オンラインゲーム大手 サウンドクリエーター
大学在学中から、2011年度迄、フリーランスでBGMやサウンド制作
音楽制作会社 サウンドクリエーター
花山 茂章 氏 33歳 / 男性
学歴:専修大学 法律学部 法律学科 卒
小さい頃から絵を描くことが好きで、小学校中学校と
美術の授業がとても好きでした。ものを創る事に無上の
喜びを感じていたことを覚えています。
高校生になると今度は音楽に憧れて目覚め、アルバイトをして買った楽器や
機材を使用して作曲をし始めます。
将来何になりたいという明確な答えはありませんでしたが、
「音楽」 をやっていたいと漠然と感じていました。
大学生になると、引き続き音楽にのめり込みましたが、
学生生活に対しては、興味を保てなくなりました。
大学への指定校推薦枠を取得するために高校三年間、
定期試験の成績を上位に保つため、必死で勉強をし続けていた結果、
大学入学後に目的を達成した気持ちと、燃え尽きた感覚が
残ったこと、また人間関係のすれ違いから悩むようになりました。
ぼんやりと大学に通い続ける必要性と意味に疑問を持ち、
一旦大学を休学することにしました。
その間、音楽を楽しむクラブやバー等、様々なアルバイトをしながら、
地方出身で同世代の職場の仲間達と巡り合いました。
基本的に皆お金がなかったり、住む場所にも困っている人もいたので、
助け合いながら仕事をこなしていました。
本当に自分が悩んだり困っている時に相談に乗ってくれたり、
助けてくれたのは周囲の友人でしたから、同様に彼等と
接していました。
気がつくと、私はその職場で彼等をまとめる役割になっていました。
仕事上の損得ではなく、基本的に友人や人を大切にする傾向は
その時に育まれた価値観だと思っています。
大学休学から約一年が経った頃、疑問や悩みが次第に解消され、
大学に戻る時期なのではないかと思いました。
結果、大学に戻り卒業までの残り三年間を神保町の専修大学法学部で
過ごします。
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休学中は音楽どころではなかったのですが、
復学すると音楽活動を再始動させ、
学校のある神保町に数多くある古本屋を巡っていると、
次第に文学や思想にも興味を持ち始めました。
古本屋で得た小説や新書等を読み、古い芸術家や詩人の考え方に
感化されてゆきます。
大学の授業も、法律についてはあまり勉強熱心ではありませんでしたが、
哲学や思想、その背景にある人間の歴史に興味を抱きます。
音楽でも文学でも同じですが、
ひとつのジャンルを自分なりに掘り下げて知識を得ると共に、
その知識をもとに音楽を創ってみるということを日々試しました。
また、自宅に簡易的な録音環境を揃え、その操作方法やコツ、
機材知識等を少しずつ独学で学び、実践してゆきます。
次第にそれが面白くなり、
在学中、音楽事務所にデモテープを送ることを始めました、
クオリティ的には決して高いものではありませんでしたが、
都内のめぼしい音楽事務所の所在地を調べ、テープを持って
練り歩いたり、定期的にテープを送ることを続けました。
そうこうしている間に大学も卒業の時期となり、
新卒で音楽関連の仕事の面接へ行くのですが、
自分としては自身の音楽を創る事を心のどこかで大切に考えていましたので、
心に思っていないことは、当然結果として出てくるもの、
面接結果は不合格となりました。
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その後はフリーターをしながら、定期的に沢山の音楽事務所さんへ
デモテープを送り続けます。
結果的に私が20代の間に送り続けたデモテープは400〜500本くらいだと思います。
返信を頂けた方とお会いして、コンピレーション・アルバムに
参加したり、テレビ番組のBGMを制作したり、楽曲をシンガーさんに
提供するお仕事を頂いたりしました。
デモテープの募集を発見したらすぐにテープを送る、
決めたことは後伸ばしにしない。
情報を得たらすぐに行動に移す感覚が、この間に培われました。
また、歌をしっかりと歌えるようになりたかったので、6年間ほど
ボイストレーニングに通いました。
高校三年間、大学への指定校推薦枠を得るために勉強を続けたことと同様、
ひとつのことから目を離さず、継続し続けることを音楽からも
改めて学ばされました。
ひとつのことを続けていくと、元々能力のない私のような人間でも、
少しずつ磨かれてゆきます。
自分の作品を作り続け、仕事とアルバイトをしては機材を増やし、知識をつけ、
20代も終わろうとする頃に、とある音楽制作会社さんの内勤での
仕事に正社員としてご縁がありました。
年齢的にも腰を据えて技術を伸ばそうと思っていた時期でしたので、
お世話になることにしました。
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仕事の内容はゲームやパチスロのサウンド制作でした。
これは自分にとっては初めての業界でした。
ここから効果音やBGM、映像に音をつけてゆく MA 作業をひたすら行い続ける日々が
始まります。
野球で言うところの千本ノックのように、作れば作るほど上達するものなので、
制作のスピードが少しずつ向上し、サウンド制作者が日頃どんな気持ちで制作を
しているのかが次第に分かってきます。
