クボタは1890年、大阪市南区で鋳物メーカーとして創業しました。創業者の大出 権四郎(おおで ごんしろう、のちに久保田姓となる)が、はかり等に用いられる鋳物の製造から事業を興しています。
当時は安心・安全な水へのアクセスがまだ難しかった時代で、コレラ等の水系感染症が流行していました。そのような社会問題を視野に、水道用の鋳鉄管の量産化を国内で初めて実現したことが、事業拡大の契機となっています。鋳鉄管(ちゅうてつかん)から始まり、上下水道の管路を構成するバルブやポンプ等へ、製品の幅を段階的に広げていきました。
創業者の久保田は、「技術的に優れているだけでなく、社会の皆様にとって役立つものでなければならない」との言葉を残しています。事業を通じて社会に貢献するという考え方は、今も変わることなく受け継がれていると思います。
戦後、日本は食料不足が深刻化し、食料の増産が喫緊の課題でした。しかも、経済発展に伴って農村から都市部に人口が流出し、農家は人手不足となっていました。
そこでクボタは、農業機械を開発・投入することで日本の農業の省力化・効率化に貢献します。発動機や耕うん機に始まり、畑作用と水田用のトラクタを開発。更には、穀物の収穫や脱穀等に使用するコンバイン、田植機等、日本の農家の需要にきめ細かく応える農業機械を次々に商品化していきました。
高度経済成長期には、大気汚染や水質汚染といった公害問題への社会的関心が高まりました。水道事業を展開していたクボタは、より広い視野で「水の循環」を見つめ直し、水処理技術へのチャレンジを開始しました。
また、大量生産・大量消費・大量廃棄を背景に、最終処分場の逼迫(ひっぱく)、不適切な処理による生態系への悪影響など、ゴミが社会問題となり始めました。クボタは、ゴミ焼却・溶融技術にも取り組み、ここから廃棄物処理を中心とした環境リサイクル事業が育っています。
1950年代の初めから手掛けている建設機械の製造は、その後、都市化に伴う国内の土木工事の需要や住宅着工数の増大と共に大きな事業へ育っていきます。
ただし、建設機械業界には競合他社も多く、道路工事で目にするような小型建機から、鉱山開発で使用される大型建機まで、幅広い製品があります。クボタは小型建機に特化して競争力を高め、厳しい競合環境を乗り越えて事業を成長軌道に乗せることに成功しています。
中でもミニバックホー(小型のパワーショベル)の販売台数は、22年間連続でグローバルNo.1を獲得しています。
農業機械や建設機械等の自社製品に搭載するエンジンの多くはクボタ製です。鋳物製造で培った技術が、コンパクトで耐久性があり、かつ高出力・低燃費を実現する産業用エンジンの製造に活かされています。
元々、農家が農業用水の灌漑等の動力源に使用した発動機からスタートし、今では幅広い業界に産業用エンジンを提供しています。現在、100馬力帯の小型産業用エンジン市場では、クボタは世界トップシェアを確立しています。
現在、クボタグループの売上高の約8割が海外市場での売上です。これは、国ごとに異なる現地のニーズにきめ細かく応えた製品開発を積み重ねてきた成果だと言えます。
1960年代の水道管の輸出から始まり、アジアや中東へのODA(政府開発援助)の一環で、水道インフラの整備に継続して参加しています。農業機械についても、米国や、タイを始めとするアジア各国、そして欧州の市場開拓に1970年代から取り組んできました。
例えば、大規模な農地が多い米国では、軽快に乗り回せる日本のトラクタとは違い、車両重量があって牽引力の強い製品が求められます。また、乗用芝刈機や、飼料・資材を運ぶ多目的四輪車等の要望にも応え、製品ラインアップを逐次見直してきました。
主要作物は国や地域によって様々ですし、土壌も大きく異なります。各国に拠点を設けて地域ごとの農業を現地で学び、求められる作業に応じてトラクタ後部のインプルメント(トラクターに接続する作業機械のこと。耕うん、肥料・農薬・種の散布、草刈り、収穫した物を運搬する等、多種多様な作業が可能)を拡充する等、製品開発を進めていきます。
このように、各国における「地域に根ざした事業」への挑戦が実績として積み上がり、2000年代以降に売上増へと反映されてきたのです。
それはクボタグループの「For Earth, For Life」というブランドステートメントにも表れています。「地球環境を守り、人々の生活や命を支えていく」といった意味ですね。それぞれの製品によって地域の生活を豊かにするような事業に取り組むことを約束しています。
