44歳人事、外資系ファッション業界から国内上場コンサル会社への転職

44歳人事、外資系ファッション業界から国内上場コンサル会社への転職

No.1110
  • 現職

    株式上場 独立系経営コンサルティング・ファイナンシャルコンサルティング・企業再生支援企業 人事総務部  シニア・ディレクター

  • 前職

    欧州系 高級ブランド 日本法人 人事総務部  シニアマネージャー

佐竹 哲史 氏 44歳 / 男性

学歴:慶應義塾大学 総合政策学部 卒
TOEIC 805点
SAP認定コンサルタント(人事管理)

2018年9月30日、私は勤めていた会社の上司に12月末付での退職を申し出ました。
「次、決まったならよかったね!」「いえ、決まっていません」

退職を決めた理由は、いつの間にか仕事の内容に充実感を得られないまま長時間労働を余儀なくされる状況になっていたからです。

転職先が決まる前に離職を申し出た理由は、退職3ヶ月前告知という会社の独特なルールを人事管理職としての引き際に守りたかった矜持、かつ直近12年いたファッションリテール業界から別の業界に移る転職を志していたので、きちんと時間をとって活動したかったこと、この2点です。

11月中旬までみっちり仕事の引き継ぎを行い、その後30日超の有給休暇消化へ入るのに合わせて、転職活動を本格化しました。

最初の週は、それまでお付き合いのあった複数の人材紹介会社さんにアポイントを取って積極的に会いに行きました。どの方も外資を中心に人事のほとんどの分野を幅広く経験している私の経歴を褒めてくださり、そして沢山の求人を紹介してくださいました。そして応募をすればほどなく1次面接に呼ばれ、順調な滑り出しに思えました。

一方で面接では、20余年の経験をシンプルに話すことなど出来ませんでした。多くの経験から総合的に判断していくことに喜びを感じる中で、『1番の強み』を聞かれても困る、実はあまり会社で偉くなることや権威を得ることに執着がない中で、『将来のキャリアプラン』を聞かれてもしっくりこない、と違和感を覚え出したのもこの時期です。
また、人事の仕事は終わりがありません。例えば1つの新しい制度を導入したとしても、人事の仕事はそこがスタートであって、それから先が大変だといつも実感している中で、「あなたのこれまでの仕事で1番の達成は何か」と聞かれると、いつも本音と違う答えを無理矢理当てはめていました。

案件に応募しまくる時期が続き、面接を受けまくる時期が続くと、次にやってきたのは1次・2次選考後の『見送り連絡』が続く時期でした。私も人事で選ぶ側の判断に多く立ち会ってきましたので、結果に一喜一憂しない姿勢は持っていたつもりですが、それでも翌週の予定がぽっかり空いてしまう、いわゆる手持ちのコマがなくなる、という状態を迎えると、多少の焦りは感じたものです。今思えば徐々に感情が迷走を始めたのもこの時期だったかもしれません。

(株)エリートネットワークの転職カウンセラーである高橋さんとの出会いは、こんな風にいわば第1クールが終わりかけた頃でした。知人の紹介という経緯もあってか、お忙しい中、すぐに直接会ってお話しする機会を設けていただきました。しかし、これまで数多の人材紹介会社の方とお付き合いする中で、正直特別な期待を抱いていたわけではありませんでした。むしろ『外資疲れ(自覚あり)』した自分に対し、「本当は日本の会社に行きたいんでしょう?」と間口を狭められてしまった場面では、苦笑しつつ内心困惑したことが記憶に残っています。

