【東証プライム上場 財閥系 製紙メーカー】
研究開発本部 植林木の研究・開発職
【国立研究開発法人の研究機関】
気象変動に関するポスドク(契約研究員)
研究内容:気候変動の影響予測に関する研究
日比野 輝 氏 32歳 / 男性
学歴:国立 中高一貫校 卒
国立大学 卒
国立大学大学院 生命科学系 修了
博士号(理学)
博士論文テーマ:海外地域の特定木本植物の分類学・進化生物学研究
セールスフォース認定アドミニストレータ
ITパスポート
R、Python、Fortranを用いた統計解析スキル
私は、(株)エリートネットワークの転職カウンセラーの前田様にご協力頂き、国立研究開発法人のポスドク研究員から、プライム上場企業である国内メーカーの研究開発職へ転職することができました。
近年は「多様性」という言葉をよく聞く時代となり、多様なキャリアを持つ方や、多様な働き方をされている方がたくさんいらっしゃいます。
しかし、そんな状況でも、ポスドク研究員から他業種や民間企業への転職例はまだまだ多いとは言えません。
また、ポスドク研究員ごとにひとりひとり経験してきた内容や、置かれている状況にばらつきがあります。
それに加え、ポスドク研究員の同業者である研究員や教員の方々の多くは、他業種・他業態への転職経験が無い場合が非常に多いのが現状です。
そのため、ポスドク研究員の転職活動は、なかなか汎用性のある方法というものがありません。
特に私は、情報収集の面で苦労しました。
幸運にも恵まれた1サンプルではありますが、私の『転職体験記』が、ポスドク研究員から他業種へ就職を目指す方の一助となれば幸いです。
私は、中学生時代に森林科学に関心を持ったことがきっかけで、研究者を志すようになりました。
森林科学に関心を持つようになってからは、大学やNPO法人、地方自治体等が開催する森林教育活動にも積極的に参加しました。
そのような活動を続ける中、高校生になり、進路選択が迫られるようになりました。
当時の私にとって非常に悩んだことが、どの学部に進むべきか、という問題でした。
当時、参加していた森林教育活動に講師として来て下さった方々の出身学部は、農学部、理学部、教育学部、経済学部、教養学部と多岐に亘っていました。
また、それぞれの方から伺った話のどれもが魅力的で、どこで学ぶのが最適なのか、なかなか決め切ることができませんでした。
その中で、後の研究室配属や、森林科学に関する基礎科目の多さ等の観点から、農学部か理学部に進学し、どうしても他学部で学びたくなった場合は、大学院で専攻を変えるという方針を立てました。
ただ、農学部に進学するか、理学部に進学するかについては、答えを出すことができませんでした。
そんな中、リベラルアーツ型の学部で、自分自身で自在に独自のカリキュラムを組む学部と出会いました。
ここでなら、農学部、理学部の森林科学に関する科目が自由に受講できると考え、受験をし、運良く合格しました。
学部4年間では、農学部、理学部、工学部等の専門科目を受講し、最終的に理学部で卒業研究を行いました。
その後は、農学系・工学系・生物科学系の複合型分野の大学院に進学し、森林科学の研究を進め、理学博士の学位を取得しました。
学位取得までに、各種統計解析、遺伝情報に関する分子実験、国内外の森林での野外調査等を経験しました。
博士課程修了の年に、学術研究業界での研究者を志すか、民間企業での研究者を志すか、悩みました。
すぐに結論を出すことはできなかったものの、民間企業の就職には期限もあるため、まずは民間企業への就職活動に挑戦してみることにしました。
当時は、研究員という職名であることにだけに拘り、シンクタンク業界への就職活動を行いました。
幸運にも、2社から最終面接まで呼んで頂くことができたのですが、いずれも、学術研究業界か民間企業かという選択を決め切ることができないまま臨んでしまい、あいまいな返答をしてしまったこともあり、不採用でした。
この時、自分自身で就活の覚悟をし切れなかったことを大きく反省しました。
その後、学位取得の目処が立った時点で、学術研究業界でのポスドク研究員の公募を探しました。
就活時の失敗を踏まえ、今後の自身のキャリアも意識した上で、次の条件に絞ってポストを探しました。
