+αの価値創造に向けたチャレンジを推進中です。今回は総務本部人事グループの根元 聡グループ長に、新たな事業の方向性、130年に及ぶ企業の歴史を通じて培う強み、グローバル且つ幅広い業務から段階的に専門性を高めるキャリア、仕事を任されるやり甲斐等についてお話を伺いました。

まず初めに貴社が展開する事業の方向性についてご説明下さい。


総務本部 人事グループ グループ長 根元 聡 氏

弊社は、資源やエネルギー、食糧等、私たちの生活に欠かせないあらゆるモノを海・陸・空の輸送インフラを通じてグローバルに運ぶ総合物流グループです。

もともと1885年 (明治18年) に外航海運を主体とする定期海運会社としてスタートした会社であり、エネルギー会社や鉄鋼・製鉄会社、石油化学会社、自動車を初めとするメーカー各社の物流パートナーとして、長年にわたる信頼関係を築いてきました。現在、日本の輸出入貨物の殆ど全て (重量ベースで99.7% * ) が海上輸送を利用しており、当社グループにおける海運の比率も約6割となっています。
*財務省 輸出入貨物の物流動向調査(2008年9月)より

その一方で従来型の海運業は成熟産業であり、船で貨物を運ぶサービス自体はコモディティ化しています。そこで当社では、グローバルな海運市場での競合他社との差別化を目指し、技術力を活かした省エネとコスト削減、お客様への付加価値の高い提案、そしてエネルギー輸送ビジネスの川上分野への積極的な進出を図っています。

具体的な方策として、今年4月に新たな中期経営計画 “More Than Shipping 2018 Stage 2 ~きらり技術力~ ” を定めました。従来の海運業の枠組みにこだわらず、技術力を活かして 「LNG輸送事業」 と 「海洋事業」 に重点的に投資し、事業ポートフォリオの見直し・組み替えを進めています。既に2009年度から 「従来型海運業+α」 の取り組みを推進してきましたので、今回の経営計画ではそれを更に発展させています。

注力するLNG輸送事業と海洋事業の戦略について教えて下さい。


LNG船。 建造費が高額であること、高度な運航技術が求められることから、参入障壁は高い。

世の中がクリーンエネルギーを模索する中、LNG (液化天然ガス) は燃焼時に発生するCO2や窒素酸化物等が石油や石炭に比べて少なく、世界的に需要が増大しています。

弊社は現在、67隻のLNG船を保有しており、これは世界の海運会社の中でトップクラスのキャパシティです。LNG船は船体構造や推進方式が特殊である上に、非常に高いレベルの安全運航が求められます。従ってLNG輸送事業を更に大きく伸ばしていくには、LNG船を建造する造船所、そしてお客様であるエネルギー企業と長年のビジネスの実績があり、三者間で良好な信頼関係が醸成されていることが重要な意味を持ちます。
造船コストも1隻およそ200億円と巨額であり、多様なファイナンス手法を活用した資金調達力と共に、品質を担保しながらプロジェクト全体の低コスト化を図る創意工夫と、それを的確にお客様に伝える提案力が求められます。

需要動向を見据えた適正な船隊規模として、LNG船は2018年には100隻超に拡大していく計画です。並行してLNG船を安全に運航する技術を備えた航海士、メンテナンス技術を持つ機関士をグローバルに養成しています。弊社が2007年に設立したフィリピン商船大学 (NYK-TDG MARITIME ACADEMY) の卒業生をはじめ、アジア・ヨーロッパの複数国で計画的に海上勤務スタッフの養成に取り組んでいます。
また技術力の活用という意味では、LNGを燃料とする船の開発にも着手しており、既にグループ会社においてLNGで動くタグボートの建造計画が動き出しています。

