一部上場 総合商社 事業投資管理
一部上場 自動車メーカー 財務・経理部門
森口 圭一 氏 32歳 / 男性
学歴:上智大学 経済学部 経済学科 卒
「率直に言いますよ。 東京に帰りたいだけで転職しようとしていませんか?」
カウンセリング部長の高橋様から言われた言葉です。痛いところをズバッと突かれました。親身になって相談に乗って頂いているが故の言葉。普通のエージェントなら絶対言いません。
海外資金調達、リスク管理、為替ディーラーと銀行出身者らしくメーカーで財務の仕事を中心に順調にキャリアを重ねてきました。そんな時に、地方の工場へ異動を命じられました。誰よりも仕事に打ち込んだ自負もありましたし、この先も財務中心でキャリアを重ねたいと希望を出していたのに 「何故、俺が地方の工場で経理を?」 そんな思いがありました。
赴任して早々工場の分社化案が公表されました。1年後に原則全員転籍との事で、さすがに転職を考えるようになりました。「この先色いろな仕事を通じて成長していきたいのに、地方の工場に片道切符で転籍する可能性が出てきました。ついては転職先を紹介して頂きたい。」 そう言って高橋様に相談しました。本音を言えば、関東に帰りたいだけだったと思います。もっともらしい理由をつけて転職相談に伺いました。そんな私の本音を高橋様は見抜いていたようです。熱心に私の話を聴いて頂き、多くのアドバイスを頂きました。そして最後に、「率直に言いますよ。東京に帰りたいだけで転職しようとしていませんか?」 と投げかけて下さいました。
その後、一週間考える時間を頂き、転職を一旦あきらめる事にしました。やはり目の前の仕事をやり遂げてから転職したい。関東に帰りたいだけで転職をしても中途半端で終わってしまう。そう考えました。転職の相談をしたつもりでしたが、現職に残るという結論に至り、高橋様に報告しました。
「お話をお伺いするにつけ、私もそのほうが良いと思いますよ。現場でがっちり仕事に打ち込んで下さい。必ず、引く手あまたになりますから。その時にまた声をかけて下さいよ。」
あれだけ多くの時間を割いて転職相談に乗って頂いたのに、会社にとどまる事を勧めてくれる高橋様の姿勢に感動し、仕事に打ち込む事にしました。
工場に来たことで昇進が1年遅れました。部門をまたぐ場合、どうしても遅れてしまうのです。なんとなく分かっていましたが、実際とてもショックでした。
「絶対、来年昇進してやる」 と腹を決めて、慣れない工場経理の仕事を必死に頑張りました。現場の監督者に呼ばれ、怒鳴られる事も何度もありましたし、何度頭を下げたか分かりません。その度に 「こんな田舎まで来てこのまま終わってたまるか。絶対に工場を良くしてやる!」 そんな思いで仕事に打ち込みました。
分社化プロジェクトの経理担当者となり、支払・請求システムを構築しました。現場、本社と折衝を重ねながら分社化を成功させ、幸いにも社長賞を獲得しました。同世代の誰よりも仕事をやり遂げた自信がありましたが、その年も昇進は見送られ同期より2年遅れる事になりました。それでも転職を思いとどまって、良かったと思いました。確実に自分のレベルが上がっている手ごたえとやり甲斐があったからです。
先輩が異動し実質的に工場経理を仕切るようになりました。部下9名をまとめ上げ、他部署と協力しながら、社長への経営戦略の提案から、現場の改善の相談までありとあらゆる仕事をこなしました。こうなると社内の評価うんぬんより、もっと厳しい環境で働いて成長したいという欲望が出てきます。転職するなら絶好調の時にしたいと考えていたので、再度高橋様に相談しました。大手の総合商社の機械部門で求人がある。応募してはどうかとの事でした。通常のノウハウ本では絶対に書いていない生々しい面接のアドバイスを頂き、面接に臨みました。基本的なテクニック (というより礼儀作法) もそうですが、転職への覚悟と気迫を持つ為の準備を手伝って頂いた感じです。
「すみません。緊張し過ぎて一つ目の質問を忘れてしましました。もう一度お願いします。」
「今の回答は本音ではなかったので、言い直してよいでしょうか? 申し訳ありません。」
9年ぶりの面接である事と役員の圧倒的なオーラに圧倒され、頭の中は真っ白になりました。それでも精一杯自分の想いをぶつけました。言葉は足りなかったのかもしれませんが、表情、語気でカバーしたのではないかと思います。自分の実体験を通じて生まれた言葉、現職にとどまってよいのかという苦悩、新しい仕事に挑戦したいという熱意からくる言葉に勝るものはないと思います。また、面接官は忙しい業務の合間を縫って、スケジュールを調整し、面接の機会を与えてくれています。感謝の気持ちを持って面接に臨みました。
「募集は経理・財務の経験者だけど、部門は営業だからゆくゆくは営業部だよ。」
これを聞いた時、一瞬応募を断念しようかと思いました。正直にその旨を伝えたところ、「総合商社の営業は利益をつくる、つまり経営ですよ。関係者全員の利益を最大化させる為の経営です。」 これを聞いて覚悟が決まりました。「経営は数字。経理は社長の懐刀。」 こう考えて仕事をしていた私の考えと一致したからです。限られた人、モノ、金を生かせるビジネスパーソンになりたい。その目標に近づける環境を求めていたので、それができるなら部署や職種は関係ないと考えました。
「馬鹿野郎! 人生のイニシアチブは自分で持て。だいたい大企業が、お前一人の事を大切にできる訳がないだろ。かっこつけるな。」
数年前、「今の会社に愛着があるから、転職は意識していません。」 と先輩に話した時に、言われた言葉です。それ以来、「自分は他の会社でも通用するだろうか?」 という観点を持って日々仕事をするようになりました。
求人情報は生ものだと思います。また、求人する企業側のニーズも様々。一方、自分自身のビジネスパーソンとしての評価も日々変化しますし、なかなかデジタルに測れるものでもありません。その為、自分に合った会社を探すというのは本当に難しいと思います。
そんな中で頼りになったのが転職カウンセラーの高橋様でした。高橋様は、自ら多くの企業に足を運び、一概に数字では表せない生の情報を集めながら、自ら数多くの応募者と直に接していらっしゃいます。企業 (採用する人) と応募者 (採用される人) を繋ぎながら多くの情報をお持ちです。
高橋さんの言葉は自ら見た事、経験した事、分析した事を、私の状態、環境に合わせて話をしてくれます。カウンセリングの度に、冷静な分析、熱意、プロフェッショナリズムに圧倒されました。
「現場でがっちり仕事に打ち込んで下さい。必ず、引く手あまたになりますから。」
この言葉にどれだけ救われ、どれだけ仕事に打ち込めた事か。私は現在、東京のオフィスの高層階で事業投資管理という仕事をしています。しかし、面接で評価されたのは、地方の工場で作業着を着て、ヘルメットをかぶって、現場でフォークリフトにひかれそうになりながら、文字通り汗を流して現場の為に働いた経験でした。お伝えしたい事は、常に転職情報を集めながらも、ただひたすら現職に打ち込む事が転職で成功するポイントの一つではないかという事です。
皆様のご健闘をお祈りします。最後までお付き合い頂きありがとうございました。