法務志望から心機一転、システムエンジニアへ

法務志望から心機一転、システムエンジニアへ

No.335
  • 現職

    JASDAQ上場 独立系会計ソフトベンダー 
    システムエンジニア

  • 前職

    有名私立大学 法科大学院 卒  未就労

中井 研吾 氏 27歳 / 男性

学歴:慶應義塾大学 法学部 法律学科 卒

1 はじめに

まず,私の経歴を簡単にご紹介させて頂きます。大学卒業後すぐに法科大学院3年コースに進学し,大学院修了後,2回新司法試験を受験し,不合格となりました。社会人経験ゼロから就職先を探しましたので,転職体験記ではなく就職体験記になりますが,私と似たような境遇の方に少しでも参考になればと思い,体験記を記させて頂きます。

2 就職の動機

私は,今年2度目の新司法試験受験をしたのですが,合格することができませんでした。1度目の受験で受けた論文の評価を踏まえて自分なりに合格に向けて修正し,また,在学生と違い授業や課題に縛られること無く勉強時間を確保できる環境で受験したにも拘らず合格という結果を出せなかったので,正直,3度目の最後の受験で試験に合格する見通しが立ちませんでした。そこで,昨年1度目の受験で不合格が判明した時とは異なり,無条件に来年の受験という選択をするのではなく,今回の不合格を契機に自分の将来について真剣に考えることにしました。


9月の試験結果発表直後の約1週間は,大学時代のゼミの友人,ロースクール1期既修で受験後に進路変更し既に働いている友人等に会ってもらい,今後の方向性について相談に乗ってもらいました。今まで勉強してきたのだし,まだ受験するチャンスがあるのならば,最後までやるだけやってみればいいといった励ましの声もありましたが,最終的には就職することを決意しました。理由としては,①机に向かって勉強する日々に行き詰まりを感じていて,自分が成長していくためには早く社会人としてのキャリアをスタートさせたほうがいいと思ったこと,②社会人経験なしの立場で年齢的に就職をするにはぎりぎりの線ではないかと思ったこと,③モチベーションを高く保って受験勉強を続けていくことが困難に思えたこと,が挙げられます。

3 就職活動の は じ ま り の は じ ま り

私は,試験の出来に自信がなく,5月の司法試験受験後も落ちていたら今後どうしようという漠然とした不安を抱いていたため,夏の間も,就職活動こそしなかったものの,試験からの撤退を決めて就職活動をしている(あるいは既に就職し働いている)人が自らの経験を記したブログや既卒者向けの就職情報サイトに目を通していました。その結果,全ての場合にあてはまるとは限りませんが,資格試験に向けた勉強に取り組んできたとは言え,大学卒業後,社会人経験(職歴)のない者にとって就職先を見つけるのがとても困難であるということを感じました。とは言うものの,大学在学時にはロースクール進学に専念していて,就職活動を全くしたことがない私には,就職を目指しても,実際にどのように就職活動をしていけばいいのか全く見当がつきませんでした。


そこで,人材紹介会社に登録して求人を案内してもらうという手法をとることにしました。情報収集していく中で,幾つか私の経歴でも利用できそうな人材紹介会社を見つけましたが,最初に(株)エリートネットワークさんに登録してみることにしました。理由は,①同社は転職者を対象とした人材紹介会社であるものの,転職体験記の中に,司法試験受験生で職歴なしの立場から就職した方の体験記が複数あり,同様な境遇の私が就職活動を行っていく上でのノウハウを持っていると思ったことと,②体験記を読んでみて,きめ細かな対応・サポートをされているという印象を抱いたことの2点です。


登録をしてみると早速,転職カウンセラーの廣重さんからご連絡があり最初の面談をしてもらうことになりました。今振り返ってみると大変申し訳ない話なのですが,初めてお会いする時点では,自分から登録をしておきながら,全然希望していないような求人を紹介されたらどうしようとか,職歴なしで申し込んだ自分にどのような対応をするのだろうといったように必要以上に身構えてしまっていました。ですが,最初の面談でカウンセラーの廣重さんが,時間を惜しまずに私の話を聞いて下さったことから,全くの杞憂であったことが判明しました。また,「私に一任してもらえれば,全力でサポートしますので,就職が決まるまで二人三脚で頑張っていきましょう」といったニュアンスの言葉も掛けてもらえましたので,この人なら信頼できると思いました。この時点で,他の人材紹介会社に登録することはせず,(株)エリートネットワークさんに一本化して就職活動をしていこうと決めました。


