小倉氏:当社の歴史を振り返ると、岩井産業と日商が合併し、1968年に日商岩井株式会社が発足しました。
その後、日商岩井とニチメン株式会社が合併し、2004年に双日株式会社が誕生しています。
私は1992年に日商岩井に入社したのですが、合併直前は日商岩井もニチメンも財務的に厳しい状況にありました。このため合併後の統合というプロセスでは、生き残りを懸けて力を合わせて協力してきた感覚が強いです。
言い換えると複数のDNAが合体して融和しながら成長してきた会社ということですね。
キャリア入社の方々の視点に立てば、異なるDNAを持った人材を受け入れる下地があり、多様性を強みとする風土が根付いていると思っています。
小倉氏:もともとボトムアップ、ミドルアップを大切にする商社であり、現場の社員の意見が尊重される風通しの良い企業文化は受け継がれて生きています。
ただし、双日のボトムアップとは、単にやりたいことがやれるという意味ではありません。
双日として再スタートしてから持ち直していた財務状況が、2008年のリーマンショックの影響で少し苦しい局面を迎えました。そして、様々な苦難を乗り越えていく過程で「この事業を立ち上げるには、どのようなリスクがあり、どのような価値があるのか」をよりしっかり議論し、見極め、新たな事業投資等を実行するようになったのです。
その結果、一人ひとりの社員が自ら時代の先を読み、リスクを精査して色々な事業のアイデアを提案するスタイルに変化してきています。
私自身の経験からも、社員が自ら事業を考え抜いた上で「自分はこう動いていきたい」との意思を示せば、フェアに聞く耳を持ち、応援してくれる組織であると確信しています。
小倉氏:財務規律への高い意識が浸透し財務基盤の改善が出来た事は、佐藤 洋二前社長(さとう ようじ/在任:2012~2017年)のリーダーシップが大きく影響したと感じています。
財務畑出身の佐藤前社長が双日の堅固な財務基盤を整え、藤本 昌義現社長(ふじもと まさよし/在任:2017~2024年)が、営業出身である強みを活かし、収益拡大に向けて全組織にドライブをかけ、リーダーシップを発揮してきたと理解しています。
そして2024年4月からは、55歳の植村 幸祐(うえむら こうすけ)が次期社長に就任します。その2024年4月から始まる次期中期経営計画では、更なる収益規模拡大を目指す計画です。
そのためには、これまでの事業の延長線上の成長だけではなく、マーケットや顧客のニーズを先読みして新領域での事業創出等に積極的にチャレンジしていく必要があります。
次期中計の最終年度である2026年度に目指す姿を実現するために、バックキャストでやるべきことを各事業部で明確化し、目標実現のストーリーを示し、事業創造に取り組んでいかなければならないと考えています。
小倉氏:経営全体の流れとして「人的資本経営」の重要性が増しています。人事部としても制度変更を含めて多くの取り組みに着手しています。
中でも力を入れているのは、ミドルマネジメントのリーダーシップ向上に向けた取り組みです。
様々な調査結果を分析すると、組織のメンバーに対する影響力が最も大きいのは課長職であることが分かりました。
そこで、課長の「対話力」を上げていくことに重点を置いたマネジメント研修を始めとして、通年であらゆる角度から取り組みを重ねています。
課長を務めている社員は皆さん優秀であり、その分野で実績もあるため、自分が先頭に立ってビジネスを切り拓いていく傾向があります。
結果、お客様やパートナーから信頼を得やすくなり、課のメンバーもロールモデルとしての課長の仕事ぶりを学ぶことができます。
しかし、このマネジメントスタイルでは、課長の肩幅以上の仕事、課長の成長以上のチームの成長はできません。チームの全メンバーの実力を引き上げていく方が、組織として提供する価値を高められます。
また、優れた社員であればあるほど、ビジネスのノウハウが属人化し易い懸念もあります。
特定の社員に業務負荷が集中するのを避け、一人の眼だけではなく複眼的に事業を見つめ、あらゆるチャンスや改善の機会を見逃さず、仕事の質を向上させていく為にはチームで仕事を進める事が大切だと考えており、それこそが環境変化の激しい時代に、双日の成長機会を極大化する有効な方法だと考えています。
