太田氏:三菱UFJ銀行のサービスラインの中で、ストラクチャードファイナンス(仕組み金融)プロダクトを扱う部署の一領域として活動していましたが、「サステナブル領域」は、全てのプロダクト・領域に関係してくるものでもあることから、2021年7月に、「サステナブルビジネス部」として独立。
コーポレートバンキング事業本部、法人・リテール事業本部、グローバルCIB本部*といった当行の顧客部門に横断的に関わりながら、お客さまのビジネスにおける環境・社会課題の解決を支援していくことをミッションとしています。
組織的には、国内外の規制動向の調査や新ビジネス創出を担う「企画開発グループ」、様々なサステナブルファイナンスやTCFDコンサル業務を担う「業務推進グループ」、お客さまの大規模プロジェクトの環境影響評価等を担う「環境社会リスク管理グループ」があります。
部全体は50名弱のメンバーで構成され、20代、30代が多く、約半数が女性メンバーとなっています。
*グローバルCIB本部…Global Corporate and Investment Bankingの略称で、グローバル大企業に商業銀行機能と証券機能を提供する部門
小野寺氏:私の所属する企画開発グループの役割には、まずグローバルベースのインテリジェンス機能があります。
サステナビリティ関連の最新の情報に基づき、産業セクターやお客さまごとにどのような情報開示が求められるのか、環境負荷を低減する上で有用な技術にはどのようなものがあるのか等を把握します。
また、必要に応じて規制などのルール作りへの提言を行うこともあります。
これらの活動を通して得た知見もフル活用し、広く環境社会課題を解決するための新たなサービスをお客さまに提供します。
例えば、ベンチャー企業ゼロボード社と提携し、お客さま企業が排出している二酸化炭素量を「見える化」するクラウドサービス提供することもありますし、お客さまのニーズや課題に合わせて事業への出資も行います。
太田氏:企画開発グループがお客さまのビジネスの少し上流からアプローチする業務だとすると、より直接的にビジネスに伴走していくのが私たち業務推進グループです。
業務の柱の一つは、三菱UFJ銀行の既存の金融の仕組みをサステナブルビジネスのためのファイナンスとして色付けし、提供すること。
そしてもう一つが、気候変動がもたらす企業リスクに関する情報開示のアドバイス、いわゆるTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)コンサルティングになります。
様々な社会課題の解決のための投資や気候変動に対する国際基金等も扱っています。
環境社会リスク管理グループには、事業やプロジェクトの環境影響評価を始めとして、人権の観点からお客さまが進める案件をレビューする等の審査機能があり、これらの業務はもともと銀行がサステナブル領域で提供していたサービスの発展形でもあります。
小野寺氏:サステナビリティ関連の情報開示ルールは欧州発のものも多く、日々改善されていくため、常にウォッチしていなければなりません。
最新動向をキャッチした上で、知見の絶えざるアップデートが必要になる仕事だと言えます。
太田氏:正直なところ、グローバルのあらゆる最新動向をカバーして深く理解するのはなかなか困難です。
情報開示ルール一つをとっても、欧州、米国、日本と各地域・国で開示基準やルールが定められ、しかも常に更新されています。
サステナブルビジネス部には、どんなことにも答えられる生き字引的な人材も在籍していますが、人一倍努力されています。
小野寺氏:お客さまの業界やビジネスの特性と深く関連したサステナビリティ対応については、お客さまのほうが詳しい側面もあります。
私たちの存在意義として、そこにファイナンスの観点からどのような付加価値が出せるのかが問われることになります。
太田氏:企業経営・戦略について、財務・ファイナンス観点でお客さまと対話することは、本来私たち銀行が強みとする領域であり、当行の法人顧客部門には、お客さまの業界やビジネスに精通している営業担当が数多く在籍しています。
今は、そこに気候変動や人的資本などに関連する、所謂非財務情報を扱うことが増え、求められる知見が広範囲に及んでいる難しさもあります。
太田氏:一つには、メインバンクとして中長期的にお客さま理解を深めながら様々な相談に乗り、対話を通じてタイムリーな情報提供を重ねてきた信頼関係――エンゲージメント――があることだと思います。
また、2021年に公表した「MUFGカーボンニュートラル宣言」に沿って、2022年には日本企業のカーボンニュートラルへの移行の取り組みを欧米向けに発信する『MUFGトランジション白書』を英文で作成・発表。
2050年までに投融資ポートフォリオにおける温室効果ガス排出「実質ゼロ」を志す国際的な銀行間の取り組みNZBA(Net-Zero Banking Alliance)にも参画しています。
