出版社の編集者から、WEBの世界へ

出版社の編集者から、WEBの世界へ

No.208
  • 現職

    JASDAQ上場 検索サイト運営会社
    ウェブマガジンの企画・編集職

  • 前職

    教育関係出版社 編集担当
    → 旅行関係出版社 編集担当

相沢 武 氏 30歳 / 男性

学歴:慶応大学 商学部卒

8月号を下版(出版物を印刷工程にまわすこと)した7月下旬、勤め始めてちょうど2ヶ月になろうという会社で編集部員全員を集めて会議が開かれました。私が編集を担当していたフリーマガジンが、つい先日の会議で月刊から隔月刊に変更されてすぐのことだったので、「また何か変更があるのか」と不安な気持ちを抱えながら会議に臨みました。案の定、悪い予想が的中しました。会社からの通達事項は「9月末を以って出版事業から撤退、すなわち編集部の閉部を決めた」という内容でした。つい数ヶ月前までエネルギーを使う転職活動に忙殺され、ようやく会社にも慣れてきたのに、また転職活動をしなければならないと途方に暮れました。
私はこれまで旅行関係の出版社2社、それに教育関係の出版社の計3社で編集の仕事をしてきました。いずれの会社でも紙の出版物を制作してきましたので、今回の転職に際しまず思いついたことは、紙媒体を作り続けること、つまり出版社への転職でした。しかし、正社員でかつ編集者を募集する出版社が少ないことは覚悟していました。編集者仲間に相談をしても「アルバイト社員ならば募集しているけど」や「広告部員の募集はしている」という返事ばかりで、早くも転職活動は暗礁に乗り上げてしまいました。その後しばらく、毎夜血眼になってパソコンに向かい、各出版社のサイトへ思いつくままにアクセスし、中途採用の募集要項を見ては、募集がないことを確認し、次のサイトへアクセスする、そんな日が続きました。2ヵ月後には会社から放り出されてしまう、何とかして新しい仕事を得なければならないというプレッシャーもあり、どんどん追い詰められていきました。

そんな矢先、偶然検索サイトで正社員転職専門の(株)エリートネットワークという転職紹介エージェントを知りました。これまで数回の転職の際には、新聞や自社サイトで各社独自に公募している会社に応募してきたために、エージェントに相談するということは思いつきませんでした。まずは経歴書などをeメールで送り、申し込みをしました。
その翌日です。いつも通り出版社サイトにアクセスしているときに、突然携帯電話が鳴りました。見慣れない番号からの電話でしたので訝しがりながら出てみると、(株)エリートネットワークからの電話でした。その電話で担当者との面談日時がセットされました。今思い返せば、この日から座礁しかけた今回の転職活動が徐々に針路を見極め、動き出したのです。
具体的な会社の面接となれば、ウェブサイトや商品などを手にとりその企業の分析をし、自分がその会社で何ができるのか、何をしたいのかかなり詳しく分析しまとめておく必要があります。しかし今回はエージェントへの登録です。面談では特定の業種や企業を意識せずに、大まかにこれから探す仕事のベクトルがどのようなものか、担当者に伝えられるように準備しました。まずは自分ができることやこれまでの自分の仕事内容、どんな仕事にやり甲斐を見出せるのかなど、思うままに書き出して、抽象的な言葉でまとめるように心掛けてみました。すると仕事に対する私自身の考えが、次の二点に集約されることがわかりました。ひとつは「情報を伝達し、受け手を喜ばせる仕事をしたい」こと、もうひとつは「企画立案のために逡巡しているときが一番楽しい」ということでした。非常に大雑把で、空気をつかむような内容で具体性がないように思われますが、エージェントへの登録準備をすることによって、これまで出版社や特定分野(たとえば旅行関係の出版社)に固執してきた私が、初めて自分のキャリアを俯瞰することができたように思います。
さて、カウンセリング当日です。それまで出版社、紙媒体での仕事がなかなか見つからなかったので、はたして紹介してもらえる案件があるのか、あったとしてもこれまでの経験を生かしにくいようなまったくの異業種での紹介ではないのか、少し懐疑的な思いで約束の時間に訪問しました。面談ではこれまでの仕事の内容や転職理由を話したり、あらかじめ準備してきた仕事に対する大局的な見方をカウンセラーの今沢さんに伝えました。やはり、出版社での募集は少ないようでしたが、その代わりに、ウェブコンテンツの企画・編集での募集案件を紹介してくれました。これらの案件は出版社での募集ではないし、紙媒体の作成でもありません。また私自身ネットを検索することはあっても、そのコンテンツを制作した経験もありません。しかし改めて考えてみると、最終形が紙かウェブかの違いはありますが、「情報を伝える」という点や「企画立案をする」という点では、俯瞰した私のキャリアイメージに完全に合致していることに気づきました。

