一部上場 電力会社 国際事業本部 燃料トレーディング室
日系証券会社 コモディティ・デリバティブ部 トレーダー
島田 勇次 氏 37歳 / 男性
学歴:東京工業大学大学院 社会理工学研究科 経営工学専攻 修士課程 修了
日本証券アナリスト協会 検定会員
私は証券会社に入社後、銀行へ転職したが、色々考え、今回転職する決意をした。それまでの経緯と考えた事を綴りたいと思う。
私は大学、大学院で金融工学という分野を研究対象としてきたことから、大学院修了後、それを仕事に活かしたく、証券会社に入社した。その中で、今回の転職を決断する事となった商品デリバティブとの出会いがあった。価格の変動をうまくコントロールする金融派生商品の素晴らしさに魅了されたのだが、その中でも商品デリバティブに特に興味を持ち、いずれはこれに関連した業務でプロになりたいと心のどこかで思っていた。証券会社では商品価格の変動に苦しむ大企業、例えば、航空会社、石油精製関連企業、電力会社、製造業に対して、商品デリバティブの開発、価格付け、そして、そのリスクヘッジ取引まで様々な業務を経験し、スキル・ノウハウを高めるのに必死だったことを今でも覚えている。その後、その実績が買われ、代表的な商品市場の一つであるロンドンに赴任が決定し、生のマーケットを感じる事が出来たのは今でも心底良かったと思っている。
しかし、そのような中、イギリス赴任が解除され、それまでの経験を最大限に活かそうと意気揚々と帰国したが、コモディティ関連業務は既にグループの銀行に移管されており、私は全く未経験の投資銀行業務に従事することとなった。その後は経理部門に異動し、何とかモチベーションを保ちながらも、それなりに実績を残したが、自分の心の中では最終的にはまたコモディティ市場業務に就きたい、その為には他の市場のスキル・ノウハウを高めたいと強く願い、そういった思いから、この証券会社を退社し、銀行に転職することとなった。
銀行ではALMを担当する部署に配属され、資金繰り (コールローン、債券レポ等) に加え、株式 (指数先物、ETF) 、債券のトレーディングにも従事し、マーケットの視野を広げていった。また、外国債券の取引開始に向けたプロジェクトの一担当者として業務を遂行し、ビジネスの拡大に微力ながら貢献出来たと自負している。その実績が認められ、管理職にも昇進し、これからもっと活躍して収益に貢献してやる!! と意気込んでいたのだが、またしても異動の辞令が発令された。その時は 「またか……。」 と落胆したのを今でも覚えている。
しかも、新部署では全く未経験の業務を行う上に、管理職。私よりも部員の方が業務の事を深く知っている状況である。これはさすがにきつかった。具体的には、FX、投資信託、外貨預金の企画・営業推進が主な仕事だったが、商品自体は理解しているものの、プロモーションについては殆ど素人。また、2つのグループの兼務の管理職で、経営会議で使う部の資料作りにも追われる日々。そして、何よりも辛かったのは自分が業務未経験という理由から、具体的な指示が出せず、部員に迷惑をかけた事である。
そのような状況下、私は転職活動を再開。昔から心の中に秘めていた、商品価格の変動で業績が一変してしまうような企業を助けたい、今まで培ってきたデリバティブのスキル・ノウハウとマーケットへの知見を最大限に活かし、金融機関ではなく、実際に多量の商品の現物を取り扱っている企業に入りたいという強い思いで、再開した。
ちょうど、その時、(株)エリートネットワークの小中出さんから大手電力会社の求人案件を紹介された。仕事の内容は私がやりたいと思っていた業務そのものだった。電力会社が発電の為に海外から調達しているLNGの価格の変動リスクをコントロールする業務。勤務地は東京ではなく地方都市であった。とりあえず、話だけ聞いてみると、巨大なプロジェクトを開始しようとしていたのだが、その中に、私の希望業務が含まれていた。
話をしていくうちに、そのプロジェクトにより興味を持ち始め、それに応えるように自分の思いをすべて包み隠さず話した所、先方と私のニーズがピッタリ合致し、次のステップへ進むことになった。後日、最終面接で本社まで行く事になったが、そこでも自分の思いを熱く語った結果、面接終了後数日で合格、正式内定を頂き、この会社に転職する事になった。(株)エリートネットワークさんの幅広い人的ネットワークを通じた求人案件発掘力と私の熱い思いが今回の転職の成功に繋がったと思う。
以上が社会人になった時からの、今回の転職活動に至る経緯だが、この中で私は一貫して大事にしていた事がある。それはどのような状況に置かれても、常に自分を磨き続けることである。そして、その結果培ってきた能力が、自分がやりたい業務に必ず活きてくるものだと固く信じる事だと思う。前職では投資銀行業務を通じて企業の貸借対照表、損益計算書の扱い方を学び、経理業務ではバランスシートの作り方、そして現職では幅広いマーケットの知見に加え、プロジェクト推進力を高めることも出来た。今回の転職に至る迄の各面接で堂々と自分の思いを伝えられたのはこの裏付けがあったからこそだと思う。
最後に、転職する為には志望動機がきちんとしている事が大切だと思うが、もっと大切なのはその志望動機に見合う実務スキル・ノウハウ、知識、実力が自分に備わっているかどうかだと思う。いつ何どき転職の時機がくるか判らない人生、常に自分の市場価値を上げる事に注力し、チャンスが来たらすぐ動けるようにしておくことが大切だと思います。 ありがとうございました。
以上