私自身、子どもの頃から周りの人に喜んでもらう事が好きでした。例えば小学生の時、自分で釣った魚を両親に食べてもらって 「美味しい!」 と言われたのがとても嬉しかったのです。そんな小さな体験ばかりですが、周囲の人に喜んでもらえる事が純粋に好きで、その感動をもっと大きなスケールで味わいたいと思い、それには会社を興すという方法があると考えるようになりました。
両祖父がそれぞれ会社の経営に携わっていて、幼い頃からその姿に触れていたことが影響していると思います。父方の祖父は従業員が何万人規模の上場企業の運輸会社の役員を務めていましたし、母方の祖父は自ら画廊を経営していました。
運輸・物流事業というのは社会のインフラであり、事業が世の中に与えるインパクトがとても大きい。また母方の祖父はもともと証券会社の営業職として優秀な成績を上げていた人でしたが、お金の運用ではなく人の心の糧となるような絵画を扱いたい、と会社を辞めてゼロから画廊経営に挑戦した人です。
2人が携わる事業の性格がまるで異なっていたのも興味深かった。両祖父の話を聞きながら、自分もやるからには社会に大きな影響を与えるような事業が面白いし、また、何故その事業をやるのか、事業をやる理由・大義というものが大事だろうと考えました。
でも正直に言えば、大学で起業家コンテストに挑戦した頃は、何故起業したいのかと問われても、心の中には 「とにかく、やりたいからです!」 という一念しかありませんでした。想いは溢れていましたが、はっきり言語化できていなかったのです。
世の中に大きなインパクトを与えられる業界は限られますので、高校生の頃から自分に何ができるか色々考えていました。当時は携帯電話の 「パケットし放題」 サービスがまだなくて、それに類するサービスを構想していたこともありました。
起業資金を貯める目的もあってアルバイトを探しましたが、当時の求人情報誌やサイトには、自宅の近所の店などの求人がまるで掲載されていませんでした。ところが実際に街を歩いて探すと、たくさんの店がアルバイト募集の 「貼り紙」 を出しています。
何故そうなのかを考えました。
実際に私が 「貼り紙」 経由でアルバイトした店の店長にも聞いてみました。すると、求人情報誌や求人サイトに求人を出すには 「掲載料」 がかかるが、そこまで予算がないとのことでした。一方で私は好条件のアルバイトを見つけるため、隣町まで歩いて 「貼り紙」 を探さなければなりませんでした。
そこで閃きました。ビジネスの基本は、こういった不便や問題の解決ではないのか。
それに 「働く」 というテーマはその人の人生に与える影響が非常に大きい。既存の求人メディアの掲載情報とアルバイトを探す側のニーズにはズレがあり、これは解決し甲斐のあるテーマだろうと思いました。
そこからスタートして、大学のビジネスプランコンテストでの優勝を経て、2006年4月に立ち上げたのがアルバイト求人サイト 『ジョブセンス』 です。
サイトオープン直後は求人掲載数も少なく、アルバイトを探すユーザーもなかなかサイトを訪問してくれません。掲載数を増やそうと企業様に営業しても、今思えば営業力に問題もありましたが、なかなか掲載して頂くまでには至りません。
当初は掲載料無料で応募1件ごとに企業様からお金を頂くビジネスモデルでした。いつまで経っても売上目標が達成できず、気持ちの上でも追い詰められ 「何でこの事業をやっているんだろう?」 と思い悩む時期が続きました。
ユーザーにもっと喜んで頂くにはどうしたらいいのか。そしてもっと企業様にもメリットを提供できないだろうか。
考えあぐねていた時、ある企業様から 「アルバイトの応募があっても全てが採用に繋がる訳ではないので、応募ごとの課金はどうにかならない?」 といった趣旨のご意見を頂いたのです。それをヒントに、応募ではなく採用ごとにお金を頂戴して、且つ採用が決まったユーザーにお祝い金を出す、というモデルを考えました。
企業様にすれば、採用が決まった時点で初めて費用が発生するので費用対効果が高く、ユーザー側にすれば、求職中には交通費などの出費がかさむため 「お祝い金」 は嬉しいはずです。更に当社には応募者が採用されたかどうか正確に把握できるというメリットもあります。この 「成功報酬型」+「お祝い金」 というモデルの採用は、当社の事業が一転して成長していく契機になりました。
一年目の苦しい時期に 「どうしてこの事業をやるのか」 を考え抜いたお蔭で、経営理念やビジョンが次第に言語化されていきました。
