弊社は、三菱グループ創業100周年記念事業の一つとして、“日本にも社会問題の解決に役立つ研究に取り組み、政策を提言するシンクタンクを創設しよう” との趣旨で、1970年に設立されました。三菱グループ約30社から出資を受け、財団法人三菱経済研究所、三菱製鋼(当時)の子会社であった技術経済情報センター、そして三菱原子力工業(当時)の計算センター部門が母体となっています。
創業時の経営理念は 「優れた情報で輝く未来:Better Information - Brighter Future」 であり、未来志向であること、政策にコミットすること、学際的な研究に取り組むこと、そしてそれら全ての活動を支える 「独立性」 を重視しています。したがって、顧客基盤は三菱グループに依存せず、中央官庁等の公共セクターの仕事に軸足を置き、民間セクターでは三菱グループ外の企業からもオープンに仕事を受託する方針を貫いてきました。
弊社の歴史の中で、いくつかの大きな転機がありました。まず2000年に、それまでのリサーチ主体の事業から、ソリューションビジネスへの参入を決断しています。更に2005年には、ITソリューション事業を強化する目的でダイヤモンドコンピューターサービス株式会社 (現 三菱総研DCS株式会社) に資本参加し、連結の従業員数が3,000名規模に拡大しました。そして2009年には株式を上場、社内制度やマネジメントシステムを再整備し、より公明正大で透明性の高い企業活動を追求しています。
こうした歴史の上に立ち、弊社は総合シンクタンクとして、社会問題の解決に向けた政策や戦略の立案に取り組んでまいりました。現在は、政策や戦略の立案に留まらず、その実行までを支援する“THINK & ACT” タンクとして、お客さまと共に未来を創造するというミッションに取り組んでいます。
政策・公共分野に限った話ではありませんが、弊社の強みとして、研究員の専門性の幅広さが挙げられます。法律・政治・政策から航空・宇宙、環境工学、情報システム科学まで、社会科学も自然科学も網羅する様々な分野の専門家が在籍しています。その規模も全社で700名弱、政策・公共部門だけでも450名を擁しており、彼らが各プロジェクトに応じて柔軟に連携する体制をとっております。
政策分野では、例えば地球温暖化対策の国際的な枠組作りのように、弊社が1990年代から継続してサポートしているテーマがあります。こうした息の長いプロジェクトにおいて、弊社は現在に至るまでの議論の流れや政策の経緯に精通しており、環境関連の技術を専門とする研究員も加えたチーム編成で臨みますので、数年ごとの異動を基本とする各省庁のご担当者から非常に厚い信頼が寄せられています。また、世の中の高度化・複雑化に伴い、省庁横断的に対応しなければならない課題も多い中、調整役としての役割を果たすことを求められる機会も増加しています。
公共向けのITソリューションについては、中央官庁の大規模システムの更新プロジェクト等で実績を築いています。特定のSIerに依存しない独立性を活かし、ユーザーの立場でシステム戦略全体をコンサルティングし、個々の開発案件のプロジェクトマネジメント機能を提供できる強みがあります。
社会問題は時代と共に変容していきます。これまで想定していなかった事態にどう対応したらいいのか、世の中の新しい動きを踏まえてどんな政策を打つべきか、現時点ではまだ「解」が存在しない難題に立ち向かい、知恵を結集し、どうにかして解決の糸口を見つけていくことが求められます。
例を挙げますと、弊社では東日本大震災の復興関連のプロジェクトに数多く携わっており、福島第一原子力発電所の事故後の対応支援にも様々な形で取り組んでいます。事故を起こした原子炉の廃炉をいかに安全に行っていくか、人々が安心して暮らせるように放射性物質の除染をどのように進めてくか等、多くの課題が山積しています。こうした事故後の対応では、弊社は、役所・行政でもなく電力事業者でもない、第三者的な立ち位置から専門的なサポートを提供することが可能です。
海外の原発事故の事例や放射線障害等に関するデータの分析・検証を踏まえて、今後の対応策について周辺住民の方々に対して丁寧に分かり易く説明を差し上げることで、一歩ずつご理解と合意を形成していくような役割も、総合シンクタンクである弊社だからこそ果たすことのできる社会的使命の一つであると思います。
民間企業へのコンサルティング、各種ソリューションの提供は、主に企業・経営部門が担っています。
もともと弊社では、長年のリサーチ活動によって蓄積した豊富な知見をベースに、科学的なアプローチによる高度な調査・分析を行い、国の政策にも精通したシンクタンクとして中長期の見通しに基づく経営戦略やマーケティング戦略等の提案に強みを持っています。
業種別に見ると、エネルギー・交通・情報通信といった分野のインフラ・社会基盤を構築するような企業や、医療法人・学校法人等の案件を受託するケースが相対的に多い傾向がありました。
しかし最近では、ビッグデータの解析を元にしたマーケティング支援をはじめ、様々な業界でコンサルティングのニーズが高まっています。そのためインフラ系の企業に限らず、嗜好品・生活用品メーカー等、これまで以上に幅広い事業領域の企業のプロジェクトに携わる機会が増えています。
ビッグデータの例では、お客さまから様々な消費者の購買行動データをお預かりし、数理統計的な処理を行って潜在的なパターンを導き出し、お客さまと共に結果を吟味・解釈することで新たなマーケティング戦略を立案しています。
また、例えば金融機関向けには、住宅ローンの与信システムを開発・提供しています。従来、審査担当者の経験則に依拠していた与信業務にスコアリングモデルの考え方を導入したものですが、収益回収シミュレーションを行うことで、客観的な審査基準とプライシングを実現するシステムを構築しました。また、弊社のお客さまのコンソーシアムを立ち上げ、各金融機関の融資情報をモニタリングすることで、モデルの継続的改善と参加金融機関の融資方針や営業戦略の立案を支援しています。