一連の継続的な取り組みが評価され、お客さまからお声掛けをいただくことが増えています。
小野寺氏:社員のアスピレーション(志)を評価頂いている部分もあるのではないでしょうか。
白書づくりも、サステナビリティ関連の国際的なルールメイキングに率先して参加することも、広く社会への貢献を志す取り組みであり、そこから得られる情報や視点が、お客さまの経営課題を解決する上で有効であるとのお声も頂いています。
こうしたことが、ファイナンス条件だけではなく、複数の金融機関の中から当行との協働をお選びいただく際の決定打となるケースもあります。
太田氏:高い視座でサステナブルな社会のあるべき姿を考えていても、決してお高くとまった銀行ではないんです。
温室効果ガスの多排出セクターだけでなく、幅広い業界の中堅中小企業まで、多岐にわたるサステナビリティ経営の課題解決に応えていく金融機関であることを強調したいですね。
太田氏:銀行員は、通常、お客さまの財務部門と仕事をさせていただく機会が多いですが、気候変動等をテーマとした事業戦略やビジネスのあり方について議論させていただく場合は、経営企画部門や経営陣の方々と議論させていただく機会も増えています。
その意味では、資金調達という個別トピックだけでなく、「お客さまの志す姿」をお客さまと共に考え、金融機関としてご支援できることは何か、といったことを考えながら対話を進めることになります。
小野寺氏:お客さま自身が「サステナビリティ経営をどのように進めればいいのか」検討を始める段階から伴走しますから、自ずとビジネスチャンスが生まれます。
それぞれの事業分野で持続可能な成長のカギとなる技術や、非財務情報の開示に関する国際動向等、お客さまが興味を示される情報を提示して、それを材料にお客さまとディスカッションを重ねていく形になります。
幅広い領域の情報や知見を掛け合わせた議論が必要なので、企画開発グループと業務推進グループがタッグを組み、一緒にお客さまを訪問することが増えています。
小野寺氏:サステナビリティ関連の取り組みは変化の途上にあり、非常に幅広い分野の知識を学びつつ、常に世界の最新動向に追いつく努力が必要になります。
それに加えて、インプットした知識をお客さまとの対話に活かすこと……例えば温室効果ガス多排出産業であるエネルギー分野の大手企業の、その分野のプロフェッショナルや経営陣と対話できる能力も不可欠になってきます。
ここでいう対話力とは、難しいことを分かりやすく説明する力でもあり、しかも相手に共感を持っていただけるように伝えなければなりません。
太田氏:常に新しい情報に触れながら業務に取り組める環境はとても刺激的です。
幸いMUFGの国内外のネットワークを活用すれば、情報取得に困ることは少なく、むしろ官民を横断して豊富に取得できる最新情報を消化し活用できるかが重要。
様々な情報を整理して、サステナビリティという視点でそれらの情報を繋ぎ、30年先、50年先に向けてストーリーを描き、お客さまと伴走していく。
お客さまと共に未来へのストーリーを練り上げていく過程に、大きなやりがいを覚えています。
太田氏:サステナビリティに関連する多様な情報を蓄積してそこからインプリケーション(表面からは見えない潜在的な意味)を抽出し、ストーリーを作れること。
そして、お客さまに対してそのストーリーを分かりやすく言語化し説明できるコミュニケーション力を備えた人、という人物像になります。
自分から最新の情報を取りにいかなければならない仕事ですので、まずはサステナブルという分野が好きであり、知的好奇心が旺盛で常に新しい知識をインプットすることを楽しめる人がいいでしょう。
小野寺氏:それを前提条件として、自分が得た知識を積極的に発信し、お客さまと繰り返し対話を重ねられる行動力を備えた人物であってほしいですね。
社内でも、チームメンバーや上司、他部やグループ会社まで、必要に応じて関係者を巻き込みながら動かしていく。このような積極性のある人材には、幅広い活躍の機会があります。
また、今後はグローバル市場のお客さまとの協働の可能性も高まることから、語学力を備えたコミュニケーション力も強みとなります。
太田氏:私たちの部では、お客さまとのエンゲージメントやソリューション提供などのサポートを行うことが主要な役割となります。
ファイナンスを組成する業務そのものは当部のスコープにはなっていません。
このためキャリア入社の皆さんに銀行や金融機関での勤務経験がなくとも入社にあたってのハードルにはなりません。
ただし今後何年かすると、お客さまのビジネスの成長とともに新たな設備投資が始まり、ファイナンスが必要になりますし、もちろん金融機関での業務となりますので、事業のキャッシュフローなどが理解できるベーシックな金融知識は必要になりますので、入社後にキャッチアップしていただく必要はあるでしょう。