経営理念の 「幸せから生まれる幸せ」 とは、周りの人に喜んでもらえることが自分自身の喜びであるという私の幼い頃からの経験を原点とする想いです。会社がサービスを提供してユーザーやお客様に喜んで頂き、同時にサービスを提供する当社の社員も幸せになれる。事業活動を通じて、そんな 「幸せの連鎖」 を生み出したいと思いました。
事業・サービスを開発する上でのビジョンは 「あたりまえを、発明しよう。」 です。世の中の多くの人が困っていたり、不便に思っていたりする問題を解決する事業に取り組みたい。そして末永く利用されるサービスとして進化させ、世の中に 「あたりまえ」 として定着させようという意思でもあります。
ですからメディアやサービスは徹底的に改善を重ねてきています。
現在 『ジョブセンス』 は月間約300万人にご利用頂く巨大メディアに成長しましたが、いくつか課題も浮上しています。
確かに非常に多くの求人が掲載され、ユーザーは様々な条件の中から自分に合った仕事を探せるようになりました。ですが求人情報の中身を詳細に検証していくと、企業様側の一方的な情報提供に基づくものであり、ユーザーとの真のマッチングが十分ではないのでは? という問題が見えてきました。
そこで転職クチコミサイトをスタートし、企業の従業員、元従業員、一部の取引先の方々が書き込んだ情報を掲載することで、ユーザーが転職しようと考える企業をよりニュートラルに可視化できないだろうかと考えました。この 『転職会議』 は小さな掲示板機能からスタートしましたが、現在では日本最大級の転職クチコミサイトになっています。
求人サイトの改善もきめ細かく推進しています。
例えば企業様にはとにかく緊急にアルバイトを採用したいというニーズもあります。そこで、多少費用はかかりますが通常よりも早く採用できるオプションサービスを導入しました。
また採用された方への 「お祝い金」 支給は広く浸透しましたが、まだ知らない人もいらっしゃいますし、初めて利用されるユーザーの中には 「何故お金がもらえるの。怪しくない?」 とサイトに不安を抱く層も一部ですが存在します。そこで、クチコミで 『ジョブセンス』 のメリットを広めていくための仕組みもつくりました。
これはロゴマークに込めた 「雨垂れ、石を穿つ」 の精神が大きいと思っています。当社のロゴを上下逆さに見ると 「?」 マークであり、同時に雫 (しずく) を表してもいます。この 「ハテナ」 は、現在常識とされていることに疑問を持つことで、新しい 「あたりまえ」 を生み出す姿勢を表現しています。また 「雫」 は、雨垂れも垂れ続ければ石に穴を開けるように、新しいサービスを世の中に浸透させていくためには、一人ひとりの社員が強い意思を持って努力を積み重ねていかなければならないという考えを表しています。
iPhoneなどスマートフォンが登場する前に日本のメーカーが PDA を出しましたが、あまり普及しませんでした。スマートフォンも登場した当初にはここまで普及するとは思えなかった。要はこれまでの常識に疑問を持つ 「ハテナ」 があっても、つまり新しいアイデアだけあっても不十分で、日々水滴を垂らし続けていくプロセス、徹底的に改善していくことが重要なのです。
更に言うなら、新しい事業なりサービスを定着させていくには、「一人の熱狂」 がカギを握ると考えていて、当社では社員を責任者として抜擢して大きく任せる方針を採っています。片手間でやるのではなく、本人ができるだけ 「熱狂」 できる環境、そのサービスの定着に徹底的にフォーカスできる環境を作っています。
事業部制を採用した意図もそこにあり、社員一人ひとりが 「あたりまえを、発明しよう。」 に熱狂できる組織であろうと心掛けています。結果、今の当社にはそうした事業への熱狂、言葉を替えれば 「事業への愛」 を持つ社員が集まってきていると思います。
既存事業の拡大と新規事業領域の開拓を並行して推進しています。
既存事業である求人サイトにおいては、先ほどもお話ししたクチコミでユーザーを広げる仕組みを本格的に強化しています。また 『転職会議』 のユーザーの中から希望者を実際に転職先の企業にマッチングさせるスカウト機能も強化していきます。
企業様に対しては様々なニーズにお応えできるオプションサービスを拡充しています。
新規事業については、これはあくまで例ですが、 「金融×IT」 というテーマ。日本の潤沢な個人金融資産を健全な投資に還流させるには、新たな金融商品が求められていますし、特定の金融機関に所属しない独立型のフィナンシャルアドバイザー文化の浸透を後押しする比較検討ツールなどの需要も見込めると思っています。
また 「医療×IT」 のテーマでは、最新のグローバルな医療情報を誰もが簡単に検索できるツールなどもニーズがあるのではないでしょうか。予防医療の領域でもITが貢献できることは多いと考えています。