サウンドの制作手法と制作者の気持ちが分かってくると、
今度は案件のディレクションを行うようになります。
ディレクションとは、クライアントさんと打ち合わせをし、作品のイメージを共有し、
作家さんに制作指示を出しながら、スケジュール管理をするお仕事です。
納期を厳守するスケジュール感と、作家さん・クライアントさん、人を大切にすることが
要求されてきます。
個人的に仕事を通して大切だと思ったことは、
「掘り下げる事が好きであること」 と 「人の和を尊重すること」 でした。
私は音楽そのものが元々好きでしたので、仕事から帰ってきた後も
休日も音楽機材や楽器に触れたり、バンドでライブを行います。
自分の好きなように機材や音楽に触れていると新たな発見があります。
これは時間に追われている仕事中には気付かない事柄だったりします。
そこで気付いたことを今度は仕事の制作に生かすことが出来ます。
これが 「掘り下げる事が好きであること」 の大切さだと思います。
「人の和を尊重すること」 というのは、
仕事を進めていく中で必ず自分一人だけでは成立しない仕事というものが
沢山存在するので、普段から周囲の人達との協力体制がとれるかどうかで、
制作の時間がどの程度とれるかどうかが決まり、結果的に制作物のクオリティ、
クライアントさんの満足度、最終的に仕事全体のクオリティが
変わってくるので大切だと思います。
また、この二つは仕事上に限ったことではなく、
大切にすることで普段の生活も気持ち良いものになると思っています。
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今回転職に至った経緯は、
「もっとゲームのサウンドを良いものにしたい」 ということです。
私の所属していた会社は、クライアントさんから依頼される仕事を
受託して制作を行うため、基本的にはクライアントさんの要望に答えることが
目的になります。期待に答え、次の発注を頂けるように仕事をこなしてゆく。
次から次へと沢山の案件が押し寄せてくるのですが、案件が増える度、
一つの案件に割ける制作時間量というものが減ってきます。
その結果、クオリティを重視して制作していたものが、
次第にスピード重視に変化してゆきます。
一つの案件を早く完了させることができると、他の案件を詰め込むことができ、
会社の利益を増やすことが出来るからです。
ここで私は考えました。
「果たして自分は、何のためにサウンドを創っているのか」 ということを。
元々自分は音楽が好きで、色んな音を探求することが好きで、
できることなら、より良いサウンドを作品に添えたい。
そう思っていたはずです。
本当にこの先このままでいいのだろうか ?、と悩んだことも転職のきっかけでした。
できることなら、一つ一つの案件にしっかりと時間をかけて取り組みたい。
また、サウンドや音楽を知らない方がサウンドの方向性を決めるのではなく、
サウンド制作者が企画の段階からサウンド全般の提案をした方が、
よりサウンドの選択肢の幅が広がると共に、クオリティ重視の作品を創り出すことが出来ます。
これを行うことは、受託型のサウンド制作会社では限界があります。
受託ではなく、ゲームメーカー内のサウンド部署に腰を据えて作品に関わることで、
ゲームのサウンドの可能性は更に広がります。
ゲームメーカー内にサウンド部署を持つというのは、会社にとっては負担です。
ですが、社内で制作することで制作物の細かい部分に注意を払い、納得するまで
突き詰めていくことができます。
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年々、スマートフォンでゲームを楽しむ方も世界的に増え、
スマートフォンの機能やスペックが向上したことで、ゲーム上で扱える情報量も増え、
実に多様な作品が生まれています。
つい数年前まではスマートフォンのゲームサウンドというと、限られた物量でしたが、
最近ではコンシューマーゲームに近い物量になってきました。
ゲームを楽しむという世界は、国境を越えていると思います。
誰でも社会的な立ち位置と関係なく、楽しむことが可能です。
そしてそれは、緊張した生活に気分転換を与えてくれますし、
何より、映像からサウンド、物語、プログラム等、
様々な要素の集合体であるゲームは、絵や音楽が少年時代の私を刺激したように、
次の時代のクリエイターを刺激して更に面白い作品を創り上げる
原動力になるとしたら、それはとても有意義なことだと思います。
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今回の面接は三次まであり、一次二次はクリエイティブ寄りのお話しをさせて頂きました。
上記の志望動機をはじめ、これからどういうものを創っていきたいかについてです。
一次面接では制作実務経験をもとに、使用機材や制作のノウハウやコツ、
実制作に関する知識の確認と、人物像の確認をされていたのだと思います。
二次面接では、業務上意見の相違があった際にはどのような対応をするか、
お客さんに向けてどれほどの強い想いで制作に挑んでいるか、という事の確認と、
どこに自分はこだわりを持っているのかという再確認だったように思います。
個人的にはサウンドとは作品に対して色を付ける仕事だと思っています。
我々の生活そのものにも音がなければ、それは白黒の色がない世界です。
