株式会社日本政策投資銀行(DBJ:Development Bank of Japan Inc.)のグループ会社として、2006年に野村ホールディングス株式会社と共同出資で「DBJ野村インベストメント株式会社」として発足したのが私たちの会社の嚆矢になります。リーマンショックを経た2012年にDBJの100%出資となり、現社名であるDBJアセットマネジメント株式会社(以下、当社)となりました。
親会社のDBJは、政府系金融機関として長年に亘って日本のインフラ関連の大規模事業や産業の創出・発展を資金面から支えてきました。大規模プロジェクトや事業への長期融資を軸とした支援を続ける中で、社会的なニーズに応える形で段階的に投資事業にサービスを拡大しました。その結果、まず不動産ファンドへの投資事業において一定の実績を積み重ねることが出来、不動産私募ファンドの運用会社としての当社設立に至ったのです。
事業領域の拡大という意味では、DBJのPEファンドへの投資事業を2014年に当社に移管しました。翌2015年にはインフラファンドへの投資事業を移管しています。ただし、当初はDBJが関与する案件が多く、真の意味で独立した事業としてのファンド運用をスタートしたのは、広く機関投資家を募って不動産私募REITを立ち上げた2016年からになります。
その後、有力な金融機関系の投資家を顧客として、PE、インフラ及び海外不動産を対象とするファンドへの投資事業を拡大したことを踏まえ、不動産、PE、インフラの3分野を事業の柱と位置づけ、「オルタナティブ資産」への投資を通じて、機関投資家に良質な投資機会の提供を目指す現在の業務展開がスタートしています。
当社の特色は、株式や債券等の伝統資産に代わる運用資産として注目されている「オルタナティブ資産」に限定して運用ビジネスを展開していることです。先程述べましたように、DBJが中立かつ長期の目線で関わってきた不動産、PE、インフラの分野に特化し、得意な領域だけに注力するという考え方です。逆に言えば、苦手なこと・知見の浅い対象には手を染めず、組織にノウハウが蓄積され、経験を積んだ人材が揃っている領域でお客様に価値を提供していこうとしています。
ベースには「金融力で未来をデザインします」というDBJグループの企業理念があります。金融フロンティアの開拓を通じて、お客様や社会の課題を解決し、日本と世界の持続的な発展を実現することです。その使命の中で私たちの会社は、オルタナティブ資産に関連する金融市場の発展に寄与していきます。そこで2019年に、当社としての企業理念を策定し、投資家の皆様に多様で良質な投資機会を創出し、オルタナティブ投資市場の健全で長期的な発展を実現するというミッションやビジョン、行動基準を言語化しています。
DBJグループに共通するDNAとして、当社は全ての投資判断において長期性、中立性、公益性を重視しています。この姿勢こそが当社らしさであり、他の運用会社とは一線を画す強みにもなっていると自負しています。
長期性とは、DBJが長期的な視野でプロジェクトへの資金を提供してきたのと同様に、5年から10年といった長期でのリスクテイクを視野に資産運用を考えていくということです。マーケットの変動によって運用に短期的なマイナスが発生しても、長期的には持ち直すことが可能です。また、伝統資産にマイナス局面が発生しても、(相関度の低い)オルタナティブ資産に分散投資していることでパフォーマンスが安定する側面もあります。
中立性とは、企業グループの色やしがらみがないため、投資に当たってニュートラルな立場で最適なオルタナティブ資産を選定出来ることです。機関投資家のニーズに合わせて、様々なファンドに柔軟に投資することが出来ます。現在では国内外でカバーするファンド数が非常に多くなっており、ファンドが個々のプロジェクトや企業をどのように見て投資しているのか、ファンドマネジメントの体制の善し悪しを的確に判断することも可能となっています。
公益性はパブリックマインドと言い換えられます。単に一つのファンドへの投資が機関投資家の運用ニーズに合致するかという判断基準だけでなく、その投資が中長期的に見て日本のオルタナティブ市場の発展に資するかという視点を持つことを大切にしています。日本におけるオルタナティブ投資はまだ歴史が浅いこともあり、新たな市場を健全に育てていく担い手としての責任を果たしたいからです。また政府系グループであることは、海外で初めてのファンドにコンタクトする際の信頼構築にもプラスに作用し、円滑なリレーション構築が可能となっています。
当社には、世界でも最大級の規模と言える日本の年金投資家をはじめ、国内大手の金融機関系投資家、地域金融機関等との継続的・安定的なリレーションがあります。我が国の有力インフラ企業の年金運用も手掛けています。このようなお客様との良好な関係継続には、裏付けとしての高い運用パフォーマンスがあります。結果として、オルタナティブ運用専業のアセットマネジメント会社としては我が国最大級の運用資産残高(2022年末時点のAUM:3兆円超)を実現しています。
