人事アウトソーサーから、一部上場企業の人事部へ転職

人事アウトソーサーから、一部上場企業の人事部へ転職

No.479
  • 現職

    一部上場 不動産サービス会社  人事部 労務担当

  • 前職

    人事業務アウトソーシング会社  顧客企業先常駐

百田 恵子 氏 26歳 / 女性

学歴:横浜市立大学 国際文化学部 人間科学科 卒

就職活動

■就職活動について
新卒時の就職活動の当時、社会保険労務士の資格の勉強をしていたので、就職もその延長で社会保険労務士事務所やコンサルティング会社を受けました。社労士の資格の勉強をしていたのは、「何か資格があるとよさそうだ」という割と軽い動機です。
就職活動は、結果から言うと、5社程度しか受けずに会社を決めてしまい、数年後、もっと広い視点で多くの会社を見ておけばよかった、という気持ちになってしまいました。
当時その会社を選んだ理由としては、次のような点でした。
(1)サービスの範囲が広い点:「社労士」の行う労務関連の分野にとどまらず、採用支援や人事制度設計など、幅広い分野で中小企業のサポートをしているところ。
(2)社長のカリスマ性:社長自身が会社説明会を行っており、直接語る会社運営の思いに、未経験ながら共感し、一緒に働きたいと思ったところ。
(3)新卒採用の特徴:20名の会社でも新卒を採用し、人事の分野だけでなくITリテラシーも具備した総合的な力を持つ人材を育てようとしているところ。
上記の3点については、自分が理解した内容はずれていなかったと思いますが、長い職業生活を始めるにあたり、思慮が浅かったと思う点も多くあります。具体的には、自分の性格や価値観と照らして、
・コンサルタントの仕事とは自分に合っているのか?
・20名規模の会社で働くとは、どういうことが考えられるか?
というような点でじっくり考察を加えることができていなかったと感じています。結果的に、数年後、この2つの点で非常に悩み、転職を考える動機になりました。

入社1年目

■最初の担当:営業職について
入社当初は、「お客様の声を聞く」ということに重点を置き、主に営業の担当でした。
企業リストに片っ端から電話をかけ、アポイントをとり、新規訪問に行って会社のサービス内容を提案する、という仕事です。
電話をかけてアポイントを取ることは、それほど苦ではなく、アポイントもそれなりに取れました。潜在顧客を訪問し、企業側のご担当者と話しをするのも、充実感がありました。
しかし、いくらアポイントをとったり訪問したりしても、達成感がありませんでした。
今思うと、その原因は、個人レベルでは次の点にあると思います。
(1)良い案件を成約するという、最も大切な目標が無かったこと。
(2)自分が説明しているサービスを深く理解しておらず、表面的なことばかり説明していたこと。
会社の営業体制という点で考えると、コストと売上の関係を理解し、どんな案件を提案することが会社に有益になるのか、またその為にどういった戦略で営業をかけるべきか、という戦略が無かったのだとも思います。

この時期、達成感がないまま、長時間働いていたため、心身の消耗がひどく、退職を考えました。正直なところ、「営業をやるなら、もっと営業ノウハウがしっかりしていて、営業成果を出した分の見返りが得やすい会社がいい」と考えたのです。それが就職2年目の後半です。とにかく辞めたいという一心で、実際に社長に退職を申し出たこともありました。衝動的に、後先考えず「辞める」と言ってしまったので、幼稚な行動だったと思います。その時は社長と色々な話をした結果、労務関係の担当チームに移ることを提案されました。人事業務の実務面には興味があったので、その提案を受けて、給与計算や社会保険手続きの担当に移りました。

入社3年目

■二つ目の担当:給与・社会保険(客先常駐)について
労務担当のチームに移って間もなく、以下のような内容で、客先常駐での人事オペレーション業務を任されました。
・会社規模:100名
・事業内容:エンターテイメント系
・担当業務:勤怠管理、給与、社会保険、福利厚生管理などに関する、社員の窓口
労務系の経験が浅い点で心配はありましたが、担当になるお客様の事業内容や、企業側での人事が経験できるという点に魅力を感じ、すぐに引き受けようと思いました。
常駐先での業務が安定するまでは、手さぐりで行う事が多く、細かなミスも数々してしまいました。手さぐりというのは、アウトソーサーでは関わりの無い以下のような点があったからです。
・社員との直接のコミュニケーション(人事担当として、どのように説明・連絡をすべきか?)
・経理との協力(給与や税金等の支払いフローがどうなっているのか?)
・システムチームとの協力(人事で操作する社内システムの使い方について、システムチームとどう連携すればよいか?)
・ベンダー等との協力(顧問の社労士事務所や、勤怠管理システムのベンダーとどう連携すればよいか?)
仕事に直結する上記の他、20名の小規模会社しか経験の無い自分にとっては、組織の構造、イントラネットの使い方、経費精算の仕方などなど、ある程度の規模の会社なら当たり前の事に無知だったので、全体の流れが判るまでは、緊張の連続でした。

