職務経歴書に偽りや事実と異なる事柄を書いてはいけないことは言うまでもありませんが、では、忠実に事実だけを書き並べておけばよいのでしょうか。必ずしも、それだけで十分とは言えません。つまり、事実としての経歴と経歴の間に横たわる背景、「なぜ」そういう行動をとり、そのようなプロセスや経歴を歩まれたのか、という説明が必要なのです。前項2にも通じることですが、きちんとした背景の説明が無いと、読み手によって色々な受け取られ方をしてしまうものです。特に、学校歴や転職の回数等の部分で、あまり一般的ではないケースの場合、それだけで選考の対象から漏れてしまったり、最初からネガティブな見做され方をされかねません。
具体的に言いますと、学校を中途退学していたり、比較的短期間で転職を重ねているケース、あるいは、職歴の途中に職についていないブランクの期間がある場合等です。
しかし、これらのケースが100%本人のネガティブな理由によるものかと言うと、そうではない場合の方が多いように思われます。例えば、転職回数が多いとしても、それが会社の倒産や事業部門の縮小・撤退等、本人の努力の及ばない所に原因があったり、あるいは本人がその業界で非常に好業績をあげていた為、ライバル企業からのスカウトの声が掛かった為だったりするケースです。また、体調を崩した為どうしてもその仕事を継続することができなくなってしまったケースでも、その原因が、余りにも環境が未整備な状況にも拘わらず、本人が頑張り過ぎた為であったりすると、むしろ本人のひたむきに取り組む姿勢を伝えるポジティブなエピソードになり得ます。
要するに、各候補者毎に存在する個別の"事情"を正しく理解してもらう為の資料作りが、詳細な職務経歴書だと考えて差し支えないと思います。
一般的に、「飽きっぽいのではないか?」「粘り強さがないのではないか?」「うちに来てもまたすぐに辞めてしまうのではないか?」と人事の方が心配するような見え方のする経歴であったとしても、職務経歴書上で理由がしっかりと説明されてあれば、その背景に一本スジが通っており、整合性がある限り、採用する側もそれ程冷たくはありません。(勿論、ご本人がきちんとスジの通った生き方をして来られたというのが前提であることは言うまでもありませんが。)
よくあるケースとして特に以下のような場合、面接の際にはもちろん、職務経歴書上でも詳しく背景の説明をするべきだと思います。
学校を中途退学している場合(ご家庭の事情、経済的困難、他にどうしてもやりたいことが見つかった等) |
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社内での職種転換・他部門への異動・関連会社への出向・転籍(自分から強く希望した、経営的にその部門へ人材をシフトした、その部門の長から引っ張られた、戦略的な事業部門のスピンオフ等) |
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短期間での転職(会社の倒産・事業縮小・撤退・被M&A、スカウト、健康上の理由、転職時の提示条件との相違等) |