事業開発部門は、お客さまと未来を共創するインキュベーション的な事業を担う部門であるとともに、あるべき社会政策、社会・経済・技術の中長期予測等、研究活動を通じて蓄積した様々な情報や新たな提言を積極的に社会に発信しています。
そうした提言の一つに、超高齢社会の多様な課題を産学官が協力して克服し、豊かな社会のあるべき姿を示す 「プラチナ社会」 があげられます。弊社が設立した「プラチナ社会研究会」においては現在、企業、自治体、大学研究機関等、総勢300を超える会員が、課題解決のヒントや新しいビジネスのニーズについて議論を重ねています。
また、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックを契機に、そこから更に10年、20年に亘って機能する有形・無形の社会インフラを整備しようとする計画を推進しています。スポーツを楽しむ層が増える、交通システム等の都市機能が向上する、観光客の増加を通じて経済が活性化する等、持続的な価値を生む資産を 「オリンピック・パラリンピック・レガシー」 と呼び、大切にしたいと考えています。
申し上げるまでもなく、シンクタンクで最も重要な経営資源は 人 です。
弊社では、人材育成に関連する施策を 「総合人財育成計画」 として体系化し、様々な仕組みを構築しています。ポイントは「変化への対応力強化」ということです。社会の変化によって研究のテーマが変わっていく中で、新しいテーマや課題に積極的にチャレンジする柔軟性やマインドを持った人材を育成したいと考えています。そこで、従来、各部署が中心になって行っていた人材育成から、中長期的な視点に基づき会社として人を育てる仕組みに転換しています。
まずは採用スタンスから見直し、大学・大学院での専門的な学びを重視する方針は踏襲しながらも、全社的な尺度で見てポテンシャルのある人材、タフでバイタリティがあり、難局に遭遇してもしなやかに打開していけるような人材の採用に注力しています。
人材育成に関しても、若いうちに異なる部署を経験したり、他社や大学・研究機関等での武者修業に挑戦したりと、本人のキャリアの幅が広がるようなローテーションを行っています。これにより研究員が一つの専門分野を深く追求するだけでなく、世の中の変化を見つめ、自分の専門性を異分野の専門性と関連付けて、これまで世の中に存在しなかった「解」を構想し、自らビジネスチャンスを切り拓いていく力を身につけてもらいたいと考えています。
研究員一人ひとりが自身の専門分野を大事にしており、入社後も自己研鑽を継続していることは弊社らしさの一つです。会社としても人材開発投資を積極的に行っており、社会人大学院への通学や各種資格取得の支援、大学等への非常勤講師就任や学会活動を業務として認める等、一般の民間企業とは少し異なる “研究所としての文化” があるように思います。
また、プロジェクトチームに入ってお客さまへの提案を議論する上では、新入社員だから、ベテランだからといった線引きはなく、誰もが一人のプロとして意見を求められる極めてフラットな組織でもあります。
社内的な評価よりも、自分のモチベーションに従って良い仕事がしたい、お客さまに喜んでもらいたいと願っている人が多いのも弊社らしい所です。多くの研究員が、自分たちの仕事がより良い社会づくりに繋がって欲しいという気持ちで業務に臨んでいます。
例えば建設会社のように自分たちの仕事の成果が物として残ることは多くありませんが、国の様々な制度が変わったり、規制が緩和されたりする動きの一つひとつが、実は自分が考え抜いた社会課題へのソリューションであるわけです。
弊社が進める幅広い領域のプロジェクトで、これまでのご経験を活かして頂きたいと考えています。一方で、全てのプロジェクトが自身の専門領域とぴったり重なるわけではありません。したがいまして、多様な課題に対し、知的好奇心を持って、未知のテーマにも率先して取り組んでいく姿勢が求められます。自分の専門外の分野に対しても貪欲に学び、考え続け、より良い提案を練り上げていく姿勢が重要です。
部門や職種によって人材に求める経験やスキルは異なりますが、共通して求めているのは、 「良いものを創りたい」 「お客さまに価値を提供し、満足してもらいたい」 ということへの強いこだわりです。更に言うなら、「より良い未来社会を創ろう」 という使命感でしょうか。それこそが(株)三菱総合研究所のDNAであると思います。
あとは、きちんと自分の頭で考える、考え続ける知的持久力を持っていること。提案に際してはあらゆる角度から何回も考え直す作業が必要です。その前提としてチームワークが求められることは言うまでもありません。いずれにしてもそのように自分自身で主体的に考え、かつ、チームでの議論を経て鍛え上げた提案でなければお客さまには響きません。
だからと言って専門家として上から目線で助言をするスタンスでは全く通用しません。仕事のパートナーは中央官庁の課長補佐クラス、あるいは上場企業のマネージャークラスの方々です。そのようなお客さまから、「君に頼むよ」 と信頼して頂くことで初めて仕事は動き出します。専門性の高さは大切ですが、約束をきちんと守る、お客さまの期待より常に一歩踏み込んだ提案をするといった、小さな信頼を一つずつ積み重ねていくビジネスパーソンとしての基本的な行動がとても重要だと思っています。
地球規模でのパンデミックや、サイバーテロなど、社会問題が変化してきており、従来の方法では制御することが困難になっています。問題によっては極めて短時間での解決が求められることもあります。
そういう時代にあって、今まで以上にシンクタンクの活躍の場は広がっていると感じています。解決困難な課題が山積している今、より良い社会づくりに自ら参加し、貢献してみたいという方は、是非、弊社の仕事を検討して頂きたいと望んでいます。