小倉氏:近年、新卒・中途を含めて女性総合職の採用数を増やしてきましたので、30歳前後の社員の女性比率はそれなりに高まっています。
しかし、その上の層はまだまだ少ないので、最終的な目標として、2030年代には双日の男性社員と女性社員は同数であるべきだと思っています。
最終的なゴールを実現するためにも、出産や育児等のライフイベントを控えた女性社員には20代のうちから「キャリアの早回し」を実施することが重要になります。
そこで管理職手前の女性総合職の海外・国内出向経験割合を2023年度末に50%にする目標を設定し、積極的な派遣を促しています。
小倉氏:事業部門やコーポレート部門から、人事部は常に人材補強の要請を受けている状態です。
新領域への挑戦という意味では、事業本部やコーポレート部門に新たな事業投資を任せられる専門性を備えたプロフェッショナル人材が必要です。
また、ビジネスモデルがITと一体化する現在では、様々な技術や経験を持つDX人材にも活躍頂けるフィールドが急速に拡大しています。
現在、双日には7つの事業本部があります。
(1) 自動車
(2) 航空・社会インフラ
(3) エネルギー・ヘルスケア
(4) 金属・資源・リサイクル
(5) 化学
(6) 生活産業・アグリビジネス
(7) リテール・コンシューマーサービス
事業領域の広さから、キャリア採用の人材の出身業界は極めて多岐に亘っています。事業分野と何らかの接点のある様々なメーカー出身の方から、金融機関やコンサルティング業界出身の方、会計監査法人出身の財務のプロフェッショナルもいます。
各配属先が求める専門性は様々ですが、先ほどお話ししましたように、「リスクを見極めながら自分のやりたいことを事業として形にしていける人」が向いています。
指示待ちをするのではなく、自律的に仕事に取り組むことができ、自分が手掛けたい事業について社内で発信し、自ら行動してそれを実現できるような方が双日の文化にフィットし易いです。
小倉氏:キャリア入社して1年未満の人材に、当社が出資している海外の事業会社のCEOをお任せしたことがあります。
この社員は、業界のプロとして「海外の事業会社を経営したい」という強い意思と向上心を持つ、とても熱心な40代の方です。
彼は海外で様々な苦労と向き合うことになったのですが、現地や東京で共に働く双日の若手社員の優れたロールモデルとしての役割を担い、現在では次の新しいミッションに取り組んでいます。
厳しい時代を乗り越え、双日は今勝ち残りのステージに入っています。新しい挑戦がし易い環境が整い、個の取り組みを後押しする風土も醸成されています。個人があらゆることにチャレンジしながら、自分のキャリアを積み上げていける会社です。
これまでの経験を活かして、双日で新しい事業の創造に挑戦したいといった想いがある方は、ぜひ一度、お考えを本音で聞かせて頂きたいと思っています。
当社の面談や面接ではあまりかしこまらずに、どうぞありのままの想いをぶつけて下さい。
率直な対話を通じてビジネスに対する皆様の価値観を知る機会が得られればと考えています。
板倉氏:双日が誕生した翌年の2005年に、私は第二新卒として中途入社しています。
法学部出身で弁護士を目指していたのですが、旧司法試験は難関でなかなか結果が出ませんでした。これ以上勉強に年月を費やすよりも、「自分は人と接するのが好きなのだから、営業職をやろう!」と決意。
総合商社の事業内容については深く知らないまま応募したのがきっかけです。
そんな私でしたが、応接室ではなく執務スペースのすぐ脇の会議室で面接を受けた際、オープンで自由な双日の空気感が「自分に合う!」と直感しました。皆さん自然体で自分らしく仕事をしているような印象があり、「ここならありのままの素の自分で仕事ができそうだ」と思えたのです。
面接の過程で「営業職ではなく法務で力を貸して頂けませんか」と提案され、最初は迷いました。ところが法務部の先輩社員と話してみると、双日の法務は事業部のメンバーと対話しながら新しい事業を作り上げていく仕事だと教えられました。
事業と共に動き、解を模索する仕事であれば、「人と話しながら仕事を作っていきたい」という自分の想いは満たされます。
すぐに法務部への配属を承諾して入社を決めました。
板倉氏:入社して最初の10年間は、合併した2社の抱える不良資産の処理等、双日がこれから収益を創造していくための基盤を整えることがメインの業務でした。