人間が物質の重さや材質、形状、空間を知覚するのに音が果たす役割は大きいと
思います。細部にこだわって創れば創るほど、人が知覚できる量は大きくなります。
この面接で強く心に残った質問は、
「自分が良いと思ったものをチーム内や他の部署間で意見の相違があった場合、
あなたはどうするか?」 というものでした。
私の回答は 「イメージの共有ができるまで、チーム間ですり合わせをする」 というもの
でしたが、先方の返答は異なりました。それは、「本当に良いものは部署やチームが異なって
いても、制作者側だけでなくお客さんも含めて皆が良いと思うものであり、それを
創らなければならない」 というものです。
言葉にするのは容易で実行に移すのは困難な事ですが、言葉に出して実際それを創る
ことをクリエイターは目指すべきであり、それを実現することの面白さを
この会社で実現したいな ととても強く思いました。
三次面接では、経歴のおさらいと給与に関するお話をさせて頂きました。
やはり総合的な人物像の確認という趣きでした。
面接でお話しをさせて頂いた面接官の方々と気持ちが一致したのは、
クオリティ重視の作品を創っていきたいという事でした。
言うは易し、実際に行うのは難しいことですが、本当に良いものを
世界に向けて創っていく意思がない限り、それを実現することは何でも不可能です。
私自身、今までの人生で周囲が無理だと言うことを越えて、
目標を実現できるように生きてきました。
そしてそれは意思を捨てない限り、少しずつ可能になってゆくものだと思っています。
より多くの人達を楽しませたり、心を打ったり、
気持ちが安らぐ作品創りを今後も目指して頑張っていきたいと思います。
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今回、転職活動の中で大切だと感じたのは事前の準備です。
具体的には就職先の企業が何を目指し、何を得意とし、何を大切にしているのかを
しっかりと調べることです。調べることにより、自分が大切にしている部分と、
企業の価値観をどのくらい共有・共感できるかが明確になってきます。
また、実際の面接をある程度シュミレートしておくことも重要に感じました。
そして、その間に先方の企業様と連絡をとって頂いた(株)エリートネットワーク/杉本様
の丁寧な対応、面接前と面接後に私の状況を逐一お心遣い頂いた事が、
非常に精神的に救われました。
実際面接前や面接の後というのは、その日の緊張感や面接の内容によりテンションや
モチベーションの上下があるものです。その部分のケアという意味でも、
ご親切にご対応を頂く事ができました。このご助力なしには、三次面接まで
落ち着いて臨むことは難しかったと思っています。
転職活動は自分を掘り下げ、転職先を調べることも大切ですが、自分一人で
行うものではありません。必ず面接に至るまでに連絡をとって下さっている方々や、
途中経過の情報の共有をして下さる方がいる事で成立している部分が多分にあると
思います。
今回の転職では(株)エリートネットワーク/杉本様にご助力頂き、二人三脚で内定を
頂くことが出来ました。私が直接認識している以外にも、先方企業様への
メールや電話連絡でもお気遣い頂けたと思っております。
やはり、仕事も人と人が心を通わせて行うものですし、万事人間同士が心を通わせられる事が
建設的な結果をもたらすものだと思います。
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サウンドクリエーター職はもともと他の職種と比較しますと、部署自体の総数が
圧倒的に少なく、非常に狭き門です。私の場合はアルバイトをしながら音楽の仕事を
もらえるよう努力し、その経験をもって受託型の音楽制作会社に入社し、そこから実績を
積み、メーカー内のサウンド部署への転身に至りました。
この間、非常に遠回りをしたのですが、その努力の内容に関して、
一般的に他人の理解を得ることはとても難しいことだと思います。
それは外部から見え辛く、実際に行動に移した人しか実感として理解出来ないからです。
現状では、サウンド部署を持っているゲームメーカーというのは数えるほどです。
音を付ける作業というのは、ゲーム制作工程の一番最後の方に位置しています。
そのため、サウンド部署の仕事が常時発生している訳ではないので、会社からすると
音を付ける必要がある時だけ外部のサウンド制作会社に発注するのが常です。
その方がゲームの制作コストを抑えることが出来るためです。
サウンド部門のあるメーカー様でも、
サウンドクリエーター職の人数というのは極めて少ないです。
経験と実績、実際に仕事が始まった時に円滑に制作を進めていけるか という部分を
非常に重要視されることが常だと思います。
今までの経験から、サウンド職の採用枠に対して募集人数が30倍、40倍になることは
多々あるというのが実感です。
前職場でも、応募してくる方々の制作力や機材の知識を見極めつつも、その人物像・人柄を
採用側が大切にジャッジしていたという記憶があります。
転職活動に関わるのは決して自分一人ではないと思います。周囲に沢山の協力者が
あっての転職だと思いますので、この一文が皆様その方々を大切にしながら
今後の転職活動をより良いものとされる一助となりましたら幸いです。
この度は、(株)エリートネットワーク/杉本様に大変お世話になりました。
心より御礼申し上げます。
以上