「B to B×IT」 というテーマは、商社機能のIT化を始めとしてまだまだ開拓の余地が残されています。この分野では既にビジネス比較発注サイト 「imitsu (アイミツ) 」 を共同運営しています。
また、ITを活用した 「世界のフラット化」 にも興味があります。これだけインターネットが普及していながら、国境を越えたEC (電子商取引) の割合は中国などに比べて日本はかなり低いのが実情です。
これらはほんの一例ですが、社内の新規事業プラン公募制度 「Egg」 にも、様々なテーマで社員から積極的にビジネスプランが提出されています。
社員が目の前の仕事にフォーカスできる環境を整える一方で、ノウハウの共有や社員全体の知識の底上げは重要だと感じています。幸いにも、事業部を横断した成功事例の共有会やテーマを定めた勉強会などが自主的に行われ、多くの社員が参加するようになり、社員同士が学び合うカルチャーが根付いていると思います。
社風としてトップダウンで 「これをやれ」 と言うことはあまりないため、事例共有会や勉強会にしても現場の若手社員が自主的に発案して実施され、社員同士で盛り上がって継続していくケースが多いです。そうした現場発の新たな試みを冷やかに批判する 「評論家」 もおらず、頑張っている人を応援しよう、助け合おうとする意識が非常に強いのも当社の社風だと思います。
学生ベンチャーとして始まった会社でもあり、私を含めて役員の年齢も若く、みんな現場志向を強く持っています。私自身も新規事業のサイトのワイヤーフレームを書いていますし、共有会や勉強会に出席して積極的に学びたいと思っています。
私は60歳を過ぎても当社の事業を通じて世の中の幸せを大きくする役割を果たしたいと考えています。そのために、信頼の置ける若手社員をお目付け役 (老害アラート担当) として置き、彼が私の判断力や決断力が衰えてきたと感じるまでは社長業を続けたいと密かに思っています。
基本的には 「あたりまえを、発明しよう。」 というビジョンを体現したい人、その根本にある 「幸せから生まれる幸せ」 という考え方に共感できる人ということになります。周りの人に喜んでもらうのは多くの人にとって嬉しいことだと思いますが、その嬉しさの程度が普通より高い人を求めています。「ありがとう」 と言われた時に、アドレナリンが人並み以上に出るような人ですね。
現在、職種として強化したいのは、事業企画、営業企画、カスタマーサポートになります。
事業企画では、戦略コンサル、ソーシャルゲームの会社を経て、新たなWebサービスを自ら創りたいという思いで入社した者がおります。今では 『ジョブセンス』 の事業企画のグループリーダーとして新たな集客施策を動かしています。
営業企画では人材紹介会社を経て、既存の転職市場を変える新しいサービスを携わりたいという思いで入社、現在は転職領域のグループリーダーとして企画、営業に関わる幅広い分野で活躍している者がおります。
また、カスタマーサポートでは、異業界の出身となりますが、某大手学習塾の教室長を経て入社した者が、ジョブセンスリンクのカスタマーサポートグループで企画や改善等を進めています。
入社時の職種も重要だとは思いますが、それが未来永劫続くものとは限りませんし、メンバーの適性や想いを大事に、やりたいものがあればどんどん挑戦していって貰いたいと思っています。
事業を進めて行くにあたり、挑戦の裏には一定の失敗は当然あると思っています。ただそこに屈せず次へ次へとアグレッシブに進んでいける方を求めております。逆に挑戦しない、今の状態が良いと考える人にとってリブセンスは心地良くない環境だと思います。変化のスピードは速いです。極端ですが挑戦しないことのほうが罪だと思っています。
1年1年変わり続けている会社ですので、今私たちの仲間になってくれる方は会社を変える原動力になれます。むしろ中途入社者の皆さんには、当社と当社の事業を 「変えて下さい」 とメッセージを贈りたいと思います。
一部上場企業ではありますが、まだまだ成長途中のベンチャーであり、これからも進化し続けることを大事にしている会社です。
変えると言っても規模の小さい事業では社会に与えるインパクトも小さいですが、ある程度の規模感を持って変えられる点が当社ならではの面白さだと思います。会社自体もこれからもっと大きくなる過渡期にありますので、そこに参加することは純粋に心が躍る体験と言えるのではないでしょうか。
共に新しい 「あたりまえ」 を発明し続ける人、多くの人に喜んでもらい、世の中の幸せを最大化する事業に熱狂できる人をお待ちしています。