そして次の10年間には、積極的に新しい事業へ投資するようになり、事業会社のM&Aを始めとする前向きな投資に関連する法務業務が急増しています。
投資先も再生可能エネルギー、スマートエネルギー等の事業分野やリーテールDXといった従来の流通事業に付加価値を付けた事業分野等多岐に亘っております。
また、地域としては東南アジアの事業投資が増えており、経営権を握るマジョリティー投資で双日の事業ポートフォリオを強化する傾向が顕著になっています。
その結果、PMI(買収後の統合)や 更には “ ポスト ” PMIといった視点で、より長期間に亘ってコンプライアンスを始めとする法務機能を提供する必要が生じています。
こうした双日の事業構造の変化に伴う法務業務に加えて、双日では、法務部において商社ビジネスに伴う貿易関連のコンプライアンス業務もカバーしており、法務部として提供すべき機能を改めて見直しているところです。
板倉氏:法務部には7つの課があり、全体で75名ほどの組織です。
一般の取引に加え、M&Aや事業投資を扱う課が4つ、輸出と輸入に伴う法務を担当する課が1つずつ、そしてコンプライアンスを担当する課で構成されています。
また、リーガルオペレーション(法務部の組織の最善のあり方)を考える少人数の企画ユニットが1つあり、私がリーダーを務めています。
M&Aや事業投資を扱う4つの課では、当該業務を法務の視点でサポートされた経験をお持ちの方で、ドキュメンテーション、弁護士等とのやり取りを英語で行っていただく必要があるため、ビジネスレベルの英語力があればベストですが、少なくとも英語でのコミュニケーションに苦手意識のない方を求めています。
M&A等の契約では、多くの条件が揺れ動く中で、ビジネスへの興味を持ち、案件の内容・特性を積極的に理解し、法務部内にとどまらず社内の各部署と積極的にコンタクトを取り、自分がリードして解決に導くという、プロジェクトマネージャー的な立ち位置で行動できるような方が望ましいと言えます。
輸出業務に関しては、安全保障貿易や経済制裁の知見が求められます。
輸入業務では、通関士の資格保有者で適正貿易手続履行・適正関税納付に精通されている方は即戦力として活躍して頂けるでしょう。
前提として、輸出・輸入ともに営業部隊における物流の基礎を理解されていることは必須になります。
コンプライアンス業務に関しては、一般的な企業コンプライアンス業務(ホットラインを始めとするコンプライアンス調査等)に関する経験に加え、個人情報保護法、独占禁止法等の法令に関する知識・経験等が求められてきます。
いずれの課も時代の変化の中で提供すべき法務機能を見つめ直しています。既成概念に囚われずに柔軟な発想・新しいアイデアを出しながら、対話を厭わず一緒に行動してもらえるような方を求めています。
板倉氏:先ほども触れましたが、事業部と一緒になって案件の最初から最後まで関われることは楽しいです。
双日では新規事業の企画段階から投資の実行、そしてPMIまで、中長期的なスタンスで関わっていく仕事が多くなります。
一連のプロジェクトに主要メンバーとして参加し、時には事業部をリードしながら議論を重ね、最適なソリューションを導いたり、各事業部のメンバーが実現したいことのサポートができます。
しかも双日の事業はバリエーションが豊富なので、飽きることがありません。
時代の変化も著しく、法令や規制が目まぐるしく変わる中で思いもよらない問題が発生します。そこでは昔の成功体験はあまり役に立ちませんから、柔軟な発想で国際社会が双日に求めていることを敏感に受け止め、よく考えて一つひとつの意思決定を下していかなければなりません。
私はこの仕事の醍醐味をそこに感じながら、楽しんでいる最中です。
板倉氏:今も感謝しているのは、キャリアを通じて自分が挑戦したいことや達成したい夢を、双日でいずれも実現できてきていることです。
本気で強く思っていると、いつの間にか道ができるのですね。意志があるところには道ができる。ある意味では、私が頑張ってキャリアの道筋を作れば、後に続く後輩が歩き易くなるのではと思いながら格闘してきた20年であったと確信します。
日本では一度諦めた弁護士資格でしたが、入社3年目に社費で米国のロースクールに留学。既に結婚していましたが単身渡米し、卒業後にニューヨーク州弁護士の資格を取得することができました。
