法務マン、43歳で経営企画部門への転職

法務マン、43歳で経営企画部門への転職

No.872
  • 現職

    東証一部上場 スマホゲーム大手 経営企画本部  経営企画

  • 前職

    創業70年の倉庫・不動産賃貸業 法務部  法務課長

白坂 新治 氏 43歳 / 男性

学歴:中央大学 法学部 法律学科 卒
宅地建物取引主任者

■はじめに

今回の転職活動は、新卒で年商100億円の不動産業、倉庫業を営む非上場オーナー会社に入社後、22年目を間近に控え、43歳にして初めての挑戦でした。転職活動では、何を、どこまで、どれだけやらなければならないのか、すべて手探りの状況で始まりました。
約1ヶ月半の活動で、自身で納得できる会社、仕事とご縁をいただくことができました。

■新卒入社から転職開始まで

私は、新卒で前職に入社、まずは横浜の営業所に配属され、倉庫現場作業、事務、営業に至るまで、事業部門の仕事を一通り経験しました。そして転機は入社7年目 (約14年前) に訪れました。前職の会社は、法務部門 (法務機能) がまったく存在せず、弁護士にほぼ丸投げの状態でした。その状況の中で、法務部門を1人でゼロから立ち上げるよう、社命が下りました。

それから約12年間、関連会社の事業を含めた多種多様な事業について、契約法務、商事法務、訴訟法務、戦略法務、コンプライアンス、新規事業開発支援、債権管理、知的財産など、当初より同部門の実質的な責任者として法務機能の構築、運用、マネジメントに幅広く携わりました。

その後、経営企画部門 (課長)、総務部門 (部長) へ異動後も、法務部門の業務を兼務し、今回の転職先内定の約2年前から、前職の近隣の大学との共同研究の為、専任担当者として2年間同大学へ出向していました。

■転職の転機

出向先での2年間、研究という業務の性質上、法務とはまったく関係のない様々な視点での見聞を広めていく中で、出向期間 (2年間) 満了後、自分は何をしていきたいのだろうという気持ちに囚われました。自分自身が一番やりたいことは何かを一生懸命考えた結果、法務スキルを生かした仕事がしたいという結論に至りました。

そして、そのためには出向元の前職ではなく、外に飛び出して挑戦しないと、スキルを伸ばすことができないという気持ちが非常に強くなりました。前職では、法務部門立ち上げから数年間は、日々新鮮な出来事の連続でしたが、前職のヒト・モノ・カネの流れを把握し、起こり得る事態がある程度想定できる直近の環境では、これ以上、自分自身を伸ばすことは難しいと感じました。

それまでは、転職の 「て」 の字も考えたことがありませんでしたが、今思い出すと、法務部門時代、社内外の複数の方から 「転職した方が良い」 とアドバイスをいただいていました。今思い返すと、そのことにもっと早く気づけば良かったというのが本音ですが、今回、行動を起こし、結果を出すことができて本当に良かったと思っています。

■転職活動の開始

今回の転職活動では、株式会社エリートネットワーク様を含め、複数の転職支援会社 (以下「エージェント」といいます) に登録しました。理由は2つあります。第一に転職に関する情報をできるだけ多く集めるため、第二より多くの求人先を確保する為です。

前者について、具体的には各エージェントに対し複数の共通質問事項を用意し、同じ質問を振りました。しかし、各エージェントの認識、意見にはかなりのずれがあり、絶対的な正解はないという理解をし、自分自身にとって一番素直に受け入れられる意見を採用する (=自分で決める) しかないという結論に達しました。

後者については、今回の転職活動方針として、業種を限らずに、後述の法務スキルを生かせる求人にできるだけ多く応募することだったので、結果的に紹介求人案件の傾向 (業種等) が、各エージェントにより大きく異なったことで、予想以上に多くの求人に応募することができました。

■アピールポイントとウィークポイント

43歳になると、求人の数は20〜30歳代に比べ、目に見えて減ってくるのは否定できません。少ないチャンスを確実にものにするために、一番必要なことは何かを考えました。結論としては、自分自身のセールスポイントを明確にして一番得意なスキルで売り込んでいくという方向に決定しました。具体的には、業種を問わず、12年間積み上げた法務スキルを生かせる職種 (法務部門にはこだわらない) の求人を探し、応募していくことでした。

前職の業種は不動産賃貸業、倉庫業ですが、関連会社を含め多種様々なビジネスに積極的にチャレンジする会社だったので、自分自身の棚卸しを進めた結果、法務部門時代、自身が従前認識していた以上に広範囲な経験をしてきたことを職務経歴書に落とし込むことにより、面接で説明することができ、大きなアピールポイントとなりました。