企業としてのこの姿勢は、実は昔から変わっておらず、時代の変化の中で表現する言葉が変わってきています。1950年代の「国つくりから米つくりまで」から、その後の「ゆたかな人間環境つくり」「技術で応えるたしかな未来」「美しい日本をつくろう。」「社会の底力」等、時代に則し目指す姿を企業スローガンとして発信してきました。
現在、「For Earth, For Life」という言葉は、全世界のクボタグループの名刺に企業名と同じ大きさの文字で刷り込まれています。
世界の人口増加は環境に深刻な影響を与え、安全な水資源は地球規模で不足していますし、食料の供給不足も起こっています。先進国では水道インフラの老朽化が進んでいます。クボタは「食料・水・環境」は個別のテーマではなく、密接に結びつき影響し合う世界共通の課題であると捉えています。
そして2030年に向けた長期ビジョンの中で、クボタが目指す姿を「豊かな社会と自然の循環にコミットする “命を支えるプラットフォーマー”」 と定めました。その代表例が「クボタ スマートビレッジ構想」です。各事業領域で培ってきた技術やソリューションを連携させ、食料の生産から流通、水の浄化・再利用、廃棄物の処理とリサイクルを実現するプラットフォームの構築を目指すものです。
既に国内では、農業と水環境領域にまたがるソリューションを提供しています。河川、浄水場、上下水道、農業用水、産業排水といった水の循環をトータルに監視・診断・制御するIoTソリューション「KSIS(KUBOTA Smart Infrastructure System)」や、水田の給排水を遠隔で管理・制御できる圃場水管理システム「WATARAS(ワタラス)」も開発しました。
特定の事業領域でキャリア採用ニーズが高まっているというわけではなく、農業機械、建設機械、エンジン、水環境に至る幅広い部門の技術領域でエンジニアを求めています。いずれの事業部門でも、海外事業を支える人財が必要となっています。
つまり、海外市場でその製品がどのような使われ方をしているのか、米国・アジア・欧州の研究開発拠点と密に連携し、自らも現地に足を運んでリサーチを重ね、製品開発に活かせるような技術系の人財です。
次世代の農機である完全無人走行の電動トラクタの開発から、既存のラインアップの拡充・改良まで、幅広い開発ニーズがあります。もちろん開発だけではなく、ものづくりの現場を支える製造技術、生産管理、品質管理等にこれまでのご経験を活かして頂けます。
また、クボタの製品はいずれも過酷な環境で働くプロダクトですので、保守・メンテナンスを担うサービス技術者の需要も高くなっています。
いずれの技術者も、出身業界を問わず幅広く製造業での経験を活かして頂けると考えています。水及び環境領域に関しては、膜処理やゴミ溶融化等の技術が求められますので、比較的近しい業界の出身者がキャリア入社されることが多くなっています。
事務系職種では、海外の事業企画や営業職を担う人財を求めています。
コーポレート部門においても、海外事業展開に伴う法務や人事等の業務経験をお持ちの方にご活躍頂ける場が数多くあります。
クボタの農業ソリューションでは、データを活用する「精密農業」と、自動運転による「超省力化」がキーワードになっています。
精密農業とは、従来は紙の上でやっていた圃場の管理を、PCやスマホを通じて過去のデータを活用し、経験の浅い世代であってもベストな作業計画を立てられるよう支援するものです。代表的なソリューションに、営業・サービス支援システムの「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」があります。
また、自動運転機能を搭載した農業機械を段階的に進化させています。人が乗って自動運転できるトラクタ、人が現場に立ち会えば無人走行できるトラクタを既に実用化しています。現在は、遠隔操作により完全無人走行ができるトラクタの開発を鋭意推進中です。
農機の自動運転によって、圃場作りから田植えや移植、収穫に至る作業を大幅に省力化しています。更には、コンバイン等の収穫機に食味成分を測定するセンサを搭載し、タンパク質や水分のバラツキを把握。その後の適切な施肥設計等に連携させ、「おいしい作物をつくる」サポートも実現しています。
部門や職種を問わず、クボタでは「現場主義」を大切にしていて、最近はよく「On Your Side」という言い方をしています。先程も触れましたように、海外市場であっても、製品が使われる現場の状況やニーズを深く検討した上で、開発・生産・販売・サービスを推進しています。