更に2015年から2018年まで、自ら願い出て双日のロンドンオフィスと現地の大手法律事務所で勤務しました。この時は息子が生まれた直後で、別の企業から英国に赴任していた夫と3人でロンドン生活を送りました。
ロンドンでは当時、ヨーロッパの個人情報保護法にあたるGDPR* というレギュレーションの施行に向けて準備が進められていました。帰国後に日本でも個人情報保護法が改正され、情報データ保護に関する欧州の進んだマインドに触れていたことが役立ちました。
また、ロンドンの法律事務所では、一弁護士として入札等のプロジェクト業務を任せて貰えるまでの経験をすることができ、法律事務所内でいかに仕事を獲得し、自分に任せて貰えるかといった貴重な経験もできました。
* GDPR:General Data Protection Regulationの略。「EU一般データ保護規則」と訳される。
板倉氏:事業部と共に作り上げていく仕事ですから、やはり事業部の営業メンバーの中に深く入り込み、彼らの立場で考えて法務上のアドバイスができる人が早期に活躍しています。
化学品メーカーの法務部門に16年ほど勤務され、日本に所在する海外大学のロースクールに留学経験のある女性が、早くも入社1年ほどで大活躍されている例があります。
彼女は前職ではトレーディングの法務がメインでM&A等はさほど経験してはいませんでしたが、短期間にキャッチアップしています。
また、弁護士事務所出身で外務省への出向も含め、育休期間を除いてトータルで6年ほどの経験を持つ女性も頑張っています。
現在では事業投資に関わりながら中長期的なスタンスで双日の収益創造に貢献できる仕事にやりがいを見出し、法務の立場からプロジェクトをマネージするチームリーダーとしてメンバーを引っ張っています。
板倉氏:キャリア入社の人材は、前職の実務経験を踏まえて親和性の高い事業本部の案件にアサインしています。その時必ず経験年数の異なる社員とのチーミング(Teaming)を行い、先輩社員から学びやすい環境を整えてOJTを通じた育成を心掛けています。
また、本人の希望に応じて社外の研修やセミナー等も広範囲に受講できます。海外留学はもちろん、双日の海外拠点や国内の子会社に出向する形で、業務を通じてスキルアップする機会を用意しています。
メンバーが学びたいスキルや挑戦してみたい業務を、可能な限り経験できる環境づくりに組織として取り組んできました。
また、法務部のイントラネット「LEAGLE(リーグル)」には、業務で使える実践的なナレッジを集約して掲載しています。
「法務部スタートアップガイドブック」「投資フローマニュアル」「稟議チェックシート」等の資料は、法務部のメンバーはいつでも確認・ダウンロードできます。
これら全ての資料は、経験の浅いメンバーであっても一通りの実務をこなせること、また、キャリア入社の方がスムーズに双日の業務に馴染むことができることを目的として、情報を分かりやすく漏れの無い様に整理しています。
更に、メンバーに最も近い管理職である課長が、対話を通じて一人ひとりの志向や能力、課題を把握し、頻度の高いフィードバックと適切なアドバイスによって個の成長を後押しするマネジメント改革にも取り組んでいます。
板倉氏:私は法務部の皆と一緒に、強い専門性を持ち、突破力、胆力に優れ、かつ、楽しさとしなやかな優しさを持つ組織を作っていきたいと思っています。
これは、私自身が1年間法務部長を務めて心に思い描くようになった組織像です。
法務部である以上、自分達が誇りに思えるような専門性を持ち強くあってほしい。そして、自分のキャリアアップ、能力向上のためにも時には厳しい状況でも踏ん張って学び取る強さも持ってほしい。ただ、そのような中でも、成長や新しい経験を楽しみ、また、お互いを思いやって支え合う、そういう優しさを持ってほしいと思っています。
そして、私は、そのような組織の中で「楽しく、パッションを持って仕事をしよう。自分らしくを大切に」という自らが掲げている組織のポリシーを実現することができると信じています。
業界を問わず企業の法務部で働いた経験があり、総合商社の事業に興味のある方とお会いする機会があればと思っています。
法務を通じてやりたいことがあり、実現したい夢をお持ちの方と、共に仕事ができます日を楽しみにしています。