私自身の一番のウィークポイントは、英語のスキルが全くないことです。前職では、会社の方針として、管理職は最低でもTOEICスコア600点以上を速やかに1年以内に取得することが求められていました。
しかし、私はその重要性を認識することなく、TOEICのスコア取得を放置したまま転職活動に踏み切りました。しかし、このスコアを保有しないために、応募可能な求人数は半分以下に減りました。 たとえ、ビジネス交渉レベルの英語スキルがなくとも、採用側は、書類審査の段階で、客観的な数値、資格で振り分けをするということを痛感しましたが、既に活動開始の状況でしたので、素直に、英語に関する資格はないことを認め、求人先との面接でも正直に状況を話すことを心掛けました。

■気をつけたこと (書類作成、面接について)

職務経歴書、履歴書については、自分自身の 「商品パンフレット」 であるという意識を持ちました。
中途採用は、求人先が相応のコストを掛けて行うものですから、採用するのであればできるだけ良い商品を購入したい気持ちがあるはずです。
そして、「良い商品」 として購入される為の最初の関門が職務経歴書、履歴書だということ、選択される為には求人先に上記情報を部分的に読んでいただいても容易に理解され、かつ興味を引く書き方をしなければならないという意識を強く持ちました。
転職情報サイト等では、職務経歴職書はA4用紙2〜3枚にまとめたほうが良いというアドバイスをされているところが多いと思います。最初、私自身も、21年間の経歴をA4用紙3枚にまとめられるよう、残す (表現する) 経歴と、捨てる (表現しない) 経歴に分けることを意識して、項目を整理し、できるだけ1つの項目が冗長な文章とならないよう、表現上多少の不足があっても、簡潔に1行 (長くても2行) でまとめる形をとりました。

転職支援会社のWEB情報等には、セオリー的な玉石混交の情報がありますが、最後は自分で考えて、求人先に合理的な説明ができ、求人先に見てもらえる (と自信を持てる) 書類であれば、上述のWEB情報等は参考程度でよいと思います。自分自身で作成した書類、そしてその内容には自信を持つことが大切だと思います。

もし、作成した書類に不安があれば、仮に書類審査を通過しても、面接で見透かされると思います。私自身も、面接1、2社目は、作成した書類とその根拠に十分な自信が持てず、自分自身を素直に表現することができませんでした。

しかし、面接で成功した点、失敗した点 (成果と反省) を紙に書き出し、特に失敗した点を次にどう生かしていくか、どう改善するかを真剣に考え、次回の面接では、より素直に自分自身を語れるよう、訓練しました。面接の数をこなしていく中である時点から自分自身を強く信じることができるようになりました。
こうして成果と反省を踏まえて対策を進めていくことで、自身の強み、弱みがわかってきました。強みはより強調する事ができますし、弱みは把握することで、対応方法 (話の転換、弱みを強みに繋げていく) が見えてきました。

そして、転職活動の日々を重ねていく中で、自分自身 (強み・弱みも含めて) を知り、素直に自分自身に向き合うことができるようになりました。素直になることで面接結果 (評価) に一喜一憂することはなくなり、「人は人、自分は自分」 「できることはできる、できないことはできない」 とフラットな意識を持ち活動に臨むことができるようになりました。

また、求人先との面接の機会を得たら、事前にできる限り相手を知ることに注力しました。今回の活動では、ホームページ、会社四季報、業界地図、WEB上の記事、(上場企業については有価証券報告書) 等で必要な情報を入手し、志望動機、自身の強み、弱み等の項目を加えてA4用紙1〜2枚にまとめました。まとめる内容は、いわゆる美しい文書ではなく、自分自身が把握できればよいメモ帳の拡大版のようなものでしたが、情報の見える化、整理を進めることができました。また、書式は1回作り込んでしまえば使い回しが利きましたので、面接直前の確認等で大変重宝しました。

■気をつけたこと (健康、身だしなみ他)

2つあります。それは、[1] 健康に気を遣うこと、[2] 身だしなみに気をつけること、の2点です。

[1] 健康に気を遣うこと
年齢が43歳ということもあり、20代、30代の頃と比べると持久力、抵抗力は落ちています。しかし、チャンスは一度きりです。インフルエンザ等の病気に罹患した、怪我をして面接に行くことができないという言い訳は通用しないと考えました。最大限注意を払ったにも拘わらず、なってしまったものは仕方がないですが、心身共にできる限り良好な体調を維持すべきであり、そのために、睡眠時間、規則正しい食事、適度な運動、の3点を心掛けました。

在職しながらの転職活動で、時間、達成度に当然限りがありますが、まず、その中で、「睡眠」 だけは最優先で何が何でも確保するよう努めました。睡眠不足では、頭の回転も鈍ります。せっかく準備したことも、頭の回転が鈍って発揮できなければ何の意味もありません。端的に言えば、活動準備の時間を削ってでも睡眠時間を確保しました。
食事については、仕事柄、規則正しくとれない方も多いと思います。3食すべては難しいですが、朝だけでもしっかりと確保するようにしました。崩れたリズムを取り戻し、1日のリズムを整えるのは朝食です。
適度な運動については、限られた時間で効果を上げるために、雨の日以外はほぼ前職の勤務先の1駅手前で降り、徒歩に切り替えました (電車利用比+15分)。そして勤務先に近い神社にお参りして心を整えました。最初は15分間を転職活動に充てたほうがよいのではないかという考えもあり、慣れないことを始めるのは辛かったですが、歩いていると、頭が活性化し、リズムができてくるとそれが心地良く、心身共に充実していきました。

