東大卒の国家公務員、民間企業の意思決定や投資判断の実態を知らぬまま政策立案するもどかしさを脱したく、財閥系総合商社へ転職

No.1606
  • 現職

    【東証プライム上場 財閥系 総合商社】
    エネルギー関連事業部 次世代燃料の事業構想、企画立案・運営

  • 前職

    【国家公務員】
    中央官庁 霞ヶ関勤務 総合職

唐崎 真吾 氏 29歳 / 男性

学歴:東京大学 経済学部 卒
TOEIC 910点

① 新卒での就活

新卒での就活時は、国家公務員しか考えていませんでした。
日々の暮らしや国の豊かさは、個々の経済活動が積み重なった結果であり、経済活動の活性化を通じて日々の生活を豊かにすることができるのではないか、また、最終的には営利を目的とする民間企業ではなく、政府機関だからこそ、目先の利益に左右されず、中長期的かつ公平に経済発展に寄与することができるのではないかと考えました。

学生時代の問題意識は、やや大雑把ではありましたが、根本的には今も変わりません。
ただし、約6年半の国家公務員としての勤務経験の中で、民間企業は全てが利益優先という考え方は必ずしも正しくなく、大前提として、企業活動を通じてどう社会貢献できるのかを考えていることを知り、また、中長期的に取り組みたいことが経済発展という漠然としたテーマから、より具体化していきました。
そうした背景から、自分が本当にやりたいことは、政府機関ではなく民間企業でこそ実現できるのではないかという想いを抱き、今回転職を決意するに至りました。

② 入庁した政府機関での担当業務

政府機関では、6年半で3つのポストを経験しました。
1つ目は、中小企業向けの政策を取りまとめる部署で総括係員として勤務しました。
私が就職した政府機関では、大半の職員が最初に経験するポストで、まず政府機関の仕事の基本動作を学びます。予算や国会がどのようなプロセス・スケジュールで決まり、その中で末端の職員として、自分が所属する部署を円滑に回すために何をすべきかといった具合です。
特に取りまとめ部署であったため、覚えることが多岐に亘り、また同時に複数タスクが進行することが当たり前で、いかに効率よくポイントを押さえて情報をインプットするか、仕事の優先度をつけてマルチタスクをこなすのかといった基本的な能力はここで身につけました。
その他、豪雨や台風、新型コロナウイルス感染症といった災害対応業務にもあたり、政府機関にしか果たせない役割を強く実感すると同時に、政府機関で日々直面する業務・情報と災害時に見えた個々の企業の実態にどこか乖離を覚えたことも事実です。

2つ目は、税制改正業務を取りまとめる部署で総括係長として勤務しました。
同じく取りまとめるといっても、取りまとめて上司に報告する業務から、取りまとめた成果物を持って自ら他部署や他省庁・他機関と調整する業務を担うようになり、仕事の重みと責任感は比較できないほどでした。ここでも、特に法人税を中心とする税制改正業務全般を理解する必要があったため、日々幅広い情報をインプットし、かつ自分自身の言葉で説明できるようアウトプットを強化しました。また、かなり多忙な部署かつその部署での工程管理が組織全体に大きく影響を与えたため、ミスなく適切な工程を組み、予定通り進むよう他部署も含めて全体の進捗を管理する能力を身につけることができました。
一方で、日々「税制改正を通じてどう企業行動を変容させるか。」を考える中で、そもそも企業行動とはどうなっていて、例えば、税制改正が行われると企業の中でどういった変化が生じ、企業としての投資判断に至るのか、机上の理論としては理解するものの、本当のところが理解できていないのではないか、という自らに対する不安と疑問を覚えるようになりました。

3つ目は、次世代空モビリティ産業を担当する部署での総括補佐として勤務しました。
課長補佐となれば、特定の分野の政策立案・遂行を一手に任されることとなり、日々業界の方々と意見交換をさせていただき、現状と課題を私なりに理解した上で、具体的な政策立案(例えば、新しい支援措置の創設など)に繋げていきました。
これこそ、政府機関の本質的な業務であると私は考えており、非常に貴重な経験でしたし、複数の情報から全体的な課題を明らかにし、それに対する複数の打ち手を考え、メリット・デメリットを比較し最終的な解決策を決定することや、収入と支出のバランスや構造的課題など(政府機関ではありながら)ビジネスモデルを深く分析することなど、政府機関に限らず今後仕事をしていく上で重要な能力を身につけることができたと考えています。