LNG輸送と両輪で進めているのが、海洋事業です。2008年に海洋事業グループを設立し、特殊船のラインナップを揃えています。従来のタンカーに加え、海底での採掘を行うドリルシップ、洋上での生産・貯蔵を可能にするFPSO、洋上設備からの積み出しを行うシャトルタンカー等に投資しました。2010年にノルウェーのシャトルタンカー運航会社 (現KNOT) に出資したことが推進力になり、高い技術力を武器にして資源開発案件の獲得を続けています。2012年には、オーストラリアのLNG開発プロジェクト 『ウィートストーン』 の事業権益を獲得したほか、2013年にアメリカのLNG基地への出資をしました。権益事業だけではなく、バリューチェーンの全てに関わる事業体制を引くことで、既存のLNG輸送船でも長期にわたる契約が見込めます。当社が目指しているのは、初期段階から要員を派遣し、貨物船の領域を超えて、エンジニアリング業界の知識や経験を取り込むことです。長期的な人材育成が鍵となるので、参加案件には社員を派遣して実務経験を積んでいます。技術力で優位に立つことで、業界内での地位を確立しようと努めています。

今日に至る貴社の歩みの概要と、長い歴史を通じて培った強みについてご説明下さい。


(上) ドリルシップ、(中) 自動車専用船、(下) 豪華客船・・・用途に応じた様々なタイプの船舶800隻以上が、世界の海を航行している。

土佐藩の九十九 (つくも) 商会の流れを汲み、岩崎弥太郎が立ち上げた郵便汽船三菱会社と、その競合企業であった共同運輸会社が合併し、1885年に 「日本郵船会社」 が設立されました。当時の外航海運は海外の船会社に独占されていましたが、弊社は1893年に初めての遠洋定期航路 「日本 - ボンベイ航路」 を開設します。それを皮切りに、欧州・北米・豪州への航路を開拓し、日本企業の貿易事業の拡大を支えました。お客様との繋がりを深く持ち、厚い信頼関係の構築を目指す弊社の営業スタイルは、この頃から変わらずに受け継がれています。

その後、第二次大戦で保有船はことごとく軍事徴用され、終戦時には商船として利用できる船舶は殆ど無く (現存するのは 「氷川丸」 のみ)、戦後ゼロから再スタートします。原油タンカー、鉱石専用船、木材チップ専用船と次々に保有船を増やし、1968年に日本初のフルコンテナ船 「箱根丸Ⅱ」 が竣工したのを契機に、段階的にコンテナ船の大型化を進めました。
しかし、1970年代にはオイルショック、80年代には急激な円高といった厳しい事業環境の変化に直面します。この時、全社で知恵を出し合って燃料節約に取り組むと共に、海・陸・空を複合する総合物流サービスを本格的にスタートし、長期的には右肩上がりの収益拡大を達成しました。燃料節約のノウハウは、徹底した省エネルギーが求められる現代の国際海上輸送において、様々な省エネ技術に結実しました。2012年より運用する最適経済運航プロジェクト 「IBISプロジェクト」 の礎ともなっています。

90年代に入ると、海外拠点を10年ほどかけて順次現地法人化し、ナショナルスタッフを雇用して、各国でより市場に密着したビジネスを展開するようになりました。結果、グループ連結の社員数が増え、現在では陸上勤務だけで3万名を超え、海上勤務の船員を含めると5万名規模となっています。海上勤務スタッフを含む広義の技術力、営業提案力が競争力を左右する海運会社にあって、多様性に富むグローバル人材は弊社ならではの企業資産となっています。

2000年代の前半以降、中国市場のプレゼンスが急速に高まると共に、企業活動のグローバル化に伴い、日本企業が海外工場で生産した製品を別の国へ輸送する等、日本の港を経由しない 「三国間輸送」 が急増しました。また、海運各社のサービスに大きな差がなくなり、価格競争が激しくなる中、いち早く 「従来型の海運業+α」 の戦略を打ち出し、更なる成長を目指すチャレンジを開始しました。

貴社における総合職のキャリアステップについてご説明下さい。


「特にご入社後10~15年は、国内/海外、営業/管理部門の区別無くジョブローテーションを行うのが特徴です。何事も “やってみないとわからない” ですからね。様々な上司に仕えるのも良い経験です。
キャリア入社の場合で未経験の職務であっても、ジョブローテーションによりスキルアップします。皆さんご活躍されていますよ。」

新卒採用では、陸上職技術系 (技師) も陸上職事務系も、最初の10年間は海外勤務も含めて多様な経験を積む時期、いわばキャリア基盤の形成期と位置付けています。中途入社者の場合は、前職での経験年数に応じてこの期間は変動しますが、可能な限り業務経験の幅を広げ、社内外の人脈を広げて欲しいと思います。