一つ目は、大学以外の研究機関であることです。
将来的に任期のない職に就くため、まずは自身の業績を増やす観点から、研究に注力できる環境に身を置きたいと考えました。
二つ目の条件は、環境分野の研究ができるポストであることです。
森林科学で学位を取得したものの、ピンポイントな森林分野の研究者としての任期のない正規採用のポジションは非常に狭き門となっています。
自分自身の研究の応用可能な分野を広げることを目的とし、その上で森林科学と親和性の高そうな、環境分野でポストを探すことにしました。
そして、国立研究開発法人の研究機関での気候変動に関する研究プロジェクトのポスドク研究員として、任期付きで採用して頂けました。
主に気候変動に関する研究プロジェクトを担当しました。
PythonやFortran等のコンピュータ言語を用いて、過去・将来の気象データの整形や解析を行いました。
このほか、研究に扱うデータの整形や作成に関し、研究補助員の方々に協力を頂いた際の進捗管理や指導の一部も行いました。
また、研究結果に関する報告書の執筆や論文、研究資料の作成を行いました。
大学でのポスドク研究員ではないため、学生の指導という業務はほとんどありませんでしたが、そのほかの業務に関しては、一般的なポスドク研究員の業務と大きな違いはなかったのではないかと思います。
転職を考えるようになったきっかけは2つあります。
一つ目は、自分自身が前職での研究に適応することができなかったこと、もう一つは、ポスドク研究員よりも安定した職を求めるようになったことです。
特に大きなきっかけとなったのが、一つ目です。
私は、自分自身の専門である森林科学と親和性があり、また、自分自身の視野や経験を広げることができると考え、気候変動分野に飛び込みました。
確かに正反対の分野ということはなく、気候変動研究の中にも森林科学を対象としたものはあったのですが、大前提となる気象分野の研究・解析方法に慣れることに大苦戦しました。
まず、野外でのフィールドワーク主体だった研究スタイルが、研究室内でのプログラミング主体なものに変わりました。
博士学生時代は1年のうち2~3ヶ月は野外調査に行く生活をしており、朝から晩までプログラミングという状況は初めてでした。
前職に就いて最初の数ヶ月で、自分自身が野外調査のない状況にストレスを感じるタイプだったということを認識しました。
ただ、この研究スタイルについては、時間経過と共に徐々に慣れていくことができました。
その一方、気象分野のデータの大きさや規模感には、転職間際になっても、しっかりと適応することはできませんでした。
博士課程までの経験では、データのサンプルサイズは100ほどのものが多く、それぞれを精査することができていました。
それに対し、気象分野のデータは、気温や降水といった、対象となる気象要素それぞれに対し、日本全域を数万個の格子で区切ったものが365日分という規模です。
一要素であったとしても、一千万を超えるデータとなり、それをさらに研究用に整形し、解析する必要があります。
整形・解析用のプログラムを作成し、データに反映させるたびに、原因不明のエラーやバグが出現します。
野外データの規模であれば、直接データを見て問題箇所を探すこともそこまで難しくはないのですが、気象データの場合、それが非常に難しかったです。
私自身、博士課程時代にプログラムを書いて解析するという経験をそれなりに有していると思ってこの分野に飛び込んだのですが、要求されるプログラムが全く異なっていることや、大きなデータを扱うことの難しさを痛感しました。
結局、最後まで大きなデータに慣れることができず、効率よく研究を進めることができませんでした。
二つ目の理由である、安定した職を求めるようになったことについては、結婚して自身のライフステージが変化したことによるものです。
博士学生時代は、学術研究業界に対して、決して安定はしていないものの、自分自身の興味分野をとことん追求することのできる夢のような業界だという印象を持っていました。
ポスドク研究員も、任期はあるものの、過去と比べると、募集自体は多くあるため、続けていくことができる職ではあると思います。