なお、いずれの部署も多忙ではありましたが、霞ヶ関全体で働き方改革の流れが強く進んでいることもあり、6年半の短い在籍期間でしたが、その中でも徐々に働きやすく、特に残業時間が減っている実感はありました。
私自身、結婚や子供の誕生を経て、生活スタイルが変化し、家庭と仕事の両立に悩んだ時期ももちろんありましたが、それは今回転職を決意する直接的な理由ではありません。
それよりも、自分が将来的にどういう仕事をしたいのか、何を実現したいのかを考えたとき、一番望ましいのが、政府機関ではなく民間企業だと私は考えたという点に尽きます。

③ 転職するに至ったきっかけ

きっかけとなる出来事が2つありました。
1つ目は2ポスト目で感じた「企業行動」を本質的に理解できていないことに対する不安と疑問があったことです。
具体的には、自分は企業行動を変容させて、世の中をより良くしたいと考えている。企業行動の方向性、企業が投資すべき先は明確だが、そもそも企業行動が本質的に理解できておらず、どうすれば企業行動が変わるのか自分が納得できるレベルで理解できない。議論している内容は論理的だが、実情はどうもそれほど単純ではなく、実際の意思決定や投資判断はより複雑であると漠然と感じていました。
3ポスト目で民間企業の方々とお仕事させていただく中で、ある程度はこの問題意識に対する答えが見つかりましたが、やはり本質的理解をするためには、自らが民間企業に転じて身をもって体感・経験するしかないと考えました。

2つ目は3ポスト目で感じた、政府機関と民間企業の境目、政府機関でできることの限界です。
特に個別の産業領域となればなるほど、個々の企業とお互いの顔が見える距離感で仕事をすることになりますが、政府機関である以上、当然ながら公平公正に業務を遂行する必要があり、特定の企業ではなく、常に特定の産業・業界のための政策を立案します。
これは政府機関の在り方として正しいのですが、近い距離感であるが故に、その企業が困っていることが分かっていても、個別課題にタイムリーに対処することはできない。もしくは、そもそも政府機関である以上、その課題には対処できず、民間企業自身に頑張ってもらうしかない。外から応援するしかない。何度もこうした経験をし(繰り返し、政府機関としては正しい行動であるものの)、私個人としては目の前に課題があることが明らかなのにそれに対処できないという歯がゆい思いをしました。

加えて、少なくとも私が所属した政府機関では、一般的に2年で人事異動があります。
私自身のキャリアパスが物語っているように、特に若手のうちは異動の幅も非常に大きく、民間企業で言えば、違う会社に転職を繰り返すようなものだと私は考えています。
これも政府機関、特に総合職として将来の幹部候補として採用されている職員には適切なキャリアパスだと思いますが(将来的に大きな意思決定を行うためには、特定分野に偏った知識・経験ではなく、多様な分野から得た多角的な視野と人脈が必要であるため)、特に3ポスト目で特定分野に強い関心を持ち、2年と言わず3〜5年と長くその分野に関わっていたいと考えた時、国家公務員総合職としてのキャリアパスと私自身が望むキャリアパスの乖離に気がつきました。
これに対して、私が仕事でご一緒する民間企業の方々は数年間同じ業界・部署で働いておられ、私の前任や前々任とも仕事をされています。私にとってはこれがとても羨ましく思えました。もちろん、国家公務員として希望をすれば3〜5年の間、特定の分野で勤務することもできたと思います。
しかし、その道を選ぶことは所謂ジェネラリストではなく、スペシャリストになることを意味し、政府機関における総合職としての評価という意味では、ジェネラリストに対して劣後すると私は考えました。
自分のやりたいことに挑戦するとして、それが真っ当に評価される場所で働きたい。それが私の思いです。