陸上職技術系は、船の種類に応じた造船プロジェクトの監督業務に始まり、新しい燃料や省エネ航法の開発業務、また海洋資源開発の各工程に極めて幅広い技術領域の業務が生まれています。10年で3部署ほどの異動を通じて技術の深化を図りますが、その中には海外勤務も含まれます。本人の適性や希望に応じて営業部門で経験を積む機会も想定しています。
陸上職事務系は、エネルギー輸送、コンテナ船による一般貨物輸送、鉄鉱石・石炭等のドライバルク輸送、自動車輸送、航空運送等、貨物と輸送手段、お客様の業種が異なる事業部門をやはり海外拠点も含み3か所ほど経験し、営業部門と管理部門の両方でキャリアアップをして行きます。

その後の10年間は、課長代理としてマネジメントにも携わりながら、成功体験を通じて自信をつけ、その人らしいビジネススタイルを身につけるキャリア確立期に当たります。弊社の事業がどのように成り立ち、自分が陸上職技術系或いは陸上職事務系としてどのように貢献できるのかを理解した上で、自ら創意工夫して競合他社に打ち勝ち、新たな事業を形にして頂くことを期待しています。

その次は専門領域を定め、キャリアを更に深化・発展させる時期になります。これまでの経験を統合して専門領域を定め、次期部門長の候補となり、特定の事業部門を牽引するコア人材として活躍して頂きたいと考えています。

貴社ならではの仕事の面白さや達成感について教えて下さい。


「急激な円高や、資源の中国バブル、リーマンショックなど、様々な環境変化にも都度乗り切ってきました。」

私自身の経験からお話ししますが、弊社では若い頃から仕事を任されます。日本郵船(株) 単体では陸上職約1,000名、海上職約600名、合計約1,600名規模の企業であり、職域も海外現法やグループ全体に拡大しており、若手が手を挙げれば 「それなら君、ちょっとやってみるか」 といった感じで思いがけなく大きなチャンスが舞い込みます。

入社5年目に異動した 「欧州企画課」 で、私は日本の自動車メーカーの英国での新工場建設を支援するプロジェクトを担当しました。英国工場への資材輸送から現地での部品物流や調達物流、日本からのノックダウン部品のコンテナ輸送、ヨーロッパ域内の完成車輸送まで、お客様が必要とする物流をトータルで提供しようという一大プロジェクトでした。 営業チームと連携し、私の課では企画系の業務――英国のトラック会社を買収してお客様の工場の隣に物流拠点を設けたり、域内輸送を任せるために自動車専門の物流会社を買収したりと、未体験の業務に奔走しました。

次に配属された 「自動車船グループ」 では、欧州車等の輸入と三国間輸送を担当しましたが、この時、日本車メーカーのインド現地法人を担当したことは、忘れられない思い出です。そのメーカーの 「インド出し」 の貨物についてはほぼ一手に任されたのですが、当時のインドは通信や物流インフラが未整備であった上に、大雨や洪水にも悩まされました。積み出し港に行っても500台あるはずの車が200台とか150台しかない事態さえありました。そのまま船を出す訳にもいかず、地元メーカーを駆けずり回ってバスやトラック、シャーシ、オートリキシャ(三輪タクシー)等を混載しました。三国間輸送では、どうやって利益を出せば良いのかを絶えず考え、工夫を重ねた経験を通じて営業として鍛えられました。

その後、スウェーデンのストックホルムの現地法人に唯一の日本人社員として赴任することになります。ここでは弊社と共同サービスを展開する船会社と北欧及び欧州の自動車メーカー各社を担当しました。そして3年半後に帰国する時には、自分は今後 「どこの国でも自動車船の営業でやっていけるだろう」 という自信を得ることができました。

弊社の仕事の面白さは、「船を造り、貨物を動かす現場がある」 ことだと思っています。現場では、常に自分の仕事の結果が見えます。仕事の過程では苦労に苦労を重ねたとしても、最終的な成果として貨物が実際に海を越えて動き、それを送り出した人の笑顔に触れ、受け取ったお客様から感謝の言葉を聞くことができます。

