出版社が運営する財団法人 経理・人事スタッフ
銀座にある画廊 事務職員
久保田 麻実 氏 29歳 / 女性
学歴:慶應義塾大学 文学部 人文社会学科 美学美術史学専攻 卒
DTP検定2種
給与計算実務能力検定2級
Microsoft Excel Specialist 2013
私は物心ついた頃から、絵を描いたり、手芸をしたり、細かいものを作るのが大好きな子供でしたので、高校生の頃は美術大学に行きたいと強く思っていました。しかし、親の反対などの様々な事情により美術大学進学の夢は断念することにしました。
結局、文学部の美学美術史専攻に進学し、芸術を学問として研究する道に進みました。大学では主に西洋美術史について研究し、それなりに楽しくはありましたが、本来やりたかったことは制作・創作活動だったという気持ちが消えることはありませんでした。そのような消化し切れない想いを抱えながら新卒の就職活動に突入し、一旦は周りと同じように一般企業に就職しようと就職活動をしました。
しかし、これまで一貫して芸術を志向してきたにも関わらず、芸術とは関係がない一般企業に入社して自分にとって一体何の意味があるだろうか、この先流されるように人生を歩んでいっても、より後悔が大きくなるだけではないかと思い、就職活動を止めて自分が何をしたいのか考えることにしました。
その時に、ちょうど姉夫婦が自営業を始めることになり、仕事が決まるまでの間、手伝いをすることにしました。
しばらく姉夫婦のお店 (カフェ) で手伝いをした後、美術業界で働いてみようと思い、ちょうど見つけた画廊の求人に応募し、約3年間就業しました。
就職した画廊は、明治時代以降の日本画を中心として、西洋画や彫刻、お茶道具などの幅広い美術品を扱っており、社長と私、2人だけの小さな会社にしては、たくさんの美術品を間近で扱うことができました。
実務の面では、事務は私1人しかおりませんでしたので、経理、総務などデスクワークの仕事から接客まで幅広く1人で担当しました。事務で分からないことがあっても社内に質問できる人はいないので、自分で何でも調べましたし、お客様や同業他社の方への接客においても、年齢が私の倍以上の方々と自分1人でお話しなければならないことも多くありました。
このような環境のおかげで、人任せにせず責任を持って仕事をするという姿勢が育ったことは自分にとって大きな成長となりました。また、この3年間の経験により、自分はこの先どんな職場でもやっていけるだろうという自信も持てましたし、これが自分の武器であると思えるまでになりました。
ただ、いくら自分で入ろうと決めて入った美術業界とはいえ、次第に不満が溜まっていきました (仕事で頼れる人がいないこと、美術業界の低迷による将来性への不安、仕事内容がルーティーン化してきたこと、給料が仕事量に対して低過ぎること、古美術商の世界は完全な年功序列で仕事の面においては女性の扱いも低く、主体的に美術に関わるには限界があるといったことなど )。
就職して2年目が過ぎた頃から現状に対して様々な不満が募り、私は転職を意識し始めました。
業界も職種も何がいいのか分からず、なかなか転職に踏み切れずにいましたが、ある時、私が感じている不満の根源は他人にあるのではなく、全ては自分が芸術を志向して選択してきた結果なのだと気が付きました。
私をこれだけ迷わせ、苦しめるのであれば、芸術とはキッパリお別れをして、自分を解放してあげようと思いました。高校時代に美術大学への進学を断念したことが大きな心残りで、その後悔を引きずり、芸術を過去の自分のために乗り越えなければならないもののように思い込んでいました。最初は純粋に好きだったはずなのに、私はいつからか芸術に執着していたのです。
これを自覚した時、転職を決意し、会社を辞めました。新しい世界に目を向けるために、全く芸術とは関係のない業界で働こうと思いました。
転職活動のプランをほとんど立てないまま、取り敢えず転職サイトに履歴書と職務経歴書を登録したところ、転職カウンセラーの杉本さんからご連絡を頂きました。
