エンジニア、知財と中小企業診断士を活かし、製造業から金融機関へ …… Deep Learningが与えた衝撃 ……

エンジニア、知財と中小企業診断士を活かし、製造業から金融機関へ …… Deep Learningが与えた衝撃 ……

No.1064
  • 現職

    一部上場 大手金融機関 知財ビジネスコンサルタント

  • 前職

    一部上場 有名精密機器メーカー ソフトウェア開発部門 開発統括
    → 知的財産部門 知財戦略担当

倉持 崇史 氏 39歳 / 男性

学歴:東京工業大学 機械制御システム工学科 卒
東京工業大学大学院 機械制御システム工学専攻 修了
中小企業診断士
知的財産管理技能士2級
基本情報技術者
TOEIC650点

前職へは大学に用意されている推薦枠を利用して入社しました。大学院での研究内容に近い会社を選んだという面はありますが、深い考えはなく、何となくメジャーで安定していそうな会社を選んだというのが実情でした。入社後、1か月くらいの研修を経て配属先が決まるシステムだったのですが、大学院で医療画像に画像処理を施しモデリングや解析を行う研究に携わっていた私は、画像処理を専門とする研究部署へ配属されると良いなと思っていました。

しかしながら実際に配属されたのはバリバリの製品化を行うソフトウェア開発部門でした。今思い返せば、この配属先部署での経験はとても貴重で面白いものでしたが、心のどこかでずっと何か違う、と感じてもいました。この心の歪みから、入社直後から今後のキャリアを考え続け、(これは良くなかったかな?と今では思っていますが)どこか会社に対する不満も持っていました。ただ、何となく選んで就職したくらいですから、転職を実行に移すまでの強い気持ちや意思もなく、丸5年間中途半端な状態でした。

自分にできたことと言えば、社内で異動先を探すことくらいでした。前職の会社では社内公募という仕組みがあり、その中で一番面白そうだと感じた ”知財戦略” という言葉に惹かれ、知的財産部門へ異動しました。
異動背景には開発部門での経験がありました。前職で担当していた製品のビジネスモデル的に、ソフトウェアはサブであり、メイン収益源である消耗品を売るためのツールにすぎませんでした。ただ、その消耗品ビジネスも斜陽になりつつありましたので、私は、ソフトウェア単体でも利益確保できるようにすべき、周辺に新規サービスを作って収益化すべき、等と考えていました。

しかし、消耗品が売れれば良いというこれまでの文化から、ソフトウェア開発部門には戦略的に物事を考える人も環境もありませんでした。ある日、製品の事業責任者にこの提案を訴えたところ、先のことは考えても未来を読める人なんて居ないのだから目の前のことをやれば良いんだよ、というニュアンスのことを言われ愕然としました。この経験から、戦略的に物事を進めていそうな部署へ行きたいと考え始め ”知財戦略” という言葉に惹かれ異動しました。

知財部門では、出願、アクション、他社特許のリスク把握や無効化資料調査、論理の構築等、一通りの業務を経験し、その後、知財戦略を立案し責任を持って遂行する業務を担当しました。知財の中でメインで扱っていた特許は5年くらいで権利となりますし、経験則的に基本特許と呼ばれるものは5~10年前に出願したものが多かったため、それくらいのレンジまで含めて戦略を考えていました。
事業部門の戦略は向こう2~3年がメインで、そこまで長期に詳細な戦略は立案されていません。そこで、事業部門から事業戦略をヒアリングし、そして技術部門からも技術をヒアリングして理解・解析し、今後ビジネスがどう展開していくかを予測した上で、それに即した知財戦略を考えていくことが必要です。

この過程から、より深く事業のことが理解できるように、ビジネス全般の知識が集約された中小企業診断士の資格も取得しました。この頃になると、もう少し自分で主体的にビジネスを作っていきたい、少なくとも知財部門ではできる範囲に限界があるため、もう少し広い範囲で動かせる業務がやりたい、と感じるようになりました。それでもしばらくは安定した環境を捨てる不安や35歳を超え年齢的にも厳しいという感覚もあり、転職活動を行うには至りませんでした。

転機はここ数年の環境の劇的な変化でした。
昨今、AIがブームになっていますが、画像解析に強みを持つ前職の会社において研究者がコツコツため込んでいたノウハウがDeepLearningの登場によって不要になっていくことを肌で感じました。正確にはすべてのノウハウが不要になるわけではないのですが、少なくとも素人であっても画像解析を備えた機能が手軽にしかも学習用データさえあれば時間をほとんどかけずにできてしまうというインパクトは、私にとって相当に大きいものでした。

人は計算能力と時間に制限がありますが、人の何倍もの処理速度で24時間動き続け、しかもコピーで同じ能力のものをいくらでも作れるという現実は、専門家数百人を代替できるようなインパクトがあります。私はこの環境の変化の中で、企業の代謝、つまり、小さい企業が成長し大きい企業が衰退していく流れが日本経済の必然だと実感しました。同時に ”安定した会社” なんてものは今後存在しないと思うようになりました。安定した環境を捨てる不安よりも、新しい環境にチャレンジしないことのリスクの方が大きいと考えるようになりました。

転職活動ではこれまでの経験や知識を棚卸し、自分にできること、時代に求められていること、気持ち的に前向きに取り組めることを考え、エントリー先を探しました。エンジニアであり、知財の専門知識も活かし、診断士の視点も活用でき、そして戦略的な思考で動ける職種です。ちょうど名門の金融機関で中小、中堅企業の企業価値向上を知財面も含めて支援するという求人案件があり、コレだと思い応募させて頂きました。

転職期間中は業種を変更することやメーカーから体育会系の文化の組織へ移るということに不安を拭い切れない面もありましたが、やってみたいという自分の気持ちに重きを置きました。新しいことはやってみないと良し悪しはわかりませんし、これを逃すとこの先同等の求人がまたあるとも限りません。実際に動かないと不安が消えることもありません。自分にそう言い聞かせて前に進みました。この判断が良かったかどうかはこれから新しい仕事をして結果が出てみないと分かりませんが、もし失敗であっても自分で選んだ道ですので納得感をもってまた次を探せば良い、出直せば良い。環境変化が激しい世の中でそんな生き方ができればと思っています。

今回の転職で、お恥ずかしい話ですが、社会人歴も15年を経過して初めてわくわくする仕事に出会ったと思っています。社内で消去法的に一番やりたい仕事を探すのではなく、転職で広く本当にやりたい仕事を探せた結果です。プレッシャーもありますしハードな仕事ですが、適切なマネーサイクルで雇用が創出され、経済が発展し、そして日本のどこかで誰かが幸せになっていく、そういう根幹の想いを糧に乗り越え、成果を出し同時に自分も成長していきたいと思っています。

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