面談当日は2案件の紹介を受け、その翌日にはメールで約15件の紹介を受けました。これまでの転職活動ではここぞと思う会社1社だけを狙い撃ちする応募の仕方でしたので、複数の会社や職種を同時に検討することは初めての経験でした。今回はあらかじめ見極めた大局的に見た自分自身の仕事への考え方を把握していましたので、募集職種もこの俯瞰した見方とオーバーラップするのかという視点で検討してみました。もちろん、緊急性の高い転職でしたので、徹底的に絞り込むのではなく、まずは応募してみて様子を見てみようと思いました。諸条件を勘案し「まずはその会社のことを調べて詳しく知ってみよう、面接で話しを聞いてみよう」と思える会社には応募をすることにしました。

いくつか応募した会社の中から、印象的な会社への応募経緯や顛末を紹介します。
●ECサイトコンテンツ企画制作職
この会社での募集職種はECサイトのコンテンツ企画・制作でした。最終的には物販をするわけですが、「商品の情報を伝える」という点やどのような商品をどのような切り口で売り込むページを作るのか? 「企画立案する」という点では、俯瞰した私のキャリアイメージと完全に重なる仕事でした。比較的新しい会社でどんどん伸びている会社でしたので、刺激的な環境で仕事ができるのはないかと思い、応募を決めました。
最初の面接時には、実際の社員がDVDの映像を使って会社の紹介、仕事の様子を紹介する説明会もあわせて行われました。こうした説明会では一般的に言われているうわさのレベルを出ない企業の評判やウェブサイトからはわからない情報を、ダイレクトにキャッチし自分で吟味することができます。この説明会で、体育会的な社風に「どうも肌に合わないな」という印象を持ちました。案の定面接でも「うちの会社にはあまりいないタイプですね」と言われました。1次面接は通過したものの、2次面接はこの社風と私の就労姿勢の不一致を理由に通過することはできませんでした。

●広告制作ディレクション職
この会社は広告を中心とした情報誌を制作している会社で、応募職種は広告制作のディレクションというポジションでした。これまで編集記事の制作経験はありましたが、広告を出広する企業の意向を汲みつつ誌面を作る経験はほとんどありませんでしたので、新たなチャレンジでした。ただ、情報伝達、広告誌面の考案という点では私自身のキャリアビジョンとオーバーラップします。また勤務地が自宅から近いこともあり、応募することに決めました。
この仕事を俯瞰したときに自身のイメージに合致するし、この転職を機にゼロから広告創りにチャレンジするのも悪くはないとの思いで面接臨みました。結果は2次面接で落ちてしまいました。理由は私の年齢でした。私の年齢であれば、その職種ではゼロから学ぶのではなく、制作チームをリードしていけるレベルのスキルを有した人材を求めているということでした。こうした企業側の細かなニーズは応募をして見なければわからなかったわけですから、残念な結果でしたが、応募をして良かったと思っています。

●ウェブマガジン企画・編集職
3社目は実際に内定が出て、実際に勤務する会社です。検索サイトを運営する会社で、ウェブマガジンの企画・編集の仕事です。仕事内容は自身のビジョンに合致しますし、何よりこのサイトはずっと個人的にも利用をしてきましたので、面接対策に躍起になる必要もなく、面接でも自然と自分の考えを伝えることができたように思います。ちなみに先述のECサイトで買い物をした経験はありませんでしたし、情報誌の広告を利用した経験はありませんでした。

今回、初めてエージェントの協力のもと転職をしました。結果論ですが、登録面談の準備で行った自身の仕事への考え方を俯瞰し、抽象的に纏め上げる作業が応募企業の選択肢を広げることになり、複数の会社を比較できました。また、実際に応募をして募集要項だけではわからない実態を垣間見ることで、入社先を自分の目で見極めることができました。エージェントを介する転職は、すべて人任せという意味ではありません。最終的には自分の仕事への考え方をを自分でまとめあげ、自分の目で入社先を判断するという意味では極めて自律的な転職活動です。ただ、多くの企業を紹介してもらったり、面接過程でアドバイスをもらうなど、非常に大きなサポートを頂いたことは言うまでもありません。

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