一部上場 総合商社 環境インフラ事業部 事業開発・M&A・バリューアップ担当
外資系コンサルティングファーム 事業再生シニアコンサルタント
菅沼 有紀子 氏 40歳 / 女性
学歴:神戸女学院 高等学部 卒
神戸大学 理学部 卒
九州大学大学院 理学府 修了
TOEIC 860点
新卒で入社した事業会社で10年超勤務。実績を出し、海外駐在も経験し、やりたいことを手掛けられ、ある意味贅沢な仕事環境に当時はいた。幾分自分自身を過信もし、さらに自身の構想を広く具現化できるようなフィールドで仕事がしたいと思い、コンサル業界に転身。1年半いろいろと試行錯誤したが、残念ながら結局は自分には合わない水だった。
転職しようと思い立つまでには時間がかかったが、転職活動を軌道に乗せるまでにはさらに時間がかかった。自分の志向と転職市場と年齢が全く噛み合わなかったからだ。
コンサルを今後も続けるつもりはなかった。前職の事業会社で長年培ってきた強みを武器に、再び事業会社のフィールドで戦いたかった。ただ、同じ場所で同じことをするのではなく、自身の幅を広げて可能性を高めていけるようなフィールドを選びたかった。当時の年齢は40歳である。
転職活動を始めた初期、改めて転職には市場というものが在ることを知らされた。年齢を理由に書類選考が通らないという事態に直面し、正直衝撃を受けた。転職市場のひとつの側面だ。転職活動をしていると、つい視点が自分に向きがちになるが、転職というイベントは会社と転職希望者の双方で行っているものであり、当たり前の話だが会社側の雇用事情という視点は重要だと思った。転職市場を少しでも理解しておくことは、先の天候や風向きを知るようなものだ。
転職フラグを立てると、様々なエージェントから連絡が来て、色々な接点を持ったが、きちんと話ができるエージェントは1割もなかった。中には、自分の持つ求人と繋げようと前のめりになるエージェントや、転職希望者の方向性やニーズが把握されているのか分からない大量の求人が連日届くこともあり、きちんとしたエージェントに辿り着くまでに要した時間や労力は、正直なところ結構なストレスだった。自分に合うエージェントを確り選び抜くことは本当に大事なステップだと思う。でなければ、不毛な戦いをすることになる。
昔、私は『人』『金』『仕事』のうち2つ以上に満足できなくなったら転職をしようと決めており、事業会社時代はそれに則って転職を決意した。今思い返せば、当時の見方は若かった。自分が何かを成し遂げようとするとき、それに賛同してくれる人がいるか、心底理解してくれる人がいるか、少数でもいれば、立派に『人』の条件は充足しているだろう。今の環境では成し遂げられなくても状況や条件が変われば成就できる可能性があれば、やはり『仕事』も充足しているだろう。もう少し柔軟にかつ広い時間軸で見れば、不満を満足に変えられる可能性はあるし、それは自分次第でもある。
転職しようと動き始めると、時に人は盲目的になる。今とは違う何かを求め始めてしまう傾向があり、それが何か明確に分からなくて彷徨ってしまうという落とし穴があるように思う。
自分は前回の転職でこの点を反省しており(勿論反省の裏には期せずして学んだ数々の貴重な経験があるが)、今回の転職では明確に軸を持つことにした。
まず第一に、自分の強みを差別化して活かすことを最優先とすること、第二に、伸びるポテンシャルがある領域に身をおくこと、第三に、そのフィールド(場と人)の中で自分が活躍しているイメージが描けること、である。選考の過程では、少しでもこの軸からずれると「違うな」とセンサーが働いた。
転職活動は人それぞれだと思うが、自分の次のキャリア人生を吟味しながら相手とマッチングをしていく活動である中、非常に優秀な一部の方々を除いて、基本的には選ぶ権利を持つ採用側の方が有利である。いくら自分の中にブレない選択の軸を持っていても、なかなか照準が定まらないと人は焦るものだし不安にもなる。企業研究や選考準備の為に購入した関連書籍が机に積み上がる一方で、なかなか思うように進まない選考に対して不安な気持ちに晒されなかったかというと嘘になる。不況期等、転職活動期間が長くなると精神的に辛くなる時もあると思う。マッチングは縁と運とタイミングなので、不要に焦っても仕方ないのだが、どうしても不安になる時はその気持ちを紙に書き出して自分の気持ちの整理をした(紙に書いて客観的にみると然程不安に感じる必要がないことに気づくものである)。
また、私がマインド面で一番大事だと思ったのは自信をなくさないことだ。マッチングがうまくいかないこともあるが、それと自分の能力や適性を直結させる必要はないということ、これは頭では分かっていても心では気づかぬうちに自信が低下することがあると思う。自信がなくなっていると感じる時には、人の力も借りた。いろんな人と会話し、自分ってどういう人だっけ、というのを取り戻したりもした。自信をなくすと、各論の選考だけでなく、大方針のキャリアの方向性すら見誤ってしまう恐れがあると思う。自信を持って自分の将来を考える、これはとても大事なことだ。
当初噛み合わなかった物事も解消し、漸く軌道に乗ってきた転職活動の後期、今後のキャリア人生を思い描き、改めて、自分の仕事観やスタイルを意識していった様に思う。常に変動する市況の中でどの様に価値あるビジネスを創出していくか、現代の世の中へどう影響を与えていけるか、こういったことを頭だけなく、全身でプレイし具現化に向けて進んでいくことが、自分は好きだと改めて確認した気がする。ある程度キャリアを積んだ後は、「強味」×「好き」の領域で勝負すべきだと思う。この勝負領域を数多の求人条件から探す時、信頼できるキャリアアドバイザーが近くにいることは心強い。
キャリアは個々人それぞれに別個だ。例えば、同じ大学出身でも、同じファーストキャリアでも、20年後には大きく異なる場所にいたりする。頭の良し悪しというのではなく、何かどこかに分岐点があるのだと思う。
分岐点が、特定の一点なのか複数の点の集合なのか分からないが、やはり自分はどうなっていきたいか、どういうことをしていたいか、ということに拘り続けている人は、何等か自身の定めた到達点に達し、また更なる高みを目指して歩みを続けている様に思う。その意味で、キャリアは完全に自身への問い掛けとPDCAの連続の結果なのだと思う。
私は今回の転職活動には終止符を打ち新たなフィールドでの挑戦を始めるが、キャリア構築においてはまだ途上におり、これからの自身が歩むべき道のりをしっかり意思を持って描いていきたいと思っている。
今回の転職活動をガイドし親身に伴走して下さった、エリートネットワークの転職カウンセラーである高橋さんに大きな感謝を表し、私の『転職体験記』とさせて頂く。