小野寺氏:業界を問わず大企業から中堅中小企業、グローバル企業を含めて、サステナビリティ対応は経営課題として上位にあります。
従って前職で何らかの調査業務に携わっていた方や、ビジネスコンサルティングの経験のある方にも、経験やノウハウを活かしてご活躍いただけるのではないかと思っています。
太田氏:重工業系メーカーの技術職出身の30代前半の人材は、知的好奇心が旺盛で、幅広い領域の情報リサーチができ、その情報をもとに質の高いアウトプットを出すことができます。
サステナブル対応が急務であるエネルギー業界等のコア技術が理解でき、お客さまと対等に会話できることを強みとして複数の案件で活躍しています。
小野寺氏:もともと国際機関にいてビジネスコンサルの経験もある人材は、前職の経験を活かしつつ、当行でファイナンスという新たな武器も身につけて経営者によりよいアドバイスをできる点に魅力を感じると語っています。
他にも、研究者としてのバックグラウンドのある人材も、お客さまのビジネスを支援する仕事からは、世の中を直接的に変える張り合いを感じることができる点に研究とはまた違うやりがいを見出しているようです。
太田氏:スペシャリティの高い人材の例では、政府開発援助の実施機関の出身者が在籍しています。
開発途上国への資金援助や技術協力に携わっていたので、日本語以外に2カ国語でコミュニケーションができ、ファイナンスの仕組みにも明るい人物です。
また、国際的なエネルギー機関出身で、1997年に京都議定書が採択された頃からサステナビリティ領域で専門性を磨いてきたプロフェッショナル人材も在籍しています。
また、カーボンニュートラルへの段階的な移行に関する銀行間の国際的なイニシアティブでの議論をリードする等、この領域で第一人者として活躍を続けている方もいらっしゃいます。
小野寺氏:今の部門に来るまで、私は国内及びアジアやヨーロッパのプロジェクトファイナンスに20年近く携わりインフラ整備を始めとする大規模プロジェクトへの貸出や資金調達のアドバイザリーを経験しました。
これを通して、多様なビジネスモデルを理解して収益機会や事業リスクを精査するノウハウや、官民を横断して立場の異なる多くの関係者と関わる中で、コーディネーション能力や先を読む力が培われました。
これらの能力は、お客さまのサステナブルビジネスに伴走する今の業務においても様々な局面で役立っていると感じています。
太田氏:私は就職活動で当行のプロジェクトファイナンスの可能性を知り、「自分がやりたかったのはこれだ!」と思って入行しましたので、8割方小野寺さんと同じ思いがあります。
数多くの関係者の意向をよく理解して案件をまとめていく「対話力」は今も非常に役立っていますし、経済産業省や金融庁等の中央省庁とのコミュニケーションや情報収集も心理的ハードルを感じることなくこなせます。
会計士や弁護士、税理士といったスペシャリストと目的意識を持って協働するスタンスも身に付いていると思います。
お客さまのビジネスを支援する上では、あらかじめ将来起こり得るリスクシナリオを立て、プロジェクト全体を意識しながら先回りした対応を心掛ける、こういった経験に大いに助けられています。
太田氏:世の中の誰もが「サステナブル」「サステナブル」と声高に叫んでいた時期を経て、いよいよ現実味のある方法に基づいた企業活動が動き始める中、ファイナンスを含むビジネスが着実に推進されていくステージを迎えています。
お客さまの持続可能なビジネスに資する新しいサービスの創出に関わっていける喜びは大きいです。
今後は脱炭素に加えて、人的資本ヘの投資や自然環境を支える生物多様性ヘの配慮等も、ますます重要なテーマとなってきます。
しかも当行は、大企業から中堅中小企業まで何十万社ものお客さまを抱え、官民を横断するMUFGのグローバルネットワークを活かし、ビジネスのフィールドは国内だけでなく海外にも広がっています。
これから何年かすれば、自分たちの新しい取り組みが世の中に影響を及ぼすようなシーンに居合わせることもできるでしょう。
このような業務をエキサイティングだと思える人には、魅力とやりがいに満ちた新しいキャリアに挑戦することができるはずです。
小野寺氏:個人的には、預金を預けていただいているお客さまからお金を預かって企業のビジネスに投資する間接金融のプレーヤーとして、お客さまとの対話――エンゲージメントを大切にしたいですね。
その上で1社でも多くの企業のカーボンニュートラルへの道程にしっかり伴走していきたいと考えています。
また、サステナビリティ領域は三菱UFJ銀行の注力分野の一つであり、経営陣と私たちの部との距離も近いです。
このため全く新しいことに取り組もうとする場合にも、スピード感を持って軽やかに取り組めるような当行自身の変化も感じています。
多くの方々にこの仕事に魅力を感じていただき、ご自身のバックグラウンドを活かしながら活躍していただければと願っています。