また、資産運用ニーズの多様化に伴って、グローバルな視野で分散投資出来る体制を整えている点も機関投資家の皆様からの評価に繋がっています。お客様である投資家との信頼関係を背景に、国内外の各分野のファンドとのリレーション構築を通じて資産運用会社としてのナレッジを蓄積してきたのです。そして、リーマンショック後に日本での活動を本格化してきた海外ファンドとの接点拡大にも率先して取り組んできました。このため当社は、先行者としてのアドバンテージを活かして海外の有力ファンドとのリレーションを強化し、継続的な利益を創出することに成功しています。
海外ファンドを運用に組み込む際には、日本の機関投資家から投資先のリスク等を調査するデューデリジェンスレポートの翻訳機能が求められます。海外エージェントが作成した英文のレポート類をそのまま投資家への説明に利用する資産運用会社も多い中、当社では社員が自ら海外ファンドのマネージャーと対峙しながらデューデリジェンスを実施し、日本語でレポートを作成。グローバル運用に対するお客様の心理的なハードルを下げると共に、個々の投資先を精査しなければならない銀行等の投資家ニーズにもお応えしています。
資産運用会社のKPIは、安定した運用パフォーマンスに他なりません。運用成果は運用者個人の力量によっても左右されますから、当社の最大の資産は「人材」です。そのため創業期から、プロフェッショナルが働きやすいフラットな組織づくりに注力してきました。そして、組織を挙げて人材育成に注力し、チームワークの中で経験豊富な社員が知見やノウハウを提供しながら、若手・中堅の能力を引き出し、伸ばしていくOJTの仕組みを整えてきました。
それと並行して、積極的なキャリア採用を実施することで、広く金融・不動産業界から一定の経験値を有する人材を仲間に迎えてきました。現在、社員の3分の2がキャリア採用の社員であり、入社後に当社で経験を積んだメンバーの多くが、今では教える側となって大いに活躍しています。
一方、投資家から資産をお預かりする運用会社の責任として、あらゆる行動にフィデューシャリー・デューティー(FD:受託者責任)を負っていることは言うまでもありません。ファンドの選定から運用に関わる全ての関係者が長期目線でwin-winとなれるよう、DBJグループとして培ってきた業界プレーヤーとのリレーションを有効に活用しています。また、投資家のご要望によっては、あえてDBJと連携せずに運用スキームを作り上げることも多く、この柔軟性もお客様に評価を頂けていると感じています。
ファンド運用と投資家対応を担うフロント部門から、運用に関連した事務オペレーションを支えるミドル・バックオフィス部門、そして人事やコンプライアンス等を担うコーポレート部門まで、幅広い部門でキャリア採用のニーズがあります。
フロント部門は、不動産・PE・インフラの3分野に分かれ、キャリア採用者はそれぞれの領域での経験を活かし、必要に応じて学び直しながらご活躍頂いています。運用者はファンドマネジメントと機関投資家の皆様とのコミュニケーションを並行して担いながら経験を積んでいきますが、投資業務から投資家対応業務まで幅広く担って頂くことも当社の特徴の1つです。
ミドル・バックオフィス部門も同様に3分野に分かれており、資産特性に応じた事務フロー全般からお客様向けのレポーティング業務まで、幅広い業務を担当します。
コーポレート部門につきましては、基本的に分野ごとにスペシャリスト人材を求めています。
いずれの部門も人材にプロフェッショナリティを求めていますが、同時に新しいことを柔軟に吸収しながら成長しようとする姿勢や、チームとして価値を創出するようなメンタリティを重視しています。金融機関でPEファンドへの融資を担当していたけれど、投資経験はほとんどないとか、株式や債券のバックオフィス業務の経験はあるけれど、オルタナティブ資産については未経験といった人材も、当社の業務を学びながら守備範囲を広げて頂きたいと考えているからです。
大きく分けると、不動産業界出身の方と、メガバンクや信託銀行等の金融機関出身の方が活躍しています。
不動産業界出身の人材は、当社で新しいことにチャレンジし、ご自身の得意領域を拡大したいという思いで入社されるケースが多いです。当社は私募ファンドだけでなく私募REITも組成していることから両方の部署での運用経験を積むことも出来ますし、アクイジションのチームで物件取得業務に携わることも可能です。オフィスや住宅だけでなく、商業施設や物流施設等、特定のアセットタイプに縛られずに幅広い不動産を扱う経験を積むことが出来る点も当社の特徴です。また、海外不動産ファンドを対象とした投資業務も手掛けています。
金融業界出身者は、融資という形でファンドに資金提供するだけではなく、投資の経験を積みたい、あるいは一つの分野で専門性を高めていきたいという動機で志望される方が多いです。我々の会社は、本人の希望に合わせて長期的にスキルを積み重ねて頂けます。また、資金の移動だけでなく多種多様な不動産の「現物」に触れ、関係者との人的ネットワークを大きく広げていける点も魅力であると思います。
PEファンドやインフラファンドへの投資業務は、当社では「グローバルファンド投資事業」と位置付けています。