[2] 身だしなみに気をつけること
活動を進める中で、書類審査を通れば、求人先の方と会う機会 (面接) が必ず生まれます。面接はワンチャンスで、たった1時間前後の面談のなかで 「値踏み」 されることを意識しました。果物屋に例えると、店頭にたくさんのリンゴ (求人先を志望するライバル) が並んでいて、その中から特定のリンゴ (自分自身) がお客さん (求人先) に選ばれなければならないということです。

身だしなみを整えることは当たり前のことだと思われるかもしれませんが、案外きちんとできていないことに気づきました。髪は整っているか、肩にフケは落ちていないか、眼鏡は汚れていないか、スーツ、パンツ、ワイシャツはヨレヨレになっていないか、靴は汚れていないか、持ち物はビジネスパーソンとして恥ずかしくないか (少しくだびれていたビジネスバッグを買い換えました)、背筋を伸ばして座れるか、座った時の手の位置はどうかなど、出発時はもちろん、面接直前にも求人先至近の洗面所等で最終チェックをしました。

アポイント時刻ギリギリで面接場所に到着し、そのまま面接に臨んだのでは、落ち着いた気持ちで採用先とのキャッチボールができないと考え、そのための時間を工夫して作り出し、身だしなみのチェック、採用先情報の最終確認、そして心を落ち着かせて自分に自信を持てるよう、できる限り気を配りました。
非常に細かいことかもしれませんが、これらの些細な注意の積み重ねが、結果としてライバルに勝つ要因となるかもしれないという気持ちを持って活動に臨みました。

■時間の使いかた

活動に費やせる時間には限りがありましたが、以下のような方法で隙間の時間を活用し、準備を進めました。
・求人先ホームページの情報は通勤時にスマートフォンで調べ、スマートフォンのメモ帳機能にコピーアンドペーストして、上述のA4シートに落とし込む。
・気になったこと、気づいたことはすぐにスマートフォンのメモ帳機能に打ち込む (又は手帳にメモする) → 必要に応じて上述のA4シートに落とし込む。
・スマートフォンの録音機能を利用して、自己紹介、想定される質問等を録音、通勤時にイヤホンで聞く (マスクをして、口元でつぶやきました)。
・自己紹介等は家族等、自分自身をよく知る人に聞いてもらい、違和感がないか確認する。
・面接の練習はとにかく声に出して体に叩き込む。 (自己紹介、志望動機は早口でよどみなく話せるレベルにする)

■株式会社エリートネットワーク安藤様

在職しながらの転職活動で、限られた時間でなるべく多くの応募先を見つけるため、株式会社エリートネットワーク様以外にも複数の転職エージェントを利用しました。しかし、私自身が、一番素直に受け入れることができたアプローチをして下さったのが同社でご担当いただいた転職カウンセラーの安藤様でした。
私がお会いした他社エージェントの担当者の方々がたまたまだったのかもしれませんが、安藤様以外は、どうしてもビジネスライクな感じが否めず、転職活動にかける意気込み、熱い思い、現実の厳しさを話していただけたのは安藤様だけでした。
また、エリートネットワーク様がお持ちの求人先情報は表面的なものではなく、明らかに足で稼がなければ入手できないような情報も数多く提供していただきました。面接前後にいただくアドバイスも、攻め方、守り方など、自分自身で事前に調査した情報をより一層補強するもので、自信を持って面接に臨むことができました。

■最後に

「転職」 とは何かということについては、人それぞれだと思います。私自身にとって、一度きりの人生の中で、より広い世界を知ることは必ず楽しい人生になると信じ、今回の活動を決意しました。
今回の転職終了後、通勤途中でほぼ毎日お参りしていた神社に以下の言葉が書かれたポスターが張られているのに気づきました。それは、豊田佐吉翁の言葉で 「障子を開けてみよ 外は広いぞ」 というものでした。おそらく活動中も掲示されていたものだと思いますが、転職活動を終えて初めて気づき、心の中にすっと入っていきました。転職活動をして良かったと改めて心から思った瞬間でした。

転職活動を通じて一番感じたことは、社会人生活の中で、初めて自分自身の棚卸しを突き詰めて行い、自分自身を振り返ることができたことです。そして、一番大切なことは自分自身を信じることでした。迷いが出たら躊躇せず、いかなる方法を使ってでもその迷いを解決することでした。転職活動は心身共に大きな負担が生じることは間違いありませんが、それを補って余りある広い世界が待っていることを知ることができました。

今回の転職活動を支えていただいた、安藤様をはじめとするエリートネットワークの皆様に感謝致しますと共に、新しいステージで、支援していただいた皆様の期待を裏切らないチャレンジを進めていく所存です。

以上

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