私は,①司法試験の受験という選択をした際に,他の職業と比較検討した訳ではなかったので,自分に最も適性があるのが法律の分野とは限らず,第三者から見て自分の適性は違う分野にあると判断されるかもしれないと思ったこと,また,②面談に臨んだ時点で法務のポストは求人がそもそも少なく,加えて,司法試験から転向した人の応募が集中して狭き門であるらしいという話を聞いていたことから,法務職に絶対のこだわりを持っていた訳ではありませんでした。しかし,矛盾するかもしれませんが,同時に社会人経験なしで今まで資格試験の勉強をしてきた私にとって武器にできるのは法律しかないという事実もありました。その結果,カウンセラーの廣重さんと面談する中でまずは,法務職で就職活動を進めていこうということになりました。初回のカウンセリング後には,会社を10社弱ご紹介して頂きました。

4 前半戦 (9月中旬〜10月中旬)

最初にご紹介頂いた会社の中に,未経験可で法科大学院修了生も応募資格のある企業法務の求人がありました。既に他の候補者もエントリーしていて1次選考が進んでいる段階でしたが,廣重さんがなんとか面接のセッティングに漕ぎつけて下さいました。会社の事業内容にも大変興味を持てましたので,まずは,約1週間後に迫った1次面接に向け会社のホームページを中心に情報収集をし,準備をしました。
会社の採用面接を受けるのは人生初めてということもあり,カウンセラーの廣重さんが,1次面接の数日前に面会する機会を設けて下さいました。その際に,面接に臨むに当たっての心構えや,エントリーした会社の面接の傾向等についてアドバイスして頂きました。ご本人は,ストレートな言い方しかできないと仰っていましたが,対面して人と話す際に伏し目がちになる私の癖は相手方にいい印象を与えないと端的にご指摘してもらえたのも有り難かったです。


同時期に,大手法律事務所のパラリーガルにもエントリーしました。書類選考はなんとか通過できたものの,要求レベルはかなり高く,私の力では筆記試験を通過することができず,面接まで進むことができませんでした。また,前述した会社の選考についても1次選考を通過することができませんでした。


この時点では,私は,就職活動をしていく過程で新たな法務の求人が出てくるのではないかと期待していたのですが,それは甘い考えでした。実際には,初回の面談から2週間程経過し,次の段階に進んでいる選考が1つもなくなってしまった状況においても,応募できる求人は出てきていませんでした。現在の就職市場について無知であり,最初に複数の会社を紹介してもらえていたことから勘違いをしてしまっていたのです。

5 後半戦 (10月中旬〜11月上旬)

10月中旬に入ろうとする頃,状況に進展が無く,時間だけが過ぎていくことに焦りを感じ始めた私は,今後の進め方について相談するためにカウンセラーの廣重さんに再度面談の機会を設けてもらうことにしました。私としては,転職体験記を読む限り,似たような経歴の方が最終的に法務ないし法律と関係のある仕事に就かれていることから,(株)エリートネットワークさんにお世話になれば,法務の仕事を見つけることができるのではないかと思っていました。
しかし,転職体験記が書かれた数ヶ月前と現在は状況が大きく異なり,職歴の有無を問わないポテンシャル採用を行う法務職の求人はほとんどないという現在の就職市場の状況について説明を受けました。法務の求人は大半が少なくとも3年程度の実務経験を応募要件としていることから,未経験応募可能の法務職にこだわると,かなりの長期戦になり,また,待ったからといって求人が出てくる保障もありませんでした。私はこの時点までは今までの経験を活かせる法務の仕事にできれば就きたいと思っていましたが,それ以前に,そもそも就職すると決めたのは社会に出て働きたいと強く思ったからであり,そのためには社会人になることが大前提となります。そこで,面談の結果,カウンセラーの廣重さんには,私の職歴でも応募可能な優良企業があれば幅広くご紹介して頂くことになりました。