こうしてエリートネットワーク社のサポートを加えつつ、再度応募を始め、面接受けまくりの第2クールがスタートしました。

第2クールに入り、多少慣れは出てきましたが、面接で感じる違和感は本質的には相変わらず、むしろ仕事が決まらない焦りから、本来落ち着いて物静かに話す自分のキャラクターを見失い、益々思ってもいないことを話すようになっていたかもしれません。そんな中、高橋さんからご紹介いただいたいくつかの企業の1次面接は、いずれも本来の私と話のテンポが合う方が出てきてくださり、リラックスしてお話し出来る。いわゆる企業のJD(求人票)と私のCV(履歴書)、その書類上のマッチングだけで紹介されていない、私の性格や志向も踏まえた上で、相性の合う企業群である、それが実感出来るご提案ばかりでした。

最終的にお世話になることを決めた企業との最初の面接は、実は違和感たっぷりのスタートでした。開始してものの数分で、「あ、これはダメかもー」「面接官の時間を無駄にしてしまったかも」と。実際こんな感覚はこの期間中何度かあって、だいたい結果は予想通りでした。

唐突ですが、2018年現在の人事のトレンドは、いわゆる『戦略型人事』です。最新のTalent Managementや、Talent Acquisition、Employee RelationshipやLearning & Developmentなど欧米発の横文字の理論をもとに、華やかなコミュニケーション能力と合わせ組織変革の旗振り役を期待される役割です。
対して従来の法令遵守や、諸々の手続き、予算管理などをきちんとこなす人事は、仮に『管理型人事』と呼ぶとして、これはどちらかといえば古く、日本経済の失われた何十年の過去の遺産のような視線を浴びているように思え、私もいつの間にか『戦略人事』を売りにしないとキャリアは切り拓けない、という考えに染まっていました。

さて、話を先ほどの面接に戻しますが、面接官の方は諸々の話の中からこんな私の『フェイク』を見抜いてくれました。そして「管理?何がいけないの? 部署の名前、こないだまで管理部だったから」、また華々しく戦略人事を前面に出さなくても、十分に経営に信頼されるパートナーとなっていけるという話をしていただいた時、「純粋な日本企業とはいえ、今どきここまで言い切れる方がいるのか」と驚きました。それと共に、自分の得意なスタイルも、人事の専門的な知識と誠実なサービスをもとに、まずは会社で働く人たちの信頼を得ていく形であること、必要な仕組みの導入や改革も、これまでもその信頼をベースに進めてきたことを思い起こし、長い迷路から抜け出せたような感覚を覚えました。

転職先を決める前に離職を決める行為のリスクは覚悟していました。一定期間無職となること、失業手当をもらいながら食いつなぐことも想像していたつもりでした。しかし毎朝学校へ行く子供たち、会社へ行く妻を見送る生活をしたり、人と会い『しっくりくる、こない』を繰り返したり、親切に近づいてきてはメール1本で縁が途切れてしまう多くの人材紹介会社とのお付き合いを繰り返したりするうちに、自分の心が迷走し出すことは想定出来ていませんでした。

精神的な浮き沈みが少なく、どんな状況でも落ち着いて対処出来ることがこれまで自分の強みだと思っていましたが、高橋さんから活動終盤「あなた随分と早口になっていませんか?」と言われた時、これまでの自分に大変恥ずかしい気持ちになりました。

今回、社会人になって20年経ったこのタイミングで、初めて離職を決めてからの転職活動を体験してみました。自分の得意なことや苦手なこと、やりたいことを見つめ直したり、自分の人間関係に新たな発見があったり、高橋さんはじめ数多くの新たな出会いがあったり、自分の弱さを知ったり、決断しなくては体験出来なかった貴重な物語に満ちた期間でありました。振り返ればわずか1ヶ月半の出来事ということが、今でも信じられない思いです。と言うと文脈的におかしな流れになってしまいますが、人には絶対オススメしません。自分でも絶対にもうしません。

キャリアは自分の腕だけを頼りに切り拓いていくもの、そんな考えでいた私が今回たくさんの人の力を借りて転職を決めたことは、これからの私の仕事への取り組み方や生き方に少なからず影響を与えると思います。支えてくださった方々に感謝しながら、新しい会社で精一杯働きたいと思います。

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