当社のフロント部門メンバーは投資家対応とファンド対応を両方担うので、まずは「人が好き」であり、「資産運用のプロと話すことを楽しめる」人材でなければなりません。また、現状では日本のPEファンドやインフラファンドの市場規模は限定的なので、海外を視野に入れたファンド運用の検討が必要です。海外ファンドのデューデリジェンスに投資家が同行することもあり、そこでは英語によるコミュニケーションスキルを含めて運用者としての力量を判断されることになります。
PEファンドについては、メガバンクや大手資産運用会社等に一定の経験者層が存在しています。彼らが当社に転じた理由として、有力な機関投資家とのリレーションがあり、長期目線の運用が出来ることや、フラットで率直な意見交換がしやすい職場環境を挙げる方が多いです。今では運用に組み込むファンド数が多岐に亘るので、オルタナティブ投資のプロフェッショナルとして、得意分野を広げながら成長していきたいといった声をお聞きしています。
インフラファンドにつきましては、PE同様にメガバンクや大手証券会社の出身者もいますし政府系金融機関でファンド投資や海外インフラプロジェクトに従事していたメンバーも加わりました。更に、最近ではこの分野の成長性への期待から大手商社から転職してきた社員もおり、多種多様なメンバーが活躍中です。
ミドル・バックオフィス部門の業務については、機関投資家の皆様が求める管理業務やレポーティングの内容が、不動産・PE・インフラの各分野でそれぞれ異なってきます。例えば、投資するファンドのリスク管理には、国際的規制の対応を個々の投資案件ごとに考える必要があり、投資家の要望に応じて非常にきめ細かい対応が求められます。こちらの業務も英文資料を読み込む語学力が求められると共に、経験とノウハウが必要なリスク計測業務をチームワークで成し遂げていくような特性があります。
その意味で、業務の中で「どこまで当事者意識を持ってお客様のために頑張れるか」が問われてくると感じています。このスタンスについては、ミドル・バックオフィス部門に限った話ではなく、当社の全部門で求められる行動原則でもあります。DBJグループが大切にする「公益性」とも関わり、オルタナティブ市場を健全に発展させていくために、長期目線で取り組んでいけるような資質を持った人たちと一緒に働きたいと思っています。
商学部で会計学を学び、1992年にDBJに入行しました。札幌と仙台で3年ずつ勤務し、英国に1年間留学した時期を除き、本店で不動産・PE・インフラ分野のプロジェクトファイナンスを一通り経験しました。財務省との折衝担当を経験した他、DBJが発行する社債の資金調達やIRにも携わり、機関投資家の皆様とのコミュニケーションを経験しています。
2016年にフロント部門の担当役員として当社に1度目の出向となり、不動産・PE・インフラ分野全体を統括管理した後、一旦DBJへ戻り、2021年6月に代表取締役社長執行役員を拝命しました。経営者として心掛けてきたことは、お客様である機関投資家との安定的なリレーションを確保することと、オルタナティブ分野に特化した資産運用会社として業界でのプレゼンスを高めていくこと。両者のバランスを取った経営に向けて、ESGを軸としたアセットマネジメントのあり方を模索してきました。
社内的にはESGのS(Social)の部分、特に社員の労働環境の整備に力を入れてきました。先程述べましたように、資産運用会社の最大の資産はプロフェッショナルとしての人材であり、人が働きやすいフラットな組織づくり、仕組みづくりに継続して取り組んでいます。現場メンバーの業務がスムーズに流れるように、週に4回、私以下取締役全員と部長、担当部署のメンバーが参加して、社内で検討中の一つひとつの投資判断について様々な角度から検討する場を設けています。こうした取り組みは、運用に対する機関投資家の満足度を高めることにも繋がっています。
ゆとりあるスペースが確保されたオフィスは準フリーアドレスで、オフィスのPCは全員デュアルモニターが基本となっています。経験年数に関わらず誰もが「さん付け」で呼び合い、コロナウイルスの流行以後は快適なリモートワーク環境をいち早く整備したことに加え、いつでもどこにいても社員同士が気軽に学び合える風土が根付き始めています。
プロフェッショナルが働きやすい環境を整えてきた結果かもしれませんが、当社は女性比率が高い運用会社であることを付け加えておきます。現在、社員の半数が女性であり、お子さんを育てながら活躍中の方も多く、2名の女性副部長以下、優秀な若手女性社員が育っています。
また、男女共にキャリア採用で入社した人材が元同僚や後輩を紹介・推薦してくれるケースも増えており、いわゆるリファラル採用で入社頂く人材も増えています。こうしたことからも、従業員満足度の高い企業である点を、是非お伝えしたいです。
今後の成長戦略として、引き続きDBJアセットマネジメントは機関投資家の皆様からの信頼を糧として、説明責任を果たしながら絶えざる運用パフォーマンスの改善を続け、オルタナティブ市場の成長に貢献していきます。2023年度からの3年間は、私たちがこれまで培ってきた強みを活かし、預かり資産の更なる拡大を目指します。オルタナティブ投資はまだまだこれから伸びていく業界ですから、私たちも様々な動きの中で大きな変革が求められるでしょう。どのような局面に遭遇しても、慌てず柔軟に対応出来るよう、運用会社としての地固めを確実に継続していきたいと考えています。