方針変更の面談をしてから1週間も経たない内に,カウンセラーの廣重さんから新たな企業についてのご紹介を受けました。IT・ソフトウェア業界のSEの求人案件でした。全くイメージのない職種であったため,最初は戸惑いもありましたが,既に応募できる企業がかなり限られているという状況を身を以って感じていたため,早速応募手続を進めてもらうことにしました。それからは,情報収集の日々でした。なぜなら,それまで,司法試験の勉強ないし企業法務部についての情報収集しかしてこなかった私にとって,IT・ソフトウェア業界とは全く異なる未知の業界であり,予備知識が全くなかったからです。大きな書店に行って業界案内についての本を何冊も購入し読み込んだり,紹介企業のHPを見ることで,自分なりに,業界や会社についての理解を深めるように努める日々が続きました。


ありがたい事に,応募手続をしてもらった企業についてはほとんど書類選考を通過することができ,筆記試験・1次面接に進むことができました。その中には,敷居がかなり高いと思われていた大手SIerも含まれていました。


IT系にまで幅を広げてから臨む初めての選考は前述した大手SIerの筆記試験・面接でした。選考に臨むことができる企業の中では,1番研修が充実している印象をHPを調べた限りでは抱いたため,自分の中ではかなり志望度が高かったです。全くの異分野での選考ということで緊張する中,なんとかベストのパフォーマンスをしてみたつもりでした。しかし,数日後に,選考通過しなかったという結果と共に,先方から気になるフィードバックがあったとの連絡をカウンセラーの廣重さんからもらいました。
内容は,筆記試験の出来と,人物面の評価は悪くないが,“法務への未練”を強く感じたことがネックになったといったものでした。面接での受け答えを振り返ってみて,自分としてはそのような言動をした心当たりはなかったのですが,今振り返ってみれば,法務の求人の話がこれから出てきたらそちらに心惹かれてしまう気持ちも少なからず残っており,法務職とは全く異なる業界でゼロからスタートを切るという覚悟を決め切れていなかったのが,雰囲気として出てしまっていたのだと思います。面接を担当される相手先企業の人事部の方は,数多くの応募者の面談を経験してきているプロな訳ですから,私としては志望動機等をアピールしたつもりであっても,心の迷いといったものについては見抜かれてしまっていたのです。

続いて受けた2社目についても,なんとか1次面接は通過したものの,全く同じようなフィードバックがあったということで廣重さんからご連絡がありました。その際に,本当にIT業界で働こうという気持ちを持てているのか今一度自分の胸に問い掛けてみてほしいといったことも言われました。このフィードバックを契機にもう一度本当にこの業界でやっていきたいのか,やっていく覚悟があるのかについて自分の内面に問い掛け深く掘り下げていくことにしました。その中で,面接で法務への未練がないと言ったとしても,それは必ずしも,応募している会社を志望する前向きな理由にはならないこと,なぜその職に応募してその会社で働きたいのかについてより積極的な理由を説明しないと相手方を納得させることが難しいということに気付きました。


2つの面接でしてしまった失敗を繰り返さないためにも,業界の仕組み,SEとしてのキャリアパスについてもう一度調べると共に,志望する会社に入ってどのように働いて行きたいのかを明確にするための企業研究に努めました。
なお,この時期に,カウンセラーの廣重さんが,なぜ法務職に続く第2弾としてSEという仕事を集中的に紹介しようとご判断されたのか理由を聞かせて頂きました。簡決に述べさせてもらいますと,①弁護士や企業法務の携わる法律の世界とは全く異業種ではあるが,専門知識が要求される専門職的な性格を有する仕事であること,②コツコツと取り組んでいくことがキャリアアップにつながることが私のタイプに合致するであること,③市場のニーズが高まっていくであろう職種であること,といった理由でした。初回の面談だけでなく,日頃の電話のやりとりをしていく中で,私の特性・適性をかなり的確に把握されていると思いました(流石プロです)。抽象的な話になってしまいますが,法務職とSEは,分野は全く異なれども,専門知識を持ち,自らの専門性を活かしたサービスを依頼主・顧客に提供することでサポートし,ひいては社会貢献するという点では共通点を見出すことができると思います。業界研究や企業分析が進んでいく過程でこのようなことにも気付き始め,自分なりに,IT・ソフトウェア業界でSEとして働き、キャリアを積んでいくことに以前よりも積極的な意義を見出せていけるようになった気がします。