貴社らしい社風やカルチャーついてご説明頂けますか。


本社受付前にて。

弊社の 「仕事を任される社風」 とは、言い換えれば、お客様から何を求められているかを自分で感じ取り、どう提案したらいいかを考える自由があるということ。そのアイデアを社内の営業-技術 両部門で共有し、必要に応じて社外の造船所とも密接に連携します。常に先を見越してプロアクティブに働きかけ、組織や会社を横断した 「プロジェクトチーム」 を編成し、中長期にわたって目標を共有してゴールを目指します。弊社グループには、そうした一体感を持って 「みんなで一緒に」 仕事を成し遂げていくカルチャー、柔軟且つ強固な組織ネットワークの土壌があると思います。

創業以来、世界的に自由競争の外航海運市場を開拓してきたこともあって、社内の人間関係はフラットであり、若手が上司に対して自由に物が言える風通しの良い雰囲気が根付いています。更に言えば、社員と経営との距離も近い会社です。社長にも役員にも、私たちは日常的に 「さん付け」 で話しかけますし、現場で苦しんだり喜んだりしているマネージャーの動きを、役員層も一体感を持って見守っています。私が本社の 「製鉄原料グループ」 のグループ長代理として、リーマンショックの収拾に悪戦苦闘していた頃も、決して孤立していた感覚はありませんでした。常に役員を含む経営陣のバックアップの下、組織の一員として仕事をしていると感じていました。

また弊社では、海上職の約4割が、運航支援部門や環境部門、営業部門等に所属し、常時陸上で勤務しています。陸上職と海上職の社員の距離が近く、陸上職技術系、陸上職事務系、海上職の三職種が協力し合いながら一体感を持って働いていることも固有のカルチャーだと言えるでしょう。

最後に、中途採用において求める人物像についてお聞かせ下さい。また、貴社を志望する方や、潜在的な候補者へメッセージをお願い致します。

技術系・事務系を問わず、グローバルビジネスの志向があり、異文化圏でのビジネスのタフな局面にも積極的に取り組み、創意工夫で乗り越える人であって欲しいと思っています。また、複数部門のメンバーや社外のメンバーと協調・協力し、課題解決に向けて知恵を出し合い、工夫を重ねていく仕事を面白いと思うメンタリティーは基本要件になります。その資質さえ備えている方であれば、前職での業界や職歴に特定の条件を求めることはなく、むしろ多種多様なバックグラウンドを歓迎します。

そもそも海運業とは、広く世界に開かれたビジネスであり、「従来型の海運業+α」 の方針を打ち出す弊社では尚更、仕事のフィールドは幅広くなっています。若手に仕事を任せる社風の下で個人の裁量権の大きい業務に取り組みたい方、実際にモノが動く現場の近くで仕事がしたい方、弊社グループのビジネスリソースを活用しながら、新たな技術を事業に役立てたり、付加価値の高い提案を成就させたりする業務にやり甲斐を持って取り組める方と、是非一緒に仕事をしてみたいと思っています。

本日はお忙しい中、長時間に亘りご協力頂き、ありがとうございました。

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日本郵船株式会社
創立
明治18年9月29日 (創業 同年10月1日)
資本金
1443億1983万3730円
上場証券取引所
東証1部、名証1部
従業員数
35,935名
本店所在地
東京都千代田区丸の内二丁目3番2号 郵船ビル
代表者
取締役社長 内藤 忠顕
事業内容
国際的な海上運送業を主とした総合物流事業および客船事業、 ターミナル関連事業、海運周辺事業、不動産業など
※この記事の内容は取材当時の情報です。記載されている会社名、サービス名、役職名等は現在と異なる場合があります。
職業紹介優良事業者認定マーク
当社は、全国に約28,000事業所ある人材紹介会社の中で、厚生労働省が審査し、 わずか40社しか選ばれない「職業紹介優良事業者」に認定されています。
※平成26年(第一回認定):全国で27社のみ、平成30年:全国で43社のみ(第二回認定)、令和2年:全国で39社のみ(第三回認定)、令和5年:全国で40社のみ(第四回認定)
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