それはクボタグループ内のDX推進においても同様です。研究開発から工場での製造、販売、物流、アフターサービスに至るクボタのバリューチェーン全体で、どのようにシステムが使われているのか。現場に足を運び、現場の状況を熟知した上でシステム開発・運用改善を進めています。
もちろんメーカーとして、どの部門でも人財のベーシックな資質としての誠実さ、粘り強さ、チームワーク等の適性は求めています。また、お客様が抱えている課題を正しく把握し、前例踏襲にこだわらずに課題解決にチャレンジする、期待値を超えてチャレンジする人であって欲しいと思います。
クボタの歴史は国内・海外ともにチャレンジの歴史でもあり、その意味で人財に求める行動特性は、やはりチャレンジする姿勢です。社内で「チャレンジ」という言葉を聞かない日はありません。
クボタの事業そのものが社会貢献である、という部分に集約されると思います。「食料・水・環境」の領域で世界が直面している課題の解決に取り組むことができ、その点が人財の働きがいに繋がっていると感じます。
自動車業界から転じたある製品開発エンジニアは、「前職では担当する領域が狭かったけれども、クボタでは多品種の製品を担当できる。しかも、任される範囲が広くて仕事が面白い」と話しています。
また、現場感があることも魅力になっていると思います。農業ソリューションであれば、生産者の方々の悩みや課題に寄り添った営農支援ができます。水環境ソリューションであれば、自然災害発生時のリスクを最小限に抑えられる等、自分の仕事を通じて現場に貢献する手応えを感じることができます。
クボタでは、今後も継続してグローバルな課題に価値あるソリューションを提供していくために、対話を重視した企業文化の醸成に取り組んでいます。具体的には、「組織の強化」「個の強化」「健康経営の推進」という3つの軸で、人財が価値を生み出すための戦略を策定・推進しています。
「組織の強化」とは、多様なバックグラウンドの人財が集まって、それぞれが力を合わせて新たな価値を創出できるようなDEI※の取り組みです。
「個の強化」とは、従業員一人ひとりが個性を活かして能力を最大限に発揮できるよう、チャレンジ意欲のある人の自律的なキャリア形成を支援していくこと。
「健康経営の推進」は、全ての従業員が心身共に健康で、働きがいを実感できるような環境を企業として整備していくことを指しています。
※DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)…多様な価値観・能力の人財が結集し、公正な制度の下に一体となり、新たな価値の創出を目指す組織開発の考え方を指します。
クボタが企業理念に定めている「スピリッツ(私たちの精神・姿勢)」の中に、「会社の繁栄と従業員の幸福を希(ねが)って今日を築き明日を拓(ひら)こう」という言葉があります。この言葉を踏まえて、人事部門として個々の従業員からの要望や悩みを聞いた際にどう対応すべきなのか、常によく考えなければならないと思っています。
私は入社以来、人事部門が長いのですが、以前、"ミニクボタ" とも称される大規模な枚方製造所の人事部門に配属された際、「1,000分の1と1分の1」という関係についてよく考えました。様々な相談ごとで人事部門を訪れた従業員は、工場の従業員千人のうちの一人かもしれません。ですがご本人にしてみれば、1分の1であり、人事担当者と一対一の関係で話をしています。このことを念頭に置いて個別に接してきました。
「制度だから」と割り切るのではなく、従業員一人ひとりのキャリア形成を考えたいですね。そのためにも、クボタを選んで下さる候補者の方々を含め、一人でも多くの従業員がやりたいことを叶えられるような風土づくり、制度づくりに引き続き取り組んでいきたいと考えています。
繰り返しますが、クボタ創業からの130年を超える歴史は、積み重ねてきたチャレンジの軌跡です。候補者のみなさんが前職で培った専門性や経験を十二分に活かして頂ける部門やチームが、クボタには数多くあります。様々な業界で磨いてこられた発想をベースに、ぜひクボタで新たなチャレンジをして頂ければと思います。
事業のグローバル展開が更に本格化する中で、お一人おひとりがまさに「For Earth, For Life」を体現することができます。日本だけでなく北米、アジア、欧州の各市場で、より多くのお客様に愛される "Kubota" のブランドづくりに力を貸して頂きたいです。