他の転職エージェントが同じような内容のメールを送ってくる中、杉本さんはオリジナルな文面でとても印象に残ったので、実際に会ってみようと心が動きました。杉本さんに会ってみると、とても話が弾んで、今まで自分が気付かなかったことを指摘してくださいました。他社の転職エージェントにもお会いしましたが、杉本さんはとてもカウンセリングや傾聴に長けている方だと思います。
転職活動においては、業界は全く拘りませんでしたが、職種は経理で探そうと決めていました。経理は、芸術とは対照的で、現実的で答えがあるので、仕事をしてみて面白いと思うようになっており、また、経理であれば、この先にキャリアを積んでいくにあたり年齢もそこまでネックにならないという杉本さんのアドバイスもあり、今後実務の面では経理で経験を積んでいこうと思いました。
杉本さんからは最初に1社紹介して頂いたのですが、そこを含めて書類は10社ほど応募し、面接の予定まで組んで頂けた会社は5社、そのうち3社の面接を実際に受け、3社とも内定を頂きました。
転職活動中、おそらく計200社くらいの求人には目を通したと思うのですが、その中で、杉本さんに紹介して頂いた会社が1番印象に残った会社でした。結局その会社に就職することになったのですから、不思議な縁だと思っています。
私が転職した会社の面接の話をしますと、私はとても面接が苦手なので、一次面接の前、杉本さんにどんなことを用意したらいいでしょうかと電話で尋ねたら、「質問を20個くらい用意して行った方がよい、それが相手にも熱意として伝わると思います。」 とアドバイスを頂きました。
実際、一次面接の約半分にあたる30分間は質疑応答の時間だったので、杉本さんからのアドバイスがとても役に立ちました。
また、面接時に面接官へ 「熱意」 を伝えたことが私の大きな勝因だったかと思います。
自分の直属の上司になる方が面接官だったのですが、最終面接で、私はその方に 「一次面接でお会いした時から○○さんが上司だったらいいな、と思っていました。一緒に働きたいです。」 と素直に伝えました。
その時は 「ありがとうございます。」 と言われただけでしたが、先日一緒に飲みに行く機会があり、「あなたが一緒に働きたいと言ってくれて嬉しかった。」 と言って頂きました。
面接の時に、飾らず素直に熱意を伝えたのが良かったのかなと思います。
話は逸れますが、前の会社で、毎日私に電話をかけてくださるお客様がいました。その方によく 「人生は運と縁」 と言われていましたが、まさに今回の転職活動は 「運と縁」 に尽きるのかなと思っています。
新しい会社では、管理系の実務を行う社員は3人しかおりませんので、経理を中心に業務の幅を限定せず、総務の仕事なども手伝っています。
前の会社で、何でも1人でやってきたことがとても活きていますし、今後は会社の所有する美術品の管理の仕事もやらせて頂く予定なので、芸術を学んできたことも活かすことができることとなりました。
会社の所有している美術品は、画廊に勤めていた時に扱っていた絵画と同じジャンルのものが多くあります。また、今後、会社が美術館を建てる予定です。この大仕事に携われることに不安もありますが大いに喜びを感じています。
人生、何かを追い求めていれば、繋がるところに繋がるものだなと実感しています。
一度はきっぱりと諦めた芸術関係の仕事ですが、新しい会社では画廊に勤めていた時以上に主体的に芸術に携わらなければなりませんし、今まで以上に芸術について勉強しなければならないと覚悟しているところです。一度、芸術に対しての執着を捨てたからこそ、新しい出会いを呼び込めたのかなと思います。
実務では経理でキャリアアップを目指しつつ、芸術に携わることは運命だと思って向かい合っていきたいと思っています。
10代の頃からなかなか自分の思うように人生が進まず紆余曲折しましたが、ようやく転職した新しい会社で自分を活かしていける居場所を見つけることができたと思っています。
杉本さんが私に声をかけてくださらなければ、このような素晴らしいご縁を頂けることもなかったと思います。
今後、自分の人生を振り返ることがあれば、杉本さんが一番の転機をくださった恩人になるだろうなと思っています。とても感謝しています。
このご縁を無駄にしないように、今後も学ぶことを忘れず、自分を磨き続けていきたいです。