このような経緯を経て,3社目の1次面接に臨みました。面接官の方とのやり取りはスムーズに進んだ気がしましたが,自分の感じた面接の手応えと実際の面接の結果は必ずしも合致するものではないという話は知識としてありましたので,選考通過の報告を受けるまでは,安心できませんでした。結果としては,過去2社の面接とは違って,<法務に未練があるのではないか?><本当にうちの会社で働きたいのか?>といったネガティブなフィードバックがなされることもなく,次の選考に進むことができました。


次の2次選考は,部門開発責任者が面接官を担当され,最大の山場という位置付けだったそうですが,面接官の方との相性が良かったのか,1次面接の面接官の方がいい評価をして下さった事が後押ししてくれたのか,ここも乗り切ることができました。2次面接終了時に,採用担当の人事部の方から,それまでの面接の総括をフィードバックをして頂けたのですが,自分でも戸惑うくらい好印象を抱いて頂いているようでした。とは言え,まだ最後に社長面接が控えており,その時点では1社も内定が出ていなかったことから,油断することなく,最終面接までの数日間を利用して再度準備をしました。最終的には,この会社から内定を頂くことができました。この時点では,同時に選考が進んでいる会社はありませんでしたし,選考を通じて,同社は専門性を身に着けることもでき自分にとって相性の良い会社だと感じることができましたので,就職活動を続けることはせずに,この会社にお世話になることに決めました。

6 最後に

金融危機が叫ばれて景気が悪化する社会情勢の中で,私みたいに職歴のない者が内定を頂くのはとても困難なことなのかなと,法務職での就職活動が行き詰った時等には感じて,かなり焦ることもありました。しかしながら,結果的に納得のできる魅力的な企業から内定を頂くことができました。振り返ってみると,担当カウンセラーの廣重さんのサポートなしではこのような結果を迎えることは出来なかったと思います。お忙しい中,私が面接を受けた後出来るだけ早い段階で企業まで出向き面接官からフィードバックを受け取り,私に報告して下さったことで,前述のように,次に控えている企業の面接に向け改善することができ,いい結果につなげることができました。就職活動の経験が無く時に就活のイロハのようなことを質問してしまっても丁寧に対応して頂けたのも支えになりました。


私と似たような経歴でこれから就職活動をしようと考えている方は,かなり厳しい状況が待ち受けていると思って下さい。今まで法律の勉強をしてきたのだから,それを活かした仕事に就きたいという気持ちを持たれていたとしても,私も当初はそうでしたからその気持ちが分かります。しかし,きつい言い方になりますが,試験に合格し司法修習を終えた有資格者の方達ですら就職難というニュースが報道されるくらいですから,司法試験に合格をしていない受験生が,法務職に就職するのはかなり難しい状況だということもご理解下さい。


既卒者で職歴がない方の場合,ポテンシャル採用の求人に応募していくことになりますが,その際に今まで勉強してきた法律のことを持ち出すのは得策ではないと思います。法務職の場合,通じる知識もあるでしょうが,それ以上にゼロから学ぶ必要のあることの方が多いと思いますし,法律とは無縁の仕事の場合なおさらゼロから学んでいくという積極性や覚悟が求められると考えられるからです。今までかけてきたエネルギーが強ければ強い人ほど難しいことでしょうが,就職という新たな道を切り開いていくためにまずは自分の心の中にある司法試験やその先にある実務法曹への想いに区切りをつけて下さい。


まだ一度も社会人経験のない私はこのようなことを言えた立場ではないのですが,拙い私の経験談でも参考になれば幸いです。


就職活動に際して,担当カウンセラーの廣重さんには大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

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