ただ、結婚し、家族の将来も意識するようになった際に、どこかで安定した職に就く必要があると考えるようになりました。
以上の2つの理由を踏まえた上で、転職を決意しました。
転職を決意した中で、最初に苦労したのが、ポスドク研究員や博士課程修了から民間企業等へ転職・就職した方の具体例が非常に少なかったことです。
検索してもなかなか出て来ず、また、関連する書籍等の情報はかなり偏った内容の印象を受けました。
幸いなことに、学生時代の知人で博士課程修了後に民間企業へ就職した方がおり、博士の就職に関する情報を教えて頂くことができました。
その中で知ったのが、(株)エリートネットワークさんです。
『転職体験記』にポスドク研究員の方々の具体例が載っていて、その内容に共感できる点も多く、是非、この紹介会社にお願いしたいと考えるようになりました。
一般に、転職活動をする際は、複数のエージェントに登録するのが通例だと聞いていましたが、私はエリートネットワーク1社のみに登録しました。
転職活動を開始するにあたり、学術研究業界へのこだわりを全て無くしました。
先述の理由から、前職ではなかなか思うように研究を進めることができなかったため、自身の業績を増やすことができませんでした。
転職を決意した当時は、ポスドクも含め、森林分野のポストが少なかったため、学術研究業界から離れることを覚悟しました。
更に、研究内容がそのまま仕事になることはほぼないとも考えていたため、森林科学や気象分野から離れ、未経験の分野になる可能性もあることも覚悟していました。
ただ、そんな中でも、自分自身の研究経験や実地の調査経験が少しでも活用できる仕事があれば嬉しいと思っていました。
エリートネットワークの前田様に自身のバックグラウンドや転職に関する希望等をお伝えしてすぐに、40社近い応募先候補を提示して頂きました。
その中には、シンクタンクやコンサル等、博士修了者も採用すると聞いたことのある企業から、金融機関や監査法人、今回転職先に決まった国内メーカーまで、多種多様な業種の企業がありました。
そのほとんどが私の経験に合致するもので、こんなにもたくさんの応募先があったことにまず、驚きました。
博士課程学生時代には、博士修了者は就職先が無いとよく聞いていましたが、きちんと探す方法を知ってさえいれば見つけることができるのだと実感しました。
前田様には、応募先企業候補のリストアップをはじめ、その後の書類作成から応募、実際の面接まで真摯にサポートして頂くことができ、その全てに感謝しています。
私は、先に、探し方によって就職先が見つかるといった旨を書きました。
私の転職先での業務内容は、森林科学に基づく研究・開発業務です。
転職活動を行うと決心し、自身のキャリアを見つめ直した際に、森林科学とは縁がなくなる可能性も一旦は覚悟しました。
もともと森林科学を活用する職は学術研究くらいしかないのではないか?と思い込んでいたこともあり、この企業が募集をしていることを教えて頂いた時は、本当に驚きました。
特に迷うことなく、真っ先に応募したいと考え、お伝えしたと思います。
応募先の企業の方のご対応も素早く、応募の数日後に一次面接が決まり、そのまま最終面接まで驚くようなスピードで進んでいき、内定を頂くことができました。
一度は関わらなくなることも覚悟した森林科学の知見を用いた職に就くことができ、本当に感謝しています。
私は、ポスドク研究員の転職に強いと考え、エリートネットワークへ登録しました。
まさに、エリートネットワークにお願いしたからこそ、転職先の職種に就けたと考えています。
以上の経緯を基に、転職活動で重要なことは、自分自身のアカデミックバックグラウンドやキャリアを踏まえた上で、それに合った職探しの方法を用いることだということに気がつくことができました。
今回の転職活動で、自分自身の博士としての経験を活かせるぴったりの職に就くことができたと思います。
フルタイムで、且つ学術研究業界以外の場所で働くことは初めての経験なので、不安もあります。
それでも正社員として、学術研究業界から産業界へ視点を変えた形で、自分自身の興味・関心のある分野である森林科学と引き続き向き合うことができることが、今はとても楽しみです。