■転職を考えた理由
客先常駐での仕事は、苦労や緊張の連続でしたが、充実感もありました。
それは、先に述べたような苦労点が、そのまま楽しく思えてきたからです。
社員と直接話したり、管理系の他部門と協力したり、ベンダーと業務改善の相談をしたりすることが、自分に合っていました。アウトソーサーとして、自分の所属会社のオフィスで情報を処理するような仕事よりも、ずっと客先常駐の方がいいな、と思った程です。
ただ、客先常駐でも、社員と業務委託者の関係には1枚壁がありました。お客様のもとで定常業務を回し続け、契約期間が終わったら、あるいは人事異動があったらそこで終わり、という関わり方はあまりしたくありませんでした。また、感情的に、いくら客先常駐とはいえ、お客様の会社に対する当事者意識が薄いという自覚があり、そういった中途半端な気持ちで人事の担当に居るのは良くないのではないか、と考えるようになりました。

■転職活動を具現化した背景
客先常駐の業務が安定してくると、18時過ぎに客先を出て直帰することができるようになりました。それは自分にとっては劇的な変化だったと言えます。それ以前の営業担当の頃は23時過ぎに退社する毎日だったので、転職活動をする隙もなかった為です。
自分の転職活動の始動を後押した事として、常駐先のお客様との出会いも大きく関わっています。外資系の企業なので、価値観や経験という点において、様々な個性を持った方と接することができ、自分の行動範囲をもっと広げていこうと思うようになりました。

また、会社との関わり方という点においては、派遣や業務委託、正社員など様々なスタッフがそれぞれの事情で入社・退社を繰り返す流れを見ていて、会社と社員の関係とは、こういうものなのだ、という一般的な感覚が判るようになりました。それまでは、新卒で入った会社で、社長から「大事なのは帰属意識だ」とか「社員とは家族のようにずっと一緒に働きたい」などの考え方を刷り込まれていたので、普通と違う捉え方をしていたようにも思います。(人事専門の会社にいるはずなのに、そういう無知さが恥ずかしいです。)

■転職活動を始めた頃
まず情報を得ようと思い、広告でよく目にする大手の人材紹介会社に登録をしました。
その会社の転職支援体制は、以下のような感じでした。
・キャリアコンサルタント:自分より5〜6歳年上と見られる女性です。知的で好印象。
・転職支援システム:ウェブサイトで個人アカウントを作ることにより、自分の情報の更新や、企業の求人案件の公開やエントリーが簡単にできるという点が便利。
・求人情報:キャリアコンサルタントと初回の面談を行った日に10件程度の求人情報を提供。その後システムを使って月に1〜2件ペースの案件紹介。(職種により異なる)
その頃会社を選ぶ際に大事にしていたことは、以下のようなポイントです。
(1)事業内容:自分が消費者の立場で魅力を感じるビジネスであること。その中でも収益性の高そうなコンテンツビジネスに興味がありました。
(2)会社規模:100〜300人位。全社員の顔が見えるくらいが良いと考えました。
(3)社風:平均年齢が若く、明るい雰囲気が希望でした。

人材紹介会社に初めて登録してから1〜2か月間は、テンポよく事が進みました。
上記のような志望に合う企業で希望職種(人事)の求人があり、2次面接まで進むことができました。最終面接まで進めなかった理由としては、選考中の職種での採用を見合わせることになった、とのことと伺いました。結果は残念でしたが、1社目の応募である程度まで進んだので、転職活動は案外楽に進むものだと捉えていました。
しかし、それから月に1〜2件の頻度で案件の紹介はありましたが、応募したい企業が少なく、たまに応募しても書類選考でNGになることがかなりの期間続きました。10件近く書類でNGになったので、結局は人材紹介会社でも、なんとか面接まで進めさせるようなプッシュ力は無いものなのだな、と現実を感じた約1年間でした。

入社5年目

転職活動に動きの無いまま、就職して5年目、客先常駐の担当になってから3年目に入った頃、選考に動きが出てきました。転職活動開始から通算して、応募13社、面接3社目でようやく内定が出ました。