④    コンサルティングファーム以外に絞った転職活動

国家公務員からの転職ですと、業務上の親和性も高いことから、コンサルタントが主流ですが、私自身は転職を通じて、自ら事業活動にチャレンジしたい。また、短期的ではなく中長期的に特定の分野に取り組みたい。と考えていたことから、最初から事業会社のみを考えていました。
特に転職前の職場で3ポスト目に、ディープテック分野かつ新規領域に取り組んだ経験から、最初の希望は製造業(特にディープテック分野)で新規領域にチャレンジできる会社です。
3ポスト目で経験した業界にチャレンジすることも考えましたが、今後も関与し続けたいと心から思える業界ではあるものの、人事異動でたまたま巡り会ったこともまた事実であり(それまでは、その業界に関連する単語をうっすらと聞いたことがある程度)、敢えてそれ以外の分野にチャレンジすることで、自分の可能性を広げたい、前提知識がないところから1から取り組んでみたいと考えました。

なお、最終的に総合商社に転職することとなりましたが、実は(株)エリートネットワーク様にご相談するまで、総合商社は全く考えていませんでした。
前述の通り、私の経験から製造業、デープテック分野に寄っていたことと、そもそも新卒時の就活を含めて、総合商社を見ていなかったため、総合商社に対する知識が欠如していたことが理由です。
しかし、ご対応いただいた株式会社エリートネットワークの転職カウンセラーの高橋様との面談を通じて、働き方や収入面も含めて丁寧に転職市場全体をご説明いただき、自分のやりたいことを実現できる場所の一つとして総合商社の可能性に気づくことができました。何よりこの点に一番感謝しています。
総合商社の採用プロセスについても、過去の転職支援経験から詳細にご説明いただき、自らポストを絞って応募する形式ではなく、ポストを絞らずに応募し関心を持っていただいた部署と面談を進める形式を取りました。
きっと自分一人であればポストを絞っていたと思うのですが、適切な判断材料をいただき、より自分の可能性を広げたいとの思いでポストを絞らないことを決意しました。
結果的に、全く新しい領域でありつつ、自分が関心を持つ業界とも繋がりがある分野で採用していただくことになりました。

⑤    転職活動を通じて気づいた点、反省点

転職活動を通じて、挑戦しようとさえ思えば、様々な選択肢があることに改めて気がつきました。
特に私の場合、新卒の就活時は国家公務員一本に絞っていたことから、それ以外の業界に関する理解が浅く、多くの人が新卒の就活時に経験する業界分析のプロセスを転職活動の中で初めてしっかりと経験しました。

加えて、キャリアパスが多様であるからこそ、常に自ら主体的に将来どうありたいかを考えておく必要性を強く感じました。
特定の組織に生涯勤めるのであれば、組織にキャリアパスを任せておくことも可能ですが、人材の流動性が高まる現代において、本当に生涯を通じてやりたいことを実現するのであれば、組織内外のキャリアパスの選択肢を意識し、時折キャリアパスを見直す必要があると思います。その結果、組織内のキャリアパスを歩むことは正解ですが、組織外の選択肢を考慮することなく、組織内だけで考えてしまうことは、特に常に挑戦したいと考える人にとって勿体無いように思います。

最後に反省点ですが、転職のタイミング及び後任人事において、転職前の職場・同僚に負担をかけてしまったことです。
民間企業からの転職と違い、特に国家公務員から転職する場合は、私が想像していた以上に退職時期の調整で難航しましたし、人事異動の時期が概ね固定されており、かつ国家公務員自体も人材を求めている中では、必ずしも即座に後任が配置される訳ではありませんでした。
もし、私のように国家公務員から民間企業への転職を考える方がいらっしゃれば、もちろん自分が挑戦する先を選ぶことが最優先ですが、そうした観点も頭の片隅に置いていただくのが良いと思います。

⑥    次の職場にかける意気込み

転職は私のキャリアにおける大きな転換点です。これまで、国家公務員として目指してきた目標を、今度は民間企業の立場からより具体的な形で実現すべく挑戦します。
前職でも充実したキャリア・経験が得られていたと感じるからこそ、5年後10年後に今回の転職を振り返った際に、「あの時の判断は間違っていなかった。転職して正解だった。」と心から言えるよう、全身全霊で取り組みたいと思います。

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