■1社目の内定と辞退
創業間もないITベンチャーの人事の枠で内定を頂きました。概要は、以下の通りです。
・事業内容:コンテンツ配信を中心としたwebサイトの運営 など
・応募職種:人事(労務)
・年収:340万円(賞与・時間外手当含む)
・組織の特徴:大手企業数社が共同出資してできた会社。他社でのコンテンツビジネスで実績のある方が取締役や事業部長に就いている。
事業内容や、仕事の内容(新しい体制作りに関われる)、面接で会った社員の方の印象などに魅力を感じ、選考中は非常に志望度が高かったです。
内定を承諾する前に、現職の上司(取締役)に退職の相談をしました。現職で、いつ退社できるかという点に、非常に心配があった為です。上司からの反応は、意外なものでした。予想では、退職や退職日(1カ月後を希望)について罵倒されると思っていましたが、実際はその点よりも、「内定した会社で本当に良いのか?給料が安過ぎる、大手の共同出資なんて組織的弊害が多いはずだ。」という点で語り、最後に、自分が信頼する人材紹介のプロに一度会ってみないか?という提案がつきました。上司の指摘点には、半信半疑でしたが、大変信頼している上司であり、人事のプロでもあるので、その方の意見を伺ってからでも遅くないと思いました。そして、出会ったのが株式会社エリートネットワークの転職カウンセラーの高橋寛さんです。
高橋さんは私との面談において、長い時間をかけて丁寧に話しを聞き、客観的に情報を整理した上で、とてもシビアで貴重な意見をくれました。詳細は割愛しますが、広い人脈や長い経験が裏付けする意見は、とても納得性が高いものでした。内定を頂いた会社への魅力は感じていましたが、この後の長い職業生活を様々な視点で考えて、その会社の内定を、辞退することを決意しました。あんなに志望度が高かったのに、たった2人の意見で覆してしまうなんて、自分の2年近くの転職活動は、なんて思慮が浅かったのだろうと情けなく思う反面、せっかく信頼できる人が居るのだから、切り替えて、チャレンジできることをしていこう、も考えました。

■2社目の内定
同時期に早速、案件を紹介してもらい、2社目の選考がスタートしました。急ピッチで選考を進めて頂き、無事内定を頂く事ができました。なんと東証一部上場企業、人事部所属、労務担当です。自分でも驚くようなこの内定には、次のように特別な要素が多く重なったという背景があります。
(1)応募した会社と、(株)エリートネットワークの高橋さんとの信頼関係が深かった事。
(2)現職でかつてお世話になった先輩が、今現在もその企業で活躍している事。また、自分もその先輩を尊敬している事。
(3)応募した会社が、人物重視で選考をしている事。
こうして今まで職務経歴書だけでNGになっていた私が、1部上場の優良企業に内定を頂くことができたのです。

■2社目の内定を得て、判ったこと
内定が出るまでは、「現職を辞める」ことが目的のようになっていたことに気が付きました。多少不安要素があっても、事業内容が健全で、今より条件が良ければいい、という気さえしていたかもしれません。転職活動に切羽詰まり過ぎて、とても大事なはずの要素を熟考することができていませんでした。具体的には、長い職業生活において、自分のキャリアの展望、生活ステージの変化(結婚や出産など)の可能性を考慮して、どういう会社で、どのように働くかという視点を見失っていたという事です。きれいごと抜きに、年収とか、処遇とか、キャリアステップとか、考えなければならない時期だったと思います。切羽詰まっていたと書きましたが、その理由は、応募する会社が次々に書類選考でNGになり、面接すらさせてもらえない状態が続いたからです。更にその原因は、自分の職務経歴がアウトソーシングの経験しかない為、事業会社での人事実務経験を持った人材たちが優先的に選考に進めるという現状があるからでした。それまで転職支援を受けていた大手の人材紹介会社では、その壁を打破するほどの、アシスト力は、無かったようです。そして、切羽詰まった状況の突破口になったのが、実力のある人材紹介会社との出会いだったのです。

■現職の退職まで
退職交渉については、退職日の決定に関して非常に苦労しました。役員からは、理不尽な叱責を受けることもありましたが、(株)エリートネットワークさんが逐次具体的な交渉方法を提示してくれ、退職日を決着させることができました。非常に助かりました。
今は、後任への引き継ぎを進めている段階です。初めての転職を前に、期待や不安がありますが、新しいスタートから、しっかり期待に応えられるよう